森薫「シャーリー」二巻を読みました。
カフェを営むベネット・クランリー(28歳)の家に、家政婦募集でやってきたシャーリー(13歳)。有能なメイドであるシャーリーが、日々働いていく中で色んなことが起こっていく、というお話。なにげない日常(19世紀イギリスの日常なので、それだけで面白さはありますが)を過ごしていく、ゆるやかな時間が流れていく漫画、それが「シャーリー」。
二巻、とはいえ、基本的には短編を集めた単行本となっています。一巻が出たのは2003年、同人誌時代の作品を集めたもの(今本が手元にないのでWikipedia情報ですが)
現在森薫は「乙嫁語り」をコミックマルタで連載中。「シャーリー」は、たまに読みきりが載る感じなので、それが一冊たまったので単行本化、という流れのようです。
しっかり調査され、絵も描きこまれて作りこまれている乙嫁語りに比べると、シャーリーは肩の力が抜け、著者の好きなものを描いているように見えます。もちろん執拗な下調べ、それに基づく綿密な作画に関してはいつも通りですが、あとがき漫画も他の作品よりノっているようだし、本当に著者が楽しんでいるのが伝わってくる漫画。いいものです。
そして、読み切りを集めたものとはいえ、作品の傾向はゆっくりと変わっていき、二巻当初はベネット・クランリー家しか知らなかったシャーリーが徐々に外の世界とふれあい、世間を知っていくにつれ将来について考える描写が増えて生きます。暖かな主人に見守られた少女の成長ストーリー。読んでいて爽やかな気持ちになる短編集です。
小さなことで一生懸命悩むシャーリー、けれども主人のベネットは決してそれを馬鹿にしたり軽く扱ったりはせず、しっかりと大人として向き合って答えていきます。一人の人間として尊重しているのが伝わってくる、それが読んでいて心地よくなるわけです。幸せなフィクションだとは思いますが、これが心地いい。厳しい現実をガツンと描かなくてもいい、こういうのを読みたい時期も人間あるものです。
これからシャーリーの過去が明かされたり、ベネットが結婚したりしていくんでしょうか。しかししばらくはこの感じでお話を積み重ねて欲しい。そう思いながら読みました。まあ、一巻が2003年、二巻が2014年なので、三巻が出るのは2025年・・・。まあ気長に待つことにします、はい。
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