男マンの日記

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増田俊也「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」を読んで

 増田俊也「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」を文庫で読みました。

木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか(上) (新潮文庫)

木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか(上) (新潮文庫)

 
木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか(下) (新潮文庫)

木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか(下) (新潮文庫)

 

 「鬼の木村」「木村の前に木村なし、木村の後に木村なし」と言われ、日本柔道界最強とうたわれる木村政彦。その壮絶な稽古の末、全日本制覇を成し遂げたサクセスストーリーが上巻。

戦後、柔道で糧を得るためにプロ柔道立ち上げからプロレス入り、そして力道山との「巌流島の戦い」に敗れてから大学で柔道の指導から老後への人生を送っていくという下巻。見事なコントラストの上巻・下巻となってます。

 

 

 

木に紐をくくりつけて技の打ち込みに励んだ結果木が枯れたとか、まあ稽古がらみの凄いエピソードに事欠かない木村、食事当番の時、味噌汁にウンコを入れたとか今だとただ引くしかないイタズラもしてたとか、上巻はとにかく破天荒なエピソード満載、目標に向かっていく人間の清清しいエピソード満載の青春ドラマが展開していきます。

しかし下巻は一転、プロ柔道が失敗し、生活のためにプロレスに。そこで世渡り下手なところを力道山につけこまれて噛ませに使われた挙句一騎打ちで敗北、結局柔道を指導しながら復讐を企てるも力道山はヤクザに刺されて死亡。一番弟子の岩釣兼生に総合格闘技の特訓を施しながらプロレスへの復讐を思い、死を迎えると言う、人生の苦しみを描いた人生ドラマになっています。

 

それにしても、全盛期の木村政彦の映像が残っていないのが悔やまれるところ。木村の映像は、この木村VSエリオ・グレイシー、VS力道山くらいです。この本によると、天覧試合の映像は記録してあったらしいのですが見つからないとのこと。う~ん、惜しい。しかしこの情報の無さが強さへの幻想を膨らませていることも確か。どれだけ強かったんだろう・・・。

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 このあいだの世界柔道でもわかるように、今の柔道はほぼ組み手争いがメインとなり、木村の時代のものとは大分異なっています。ただ、ボクシング、レスリングの練習もしていた木村であれば今の柔道にも充分対応出来たのではないか。この本を読んだ後であれば、そのくらいの期待感は充分に感じさせられます。

 

ちなみに増田俊也は高専柔道(高専の柔道部で行われる世界ルールとは違う、寝技中心の柔道大会)の選手だったこともあり、恐るべき柔道愛で木村の名誉を回復しようとします。力道山戦の映像を高阪剛、中井祐樹等に検証してもらい、関係者の証言を集め、力道山の騙まし討ちが無ければ勝てた、という確証を得ようとしていくこの柔道愛はまさに鬼。とにかく柔道愛に溢れる一冊でした。

   

とにかく木村政彦という怪物が生まれ、激動の時代を生き抜いて死ぬまでを描ききっている一冊。これは木村政彦一代記でもあり、戦後昭和史の一部でもあり、プロレス史の一部でもある。どれかに興味ある人は必読の書といえるでしょう。私もあっというまに読んでしまいました。ただ読ませる、それだけの熱量に溢れた本でした。

高専柔道を題材にした増田俊也の自伝的小説。これも読みたくなります。

七帝柔道記

七帝柔道記

 

  劇画版。まだ未読ですが、なんでもこの本には無いエピソードが幾つか追加されているらしいので、これも追って読んでみるつもりです。何しろプロレススーパースター列伝でおなじみの原田久仁信先生。これは必読でしょう。

KIMURA vol.0 ~木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか~

KIMURA vol.0 ~木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか~

 
KIMURA vol.1 ~木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか~

KIMURA vol.1 ~木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか~

 
KIMURA VOL.2 ~木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか~

KIMURA VOL.2 ~木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか~

 
KIMURA VOL.3 ~木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか~

KIMURA VOL.3 ~木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか~

 
KIMURA vol.4 ~木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか~

KIMURA vol.4 ~木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか~