とよ田みのる「金剛寺さんは面倒臭い」一巻(小学館)を読みました。
とよ田みのるはアフタヌーンで2003年から連載していた「ラブロマ」を読んでました。ラブコメとしては基本的な設定・ストーリーでありながら、ちょっとした感情、心の動きを捕まえて膨らませる、名もない感情をきっちり説明するのが上手い作家さん、という印象でした。
また、太めの線で「おしゃれ」とは間逆な絵柄だけど(失礼)みんなが好きになるような絵柄というか。親しみやすい絵を描く人。クセはありますが、この人の絵が嫌い、という人はあまりいないんじゃないかなぁ。と思ってます。
「ラブロマ」以来あまりこの人の漫画には触れてきませんでしたが、最近読んでたのは「最近の赤さん」これは作者がtwitterで時折載せていた育児漫画。育児漫画というフォーマットがこの人に合っていたのもあり、面白く読んでました。かわいいモンスターに描かれた赤ちゃん(赤さん)とお母さんと作者(作者だけ人間姿)が育児に奮闘する漫画。赤さんの一挙一動に一喜一憂する両親、ふとした一言に涙し、夜泣きにうんざりし、二人して奮闘していく姿がコミカルに描かれています。単行本にもなってます。
最近の赤さん どうしたらお母さんみたいにモテますか? (ビッグコミックススペシャル)
- 作者: とよ田みのる
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2016/04/12
- メディア: コミック
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そして「ゲッサン」掲載の新作「金剛寺さんは面倒臭い」は、「ラブロマ」とは対照的に、かなり極端な、立ちまくったキャラクターたちが繰り広げられる熱量の高いラブコメ漫画になってます。熱い。とにかく熱い。
まずこの漫画、地の文、説明文が全部トゲトゲ吹き出し。いきなりの説明からもう熱い。刃牙ばりのテンションでいきなりお送りされてます。
そしてこの漫画の主役は”金剛寺金剛”さん、高校2年生。
「柔道部に所属し I H出場個人2位、学業優秀 全国模試64位、通称 大江戸湾岸高の”金剛石の処女”(ダイヤモンド メイデン)」
という極まったキャラクター。超努力家で理論家。全ての行動を、自分の気持ちより「正しさ」を基準に行うという恋愛とは最も遠い性格をしている女性です。
そしてそんな彼女を好きになり、告白するのが”樺山プリン”高校一年生。捨て猫を見かけるたびに拾ってくるという心優しい鬼の少年。ちなみにこの鬼というのは比喩ではなく、このマンガの世界では、東京の真ん中に大きな穴が開いていて地獄とつながっている、という設定がされています。
このマンガは、そんな樺山くんが猫を拾おうとするところにたまたま金剛寺さんが通りかかり、独自理論で樺山くんを攻め立てるところから始まります。
樺山:オヤツあげようか?
金剛寺:君!
金剛寺:その猫ちゃんをどうする?飼うのか?
樺山:いやーどうだか。ただ可愛そうだなと思って
金剛寺:無責任だなっ!!!
樺山:え?
金剛寺:何を驚く!?行動には全て責任が伴う!!!
金剛寺:仮に君が猫ちゃんにオヤツを与えたとしよう。
金剛寺:そうすれば一時の飢えはしのげるかもしれない。
金剛寺:しかし猫ちゃんは次も期待してしまうのではないか?
金剛寺:いやする!!!
金剛寺:その一口で自ら動き糧を得るという生きる本能をスポイルしまいか?
するのだ!!
金剛寺:そんな猫ちゃんの今後の生活全ての責任を負えるのか?
金剛寺:負えるわけがない!!!!
金剛寺:ならばそのオヤツを猫ちゃんにあげるのをやめたまえッ!!!
ここまでで冒頭3ページ。飛ばしてます。
終始この調子で金剛寺さんが色んなことを突き詰め、また恋愛でもこの面倒臭さを発揮しまくるのがこのマンガの面白さなのではないかと。まさに「面倒臭い」けど、この面倒臭さは純粋さと誠実さゆえのもの。それだけ金剛寺さんはピュアで素敵なキャラクター。この作者らしい「突き抜けて真面目だからこその変人」さが際立ってます。
一方の樺山くんはほんとうに「いいひと」一巻時点で少し闇の部分ものぞいていますが、実直で優しい彼のおかげで金剛寺さんのキャラクターも際立っていて、色んな面を引き出す役割をしています。
この二人がカップルになることで、色んな事件が巻き起っていきます。またどんどん周辺に濃いキャラクターも参戦し、ラブコメとは思えない少年漫画的濃さが加速していくこの「金剛寺さんは面倒臭い」面白かった。必読です!
個人的に好きなところはなんといっても二人が手をつなぐか?という場面での超絶演出。手をつなぐと世界が滅びたりするのかな?というくらいのクライマックス感。世界一盛り上がる手をつなぐシーンなんじゃないかと。爆笑しました。