男マンの日記

マンガ、落語、お笑い、プロレス、格闘技を愛するCG屋の日記。

「マッスルマニア2019 in 両国~俺たちのセカンドキャリア~」を見て明日も生きる。

2019年2月17日21時17分、入場ゲートの奥に設置されたステージに参加全選手が並ぶ。私達はマッスル坂井のマイクに促されて立ち上がり、「3,2,1,マッスル、マッスル!」と叫んだ。その声は両国国技館にこだまして、次の瞬間「パン」と乾いた音がして銀色のテープがステージ上に舞い降りた。

観客達、レスラー、スタッフ達が多幸感に包まれる中、9年ぶりに行われたマッスル興行「マッスルマニア2019 in 両国~俺たちのセカンドキャリア~」は幕を閉じた。

 

正直、会場に入って興行が始まるまでは不安のほうが多かった。ほぼ10年前のマッスルを見て、私は本当に衝撃を受けた。「今までに見たことのないものを見た」と思ったし、今でもその印象は変わらない。しかし実際、思い出は美化されていく。

あれから私もマッスルメイツも年をとり、感性も変わっているし、DDTの興行内で行われたマッスル提供マッチもいまいち新しいファンに受け入れられていないように見えた。そしてやはり定期的に興行を打っていない中、マッスルメイツたちがちゃんと「マッスル」を出来るのか。そしてそれを我々観客があのときのように面白がれるのか。

そんな不安を抱えつつ、チケットが余っている、という話をツイッターで見て出来るだけマッスルの魅力を伝えようとエントリを書き、ウザいくらいツイッターで宣伝したりもした。なんというか、不安だけど期待していて、あのマッスルを知っている我々が出来るだけ見たことのない人々に伝えなければ、という変な使命感もあったような気がする。恥ずかしい話ではあるけれど、何かが出来る、と思っていたふしもある。

 

しかし、実際マッスルの魅力を伝えようとしたとき、それはとてつもなく難しいことだった。

「見てくれ」の一言で済ませたいところだけれど、実際に映像を見ようとしたらサムライTVの再放送を録画するしか無い。それではなかなか広がっていかないだろうと思い、あの手この手で説明しようとするけれどいい言葉が見つからなかった。

興行の中で起きたことを全て説明しようとすると恐ろしく長文になってしまってかえって伝わらなくなりそうだし、かといって省略するとよくわからなくなってしまう。ピンポイントで面白いシーン(「頂点」の大喜利シーンとか、「フィギュアプロレスリング」のワンシーンとか)はあるけれど、マッスルの醍醐味はそこだけではない。興行全体がラストに向けてデザインされていて、すべての要素が最後に繋がる喜び。そして笑いにまぶして最後にガツンと心を揺さぶってくる叫びだった。

うだつもあがらず色々な仕事を抱えながら戦うレスラーたちの鬱屈や、何かを目指して戦うハングリーさからの叫びは、何者でもないまま会社を転々とし、上手くいかないまま闇雲に生きていた自分とも重なってガツンと心に響いた。マッスルを見たあとはほぼ毎回、感動と充実感と、謎の敗北感をまといながら帰途についたものだった。

 

あれから10年。マッスルのない日々を過ごしていた。自分の状況はあまり変わっていないけれど、マッスルメイツはそれぞれあれから羽ばたいていった。スーパー・ササダンゴ・マシンは新潟で夕方のレギュラー番組のMCとなり、TV出演も重ねて知名度も上がった。男色ディーノはDDTのGMとなった時期もあったし、大家健はガンバレ★プロレスという城を持った。あのころのマッスルとは色々なものが変わっていったし、またそれは自然なことだった。

 

ライムスター宇多丸の、マッスルをロッキーに絡めた長いけど素晴らしい開会宣言に始まり、ペドロ高石引退試合では、参加選手が「プロレスリンピック代表選考試合」という要素のために選手たちが張り切ってしまったために本人そっちのけで試合が決まってしまい、マッスルメイツの抗議により再試合、出てきたのは青木真也!というサプライズ展開。最終的に息子さんからの手紙で感動的な引退試合となったけれどいかにも「マッスル』的な送り出し方。

そして続いて行われた「プロレスラー格付けチェック」ではバラエティ&プロレスの融合で笑わせ、満を持して純烈登場!純烈ファンも多く来場の中、例のスキャンダルもしっかりイジった上での同窓会ムードで暖かい空気になったと思いきや、四人になった純烈に鶴見亜門がイチャモンをつけ、酒井一圭も参加して「純烈新メンバー争奪時間差バトルロイヤル」に。すべてのことをムリヤリリングで解決しようとするマッスルの面目躍如、そしてまたこのバトルロイヤルが豪華!マッスルメイツに加えてゴージャス松野、赤井沙希、坂口征二、樋口和貞、そしてアンドレザ・ジャイアントパンダ!20分以上の激闘の末、まさかのアンドレザ・ジャイアントパンダ勝利で純烈入団決定に。斬新過ぎるユニットがここに登場したところで休憩に。

休憩後、「水曜日のダウンタウン」演出の藤井健太郎氏を巻き込んだ、ネットニュース先行でそれをなぞらないといけない形式のマッスル坂井&クロちゃんVS男色ディーノ&山里亮太でひたすら笑わせ、そしてメインはマッスル坂井が思い入れを語ってからのアントーニオ本多VSDJニラのシングルマッチ!

シリアスな雰囲気で始まったメイン、徐々にアントーニオ本多のプロレスになっていき、最後はスローモーション&ロッキーネタ展開での大団円。14年前にアントーニオ本多とマッスル坂井が出会い、そこから始まったストーリーがこの両国のメインイベントに繋がった。リング上でアントーニオ本多が語った「私には二人の父親がいる、本多 宗一郎の父親は渡辺哲、そしてプロレスラー、アントーニオ本多の父親はマッスル坂井です」という言葉にマッスル坂井が泣いていた。そして、「マッスル坂井が泣いてると泣いてしまうマン」の私も泣いた。

   

笑って泣いて、「マッスルマニア2019 in 両国~俺たちのセカンドキャリア~」は幕を閉じた。結局興行終了は21:30。17:00からの4時間半興行。結局私は彼らの手のひらの上で感情を揺さぶられ続けていた。それは10年前のマッスルと同じだった。マッスルはマッスルのまま、両国という大舞台であの頃のマッスルを見せてくれた。いや、アップデートされたマッスル。2019年の時代に沿った、グレードアップした選手たちによるマッスルを見せてくれた。

 

観戦した仲間と呑んだあとに帰路についた私の中にはなにかの燃え残りのような炎が虚にぶすぶすと燻っているようだった。充足と感謝と嫉妬と、色々な感情がないまぜになった何か。マッスルを見て受け取ったものを抱えてしばらくは生きていける。そんな感情を一言で表現すると

 

面白かった~、明日も頑張ろう!

ありがとうございました。

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