男マンの日記

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「メダルかじりがあらわれた!」モンスターを生み出す環境を考える

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「金メダルかじり」と「お嬢ちゃん発言」の根底にあるもの

オリンピックは終わりましたが、8月に入ってたてつづけにオリンピックに関する事件というか、なんというか日本の膿があらわになるというか、いわゆる「老害」がやらかす件が立て続けに起こりました。

まずは8月4日、ソフトボール代表の後藤希友選手に表敬訪問を受けた名古屋市長、河村たかし氏が渡された金メダルをいきなりかじる、という事件が起きました。

この件に対して世論が沸騰。一斉にバッシングが起こり、河村市長は謝罪し、かじられた金メダルは交換、ということになりそうです。

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そして一方、8月8日にTBS系列で放送された「サンデーモーニング」で、張本勲が自らのコーナーで女子ボクシング金メダルの入江聖奈選手に対して「女性でも殴り合いが好きな人がいるんだね。見ててどうするのかな。嫁入り前のお嬢ちゃんが顔を殴り合ってね。こんな競技好きな人がいるんだ」と発言。日本ボクシング連盟から抗議文を送られていました。そしてTBSが謝罪することに。

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このようにオリンピックで活躍した選手に対して72歳の河村たかし氏、81歳の張本勲氏が配慮に欠ける対処をしてしまったことで炎上、という事件が続きました。しかしなぜこういうことになってしまうのか。なぜこのような「モンスター」を生んでしまうのか、を考えました。

   

「モンスター」を生んでしまう環境と周囲の対応の積み重ね

私も40歳を越えているので色々と思うところがありますが、年齢を重ねるにつれ、10代、20代の社会常識が身体に定着してしまい、今の常識に合わせていくのが難しくなるもの。特にある程度地位が高くなると周りから怒られたりすることが減っていくし、友人も同年代の人達で固まっていきがちなのでなかなか意識が変わらない。

特に会社勤めなどしていると、自分の周りが同業種の社会人で固まっているため世間の10代、20代と触れる機会が徐々に減っていくことになかなか気づきません。そして気付くと自分の中の若者像がメディア、フィクションで表現されるものになっている。いわゆる「ステロタイプ」な見方になってしまう。

 

河村氏、張本氏も実際家に帰って家族に囲まれればいい家庭人であり、人格者な部分もあるのだと思います。家庭の中では同世代の、その家庭の中の常識が通用するので、二人共問題なく過ごしているでしょう。

そして、張本氏も河村氏も今まで何度か問題発言をしながらも大きな問題とならずに今まで過ごしてきました。その時々の失言もどこか「可愛げ」、「愛嬌」として処理され、見過ごされてきた。見過ごしてきたのは世間であり、メディアであり、張本氏にとっては「サンデーモーニング」のスタッフ、共演者であり、河村氏にとっては役所のスタッフでありマスコミになるでしょう。

 

その事自体は仕方ない部分もあると思います。私も上司がヤバいこといきなり言い出したらとりあえずスルーしますし、社長が壇上で何言ってもとりあえず拍手するでしょう。日本人は空気を読む、とかでなく、シンプルに職失いたくないですし、多少ネットで批判されてもその批判する人達が今後の生活について責任とってくれるわけでもないですし、やりすごしとけばだいたい問題なく過ごせる。そのような集団心理がだんだんと積み重なって、彼らの言動に対して世論が爆発したのが今回の2つの件だったように思います。

張本勲インタビュー掲載の吉田豪インタビュー集。これ読むと好きになる人もいると思います

本人たちにしてみれば「今まで世の中が自分たちを許してきたのに急に叩かれた」という感覚になっているのかもしれません。しかしそれは自分が世の中の空気に合わせられなかった、周りに世の中の代弁者、アドバイスしてくれる人間がいなかった、置かなかった不幸であり自業自得。プラス、そうなる前に回りが表舞台から退場させなかったのも今回の件が起こった理由だと思います。

河村氏は選挙で選ばれているので、即リコールはなかなか難しいですが、張本氏は番組が望めば降板させられるはず。しかし、張本氏も大沢親分と一緒にやっていたときは野球以外の競技にもリスペクトがあり張本氏を制することができたため問題にはならなかった。例えば若いけど張本氏にガンガンいける解説者を横において「今世の中はこうですよ」と諭していくとか。ここでバッサリ切り捨てるよりあの年代の人達がどうやって今と融和していくのか、を見せてほしいとも思います。

張本氏を降板させても、視聴者にも張本氏と同年代の似たメンタリティの人達が沢山いるわけで、張本氏が今に適応していくさまを見せていくほうが意義があるんじゃないでしょうか。

   

ともあれ、SNSの影響力が増大している今、やっている層とやっていない層の価値観の分断が大きくなっているように思います。なにか一言失言があるとどっと湧いて、避難が高まり、失言した側はSNSに縁がないのでその議論がピンとこない。そこから世の中のバッシングに繋がり、とりあえず謝罪するも本人ピンときてないしさらにSNSは沸騰する、という悪循環になりがち。

SNSの論調が必ずしも正しいというわけではないですし、SNSの中でも見ているものが全員一緒ではない。その上で今回の、特に河村氏の言動はヒドいと思いますが、彼らがバッサリ斬られると将来の自分がバッサリ斬られる未来も見えてしまうので、もちろん本人が一番考えてほしいですが、今回のように「モンスター化」してしまった人をどう世の中に引き戻すか。その前に対策するか。モンスターを生んでしまった側の人達も、改めて考えるべきことだと思います。

 

今だと許されないんだろうな~、というエピソード満載の吉田豪インタビュー集。こういう人間性を楽しみたい部分はありますが、今を生きていかないといけない。

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