近所のシネコンで見てきました。かぐや姫。
良かった。全然失敗作じゃない。素晴らしかった。素晴らしかったので思わずビジュアルガイド買ってしまいました。これも良かった。美しい世界・・・。
面白かった、とかハラハラした、とかより、しみじみ良かった。豊かな映画的体験をさせてもらった、という印象でした。
陳腐な表現ですが、上手い絵が沢山動いて贅沢なアニメーション体験をさせてもらった、という感じです。いわゆる海外アニメや芸術作品としてのアニメーションに近い表現が前編貫かれていました。その中で特に凄いと感じたアニメーションとしては
- 竹が輝いてにょきっと生えてくる描写
- かぐや姫が小さい人形から赤ちゃんにむくむく成長するくだり
- 草花が生え、虫が飛び、鳥や動物が跳ねまわる自然描写
- 人が溢れ、牛車が行き交う喧騒
特に、かぐや姫が赤ちゃん時代の動きが凄い。
アニメのキャラクターを動かす描き方、というのは、特に日本ではある程度方法が確立していて、ある程度その型にハマる動きしかしないものです。(例えば顎の線が見える角度から見えない角度に顔を上げるとか、キャラクターデザインの輪郭線が崩れがちな動きは避けられがちだとか。)しかし、この作品はそこにとどまらない。画面に出てくるものが全て動くんじゃないか。予想もできないアニメーションをするんじゃないか、という期待をせざるをえなくなってくるのです。
かぐや姫は赤ちゃんなのでごろごろ転がったり、上むいたり下むいたりムチャな姿勢取ったりを連続的に繰り返すんですが、それをいちいちきちんと描いている。そのおかげでTVや今までのジブリアニメとも違うアニメーションになっていると感じました。不定形なものが絵で描かれて動いている凄さ、というべきか。中々伝わりづらい凄さなんですが、実際に見たらその凄さが分かるはず。アニメとは何か?という高畑監督からの根源的な問いかけが個々にあるように思います。
とにかくアニメの基本である絵が動いて、そこに命が溢れる喜びを感じさせる作品でした。この作品を作れる、作る環境を維持できるスタジオジブリはやっぱり凄い。なんといってもこの作品、
制作8年、50億・・・。
それだけのことはある。アニメって凄い、と思わせてくれる作品でした。
さすが高畑勲監督。そして高畑監督といえば赤毛のアン。ザッツ名作です。マシュウ!マシュウ・・。原点はやっぱりこれ?捨丸と再開した後に森を飛び回るシーンが出た時には「ああ、アンでもこういうのあった!」と思いました。あれも凄かった。
高畑演出だけに似てるシーンもあるし、姫も性格がちょっとアンに近いかもしれません。時代に合わずに奔放。ただ、アンと違い、かぐや姫は悲劇に結びつくわけですが、そこがこの作品の真骨頂。「姫が犯した罪と罰」というコピーに通じていきます。人間としての喜びを徐々に得ていく姫、しかし目覚めては行けない感情に目覚めてしまう。悲しい結末だからこそ際立つ一瞬の煌き。同じようなシーンではありますが、アンとかぐや姫では全く違う意味があるシーンとして描かれていました。それが歳を取り、様々な経験をしてきた高畑監督の変化そのものを表していたのかもしれません。
それにしても、つくづく男ってバカだな~、っていう感じでした。
竹取翁も今だと毒親とか言われるんだろうか。おそらくあの時代の親としてはスタンダードな行動だったと思うんですが、ことごとく姫と食い違う行動が滑稽でもあり哀しくもあり。愛は有るゆえに子にとっては余計に厄介なところもあるんでしょう。
声ですが、伊集院光は途中で気づきました。ハマってました。面白かった。
あと、夏ぱっぱの安定感!
志の輔師匠は気付かなかった。
声優は軒並み成功なんじゃないでしょうか。違和感も特に感じなかったし。
翁は感情表現とかが長門裕之っぽかった。かわいいじいさんでした。
だらだら感想書いてますが・・・・。
DVD買って、ずっと流しておきたい。
それで時々気になったとこじっくり見たりしたい。
そんな映画でした。
2016/8/31追記
ブルーレイ購入報告。
何が凄いって、同時発売の
「高畑勲、かぐや姫の物語をつくる」というドキュメンタリー番組。
とにかく作品を作らない、作り始めても遅れまくる高畑監督をなだめ、すかし、向き合って作品を作らせる西村プロデューサー。「山田くん」を作ったことでジブリをボロボロにしてしまい、作品が作れなくなっていた高畑監督がどのようにかぐや姫を作ったのか。壮大なドキュメンタリーとなっています。
いやー、面白い。これを見るだけでもこのDVD買う価値有りです。それにしてもNHKでやってた宮崎駿、吾郎のドキュメンタリーといい、スタジオジブリってなんでこんなに面白いのか。やはり本人たちが一番面白い。必見です。
高畑勲、『かぐや姫の物語』をつくる。~ジブリ第7スタジオ、933日の伝説~ [Blu-ray]
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