男マンの日記

マンガ、落語、お笑い、プロレス、格闘技を愛するCG屋の日記。

観てきました「この世界の片隅に」泣いた!笑った!刺さった!そしてほんのりエロい傑作でした!

というわけでいよいよ観てきました。「この世界の片隅に」最近仕事がまあ忙しく、中々見に行けない日々が続いてストレスが溜まっていたので、今日の休日出勤明けにえいやとテアトル新宿に向かい、えいやと立ち見席のチケットを手にしてえいやっと観てきました。

まあ、正直私は原作漫画の、というか作者のこうの史代さんの大ファンであり、クラウドファンディングにもきっちり参加してるためはっきりと贔屓でありハードルも上がりきってる状態であり正直けなすはずのない人間なわけで、今回はそういう人の感想としてとらえていただきたいと思います。

 

感想としては、とりあえず泣きました。

まあ、泣きますよね普通に。というかとりあえず私は漫画読んだときも泣いた記憶があるので、その原作で普通に映画を作られてそれを見たら泣くわけですよ普通に。

この映画のストーリーとしては、昭和のはじめに広島に生まれた少女すずさんが健やかに成長し、ほぼ会ったことのない青年との縁談を受け入れて結婚し、広島の隣、呉で生活しはじめたところで太平洋戦争戦争に突入。日々悪化する戦況、過酷な環境に翻弄され、色々な悲劇が起こり、そこに立ち向かっていく。というような話です。

しかし、この映画が泣けるのは運命に翻弄されるすずさんへの同情、戦争の悲惨さ、というような要素だけではなく、この時代でも生き抜こうとする人々。明るさを失わず生きる人々からも根こそぎ感情を奪い去っていく戦争、その中で翻弄されるすずさんの慟哭、突き上げる負の感情、しかしそれを溶かす周りの人々との関わり。いやがおうでもあからさまになる人間臭さや生命力に触れられたと思える瞬間があるからジンと来るのです。あくまですずさんからの視点を中心とし、安易に戦場や死を描かないことによって「あくまでこの人達は私達と同じ、普通に生活している人々なんだ」という感覚を感じさせてくれる。そしてそれを暴力的に蹂躙する戦争。本当にきっちりと「戦争やだー!」と感じます。

泣いた。月並みですが、素晴らしい作品でした。いや~。刺さった。 凄かったほんとに。というわけで凄かった、印象に残ったトピックをいくつかあげてお勧めしていきたいと思います。

見やすい、親しみやすい

太平洋戦争を描いた映画、というだけで割とハードルが高く感じるし、沢山人が死にそうだし、暗そうだというイメージがあると思います(偏見)しかし、この映画は非常に入っていきやすい。

絵柄の親しみやすさ、可愛らしさ。そして、手法として主人公のすずさんの生活を丹念を描いていくことにより日本人にとっての太平洋戦争を描き出す、という方法を取っているため、優しいエピソードが丹念に描かれます。海沿いの街に生まれたすずさんが子供時代、泥だらけになりながら兄弟と一緒に親戚の家へ干潮時の海を渡っていくくだり。絵の好きなすずさんがクラスの男の子の絵を代わりに描いて花を贈られるくだり。そして夫婦の出会いのきっかけとなるエピソードなど、どこか夢のような、微笑ましいような少し甘酸っぱいようなお話を丁寧に描いているため、昭和初期の日本がどこか近い存在として感じます。ほんとうにこのまま終わったらジブリかほのぼの教育アニメのようなつくり。すずさんが大人になってからなかなかキツい展開になっていくわけですが、後半までクスリとするような笑い、優しいエピソードを忘れないため途中で見るのがキツくなる、ということはあまりないと思います。(キツい時間はありますが・・・。)とにかくショックムービーではなく、いわゆる戦争映画とは一線を画した作りになっているのは間違いない。サザエさんみたいな感じです。途中まで。 

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 実はわりとエロい

基本的には主人公のすずさんが子供時代から成長し、(ほぼ)会ったことのない男性のところにお嫁に行く、というストーリーなため、夫婦のふれあいの場面がわりと出てきます。嫁入り前におばあさんから初夜のやりとりについての符丁を教わったり、その夜に夫の周作さんがすずさんの顔を撫でたりする描写。すずさんが遊郭に迷い込んだときの娼婦との一時の会話。そして防空壕でのさりげない口づけ・・・。しかしなんといっても幼馴染の水原との「あの一夜」のシチュエーションのいやらしさったら!昭和初期のエロス感!現代では味わえない、秘められたエロを感じさせてくれます。そしてそれが生活の他の場面と同じトーンでねちっこく描かれているのがとてもよい。周作とすずさんも互いに時にはうけいれ、時には拒否して、とか。そういうことを繰り返して深まっていく夫婦仲。もはやセックスが描かれていないだけ。そこがことさらライトアップされずに生活と同じレベルで描かれているところにエロを感じるのです。さりげない、でもそこがいい。

   

笑える部分が多い

戦争映画ではありますが、細かく言うのであれば「ほのぼの生活もの(だけど戦時中)」というテイストなため、基本的には生活描写がふんだんに入っています。そしてそもそも天然ボケのすずさん。いろいろやらかして周囲に笑いを誘います。劇場でも笑いがおき、終盤かなりキツくなってくる場面でもクスリとするようなくだりもあり。トボけたコメディ的要素もこの映画の魅力です。

まとめると、とにかく必見!

 としかいいようのない作品なんです。他にものん。こと能年玲奈の熱演。「あまちゃん」では見れなかった暗黒を抉り出すような演技、絞り出す声に震わされるし、時々はさまれる、すずさんが描いた絵が動き出すようなファンタジックな表現、細かく描かれた戦艦、空襲の武器、爆弾の描写のリアルさ、とにかくいろんな魅力がつまった作品です。見た目地味だし、ジブリや細田守ほどの有名さはないし、上映館もさほど多くない映画ではありますが、見ればおもしろい!人間の生活がしっかりと描かれ、色んな感情があぶり出される、豊かな作品になっていると思います。

この世界の片隅に 劇場アニメ公式ガイドブック

この世界の片隅に 劇場アニメ公式ガイドブック

 
「この世界の片隅に」公式アートブック

「この世界の片隅に」公式アートブック

 
この世界の片隅に 劇場アニメ絵コンテ集

この世界の片隅に 劇場アニメ絵コンテ集

 

 興行成績は好調なようで、上映館も徐々に増えつつある「この世界の片隅に」都内ではわりと満席の状況が続いたりしていますが、まだまだ空席が目立つ館も多いと聞きます。とにかく公開が終わる前に、大画面で一度観て頂きたい。そして戦争の怖さとともに人間の強さ、豊かさを感じて頂きたい。心揺さぶられる、素晴らしい映画でした。ありがとう!片淵監督!

 

11/28追記

ここからは一度でも観たことのある人が読んで下さい

 

すずさんのラスト付近での台詞について。玉音放送を聞いたすずさんは走り出し、遂には膝をついて慟哭。今までの全てを吐き出すようなセリフを吐くことになりますが、この台詞の中身が原作漫画と映画では変わっているのです。台詞を変えたきっかけについては監督自身がインタビューでかたっていますが・・・。

webnewtype.com

 

私は元の漫画でのセリフのほうが好きです。監督の改変だと、一度脳みそを通しているというか、すずさんの心から溢れ出してしまった言葉だという印象が薄れてしまっている、どこか神の視点にすずさんが立っているように思えてしまったのです。長くなった分、パンチラインとしても少し薄まってしまっている。それが少しピンと来なかったというか、残念に思いました。

まあ、この映画作ってくれただけで感謝!なのはもちろん、なのですが。

でもこれも原作への糊代を作ってくれたと思えばありがたい話。映画で感動した方はぜひ全員原作漫画を買っていただきたい。映画見てても感動できると思います。おもしろいよ! 

この世界の片隅に : 上 (アクションコミックス)

この世界の片隅に : 上 (アクションコミックス)

 
この世界の片隅に : 中 (アクションコミックス)

この世界の片隅に : 中 (アクションコミックス)

 
この世界の片隅に : 下 (アクションコミックス)

この世界の片隅に : 下 (アクションコミックス)

 

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