雲田はるこ「昭和元禄落語心中」の7巻が通常版とアニメDVD付き特装版の二種類出ていたので、とりあえずアニメ付きを購入、DVDを見てみました。
DVD付き 昭和元禄落語心中(7)特装版 (講談社キャラクターズA)
- 作者: 雲田はるこ
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2015/03/06
- メディア: コミック
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基本的な「昭和元禄落語心中」のストーリーとしては
刑務所を出所した元チンピラの与太郎が、1年前に慰問で訪れた落語家の有楽亭八雲の「死神」に感動し、出所後そのまま八雲が出演している寄席に押しかけて弟子入りを申し出る。内弟子を取っていなかった八雲だが、与太郎を付き人として受け入れ、八雲と義理の娘・小夏とともに住み始める。
この後八雲と小夏の父である助六の過去ストーリーになっていくのですが、アニメはその手前まで。漫画で言うと一巻部分を映像化したものになっています。(ただし、萬歳師匠との二人会のくだりは省略されてますが)そして総尺は45分。かなりの力作となっています。
ただ、ストーリー自体は比較的スピーディーに進んでいきます。何故かと言うとこのアニメ、落語部分がかなりのウエイトを占めているのです。
- 師匠の有楽亭八雲(声:石田彰)演じる「死神」がおよそ4分
- 主人公の与太郎(声:関智一)演じる「出来心」が約10分
合わせて15分、3分の1が落語パートにあてられています。
落語(というか落語家というか)を題材にしたアニメといえば「じょしらく」ですが、あれはどちらかというと大喜利中心の会話劇であり、落語シーン自体はほぼ無かったように思います。
ま た、山村浩二の「頭山」は噺自体をモチーフとしたアニメであり、演者が落語をやるシーンはありません。落語のアニメ化といえば普通は「噺のストーリーをア ニメにしたもの」であり、演者が落語をしているさまをアニメ化したのはおそらくこの作品が初めてなんじゃないかと思います。
アニメの作画としては全体的にしっかりとしており、特にストーリー部分、漫画での決めコマはしっかりと再現されていると思います。特に一巻ラストのタクシー内でのシーンなどは迫力があって魅せるものがありました。ただ、それだけに料亭での八雲と千夏の会話シーンがカットされているのは残念。
肝心の落語シーンですが、演者はかなり熱演しており、全体的に力は入っていると思います。ただ、落語をやっている人物をずっとアニメで描く、ということに限界を感じたのも事実でした。
実際、漫画の中でも落語のシーンはイメージカットの連続で処理されることが多く、アニメ化された八雲の「死神」も2ページ、与太郎の「出来心」も6ページで終わっています。どちらもしっかりと噺がわかるように描く、というよりはイメージカットや客の視点を交えつつ場の雰囲気を再現する、という方向で描かれていました。
漫画では2巻で長尺の落語シーンがありますが、そこでも見ている側がかなり解説を入れ、噺の肝となる部分のみを描写しています。
今回のアニメでも、「死神」に関しては与太郎から見た感想ベースで構成されていたので、こちらはかなり違和感なく見れました。(一部、八雲が横スクロールしていく演出に結構ビックリしましたが)
しかし、10分位ある「出来心」に関しては、結構厳しいものがありました。基本的にはカット替えを多用したりしていますが、基本的には話しているだけであり、噺の情景を絵にすることもしないので与太郎のワンショットが中心。それが10分続くのと、落語の噺としてもドカンと笑うところがそこまで多くないので同じテンションで映像が続くのがなかなか厳しいところでした。
もちろん他にやり方は色々あったと思います。
原作ではもう少し千夏がヤキモキしながら聞いていたのでそのセリフ、表情をもっと入れ込んだり、「出来心」という噺のチョイスがそもそも与太郎のチンピラ時代の先輩に聞かせるためのものなので二人の関係性をはさんだり、与太郎の集大成として入門からの印象的なシーンをはさんだり、まあそもそも噺の尺を削ってドラマと関連する部分のみをピックアップしても良かったかと思います。実際、死神に関してはその方法を取っていたので。
ただ、今回ほぼ落語をまるまるアニメにしているのは、この販売形式ならではの挑戦というところもあるのではないか、と感じました。特設HPによればTVアニメ化も決定しているそうですが、TVだとさすがにこのように落語一席ずっとアニメにするのは厳しい。これを機会に「落語アニメ」を作ろう、という目論見があったように感じました。
この試みが成功した、とは言い辛い出来ではありますが、これをきっかけに一つ方法論を確立して欲しいところです。
アニメの出来はしっかりしていて、特に与太郎と八雲の関係性、声のイメージも合っていたので関智一、石田彰のファンの方や原作にハマっている方であれば特装版を買って損はないのではないかと思います。
漫画も面白かったですが、その感想はまた後程。
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