6月7日午後2時、フジテレビで放送された「ザ・ノンフィクション:円丈vs老い~新作落語家~」に創作落語の中興の祖とも言われる三遊亭円丈師匠が登場し、老いによる記憶力低下と闘う姿を追いかけられていました。
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三遊亭円丈:新作落語とスキャンダル
三遊亭円丈師匠は現在70歳。六代目三遊亭圓生に入門し、前座名「ぬう生」のまま二つ目になり、真打ち昇進とともに「圓丈」と改名。最近は本人も「円丈」表記で活躍されてます。
円丈師匠といえばなんといっても新作派を引っ張っていった牽引者。1978年に渋谷ジャンジャンで「実験落語」を初め、その後も新作の会を主催。春風亭昇太、柳家喬太郎、三遊亭白鳥などの新作派に影響を与えた「新作落語」を語る際には欠かせない落語家さんです。
文筆活動も盛んで、最も有名なのは自らも巻き込まれた落語協会分裂騒動に絡めて師への複雑な思い、主に三遊亭円楽の悪口を綴った「御乱心ー落語協会分裂と、円生とその弟子たち」私も読みましたが、恨みつらみを述べるときの文章の面白さはかなりのもの。分裂騒動についてほぼ初めての当事者による著書であることもあり、出版当初はかなり売れたとのこと。
また、落語協会分裂騒動についてはこちらから。
そしてこの流れもありますが、2010年頃には三遊亭圓生襲名をめぐって三遊亭鳳楽と対決。圓生襲名落語会を開き、浅草東洋館を満員にしています。自ら動いてスキャンダルを起こして注目を集めて集客するという、まさに円丈師匠らしい展開。さすがです。
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衰える記憶力!老いとの壮絶かつ脳天気な闘い!
このように自虐ネタ、毒舌を売りとするクセの強い落語家である三遊亭円丈師匠ですが、今年でもう70歳。さすがに記憶力が衰えてきます。しかも円丈師匠がやりたいのは新作落語。古典と違い、自分で考えて自分で覚えて話す必要がある新作落語を70歳になってもやり続けるのは中々大変なこと。高座に上がっても噺を忘れ、手ぬぐいにカンペを貼り付けて高座に上がる円丈師匠の姿は鬼気迫るものもあり、痛々しくもあり、見ていてハラハラする姿でありました。
しかも私も聞いていて経験がありますが、演者が噺を忘れたり間違えたり、つっかかったりするとたちまち噺の中の世界から現実に引き戻されてしまうのが落語。そこから力ずくで、あるいは笑いにして噺に戻れる落語家さんもいらっしゃいますがそれにはかなりの腕が必要。しかも円丈師匠は噺の中で何度もつっかかり、カンペをじっくり眺め(もはやカンペでもなんでもないですが)噺を確認してまた話しだすという始末。本人の50周年記念落語会でも、CD収録落語会でも台詞が出てこずにつっかえてしまい落ち込む師匠。70歳のおじいちゃんが肩を落として落ち込んでいる姿は見ている側にも結構こたえます。
ただ、こういう時でも一生懸命にあがくのが円丈師匠。体力をつけようと「いきなりステーキ」でガツガツと肉を喰らい、高座の前には稽古を繰り返し、カンペもしっかり準備して高座に臨みます。白内障の手術時も、カンペが見やすい距離に目のピントを合わせてもらうほど。そして稽古の甲斐あって少しは記憶力が戻ってきたと語る円丈師匠。しかし取材陣が次に高座を取材した時、円丈師匠は驚くべき秘策を用意していたのです。
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これがIT落語?まだまだ高座に上がり続ける円丈師匠
高座に上がった円丈師匠の片手にはなんとタブレットPCが!そう、もう開き直り、カンペの代わりにPCを持って高座に上がっていたのです。記憶力が衰えた自分を逆手に取ってのタブレット落語。時々PCに眼をやるのもご愛嬌。自らの老いもギャグにして爆笑を取っていました。このしたたかさと執念!あとしばらくの間は円丈師匠の元気な高座は続きそうです。師匠の高座の予定などは本人作成のHPから。
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