10・10新日本プロレス両国国技館大会のメインイベント、オカダカズチカVS丸藤正道をようやく、ようやく新日本プロレスワールドで観戦しました。
両国国技館の客席はこの大会では枡席4人掛け。おそらく今のプロレス団体で4人掛けにできるのは新日本プロレスくらいだと思います。(新日も2人のときもありますが)やはり大日本、DDTの両国と比べると一階席の密度が違う。みっしり詰まっている感じが盛り上がりを感じさせます。正直空席もぽつぽつありましたが、それでもかなりの入りを見せていました。さすが新日本。
試合開始直後はじっくりと腕の取り合いから丸藤のアクロバティックな切り返し、一方オカダは絞め技でギリギリと締め上げる静かな展開。たがいにじっくりと試合を組み立てるタイプなので、予想通りのスロースタート。しかし、そのタイトルマッチらしい空気を切り裂いたのは丸藤のチョップでした。鋭い「パシーン」という音と鈍い「ドスン」という音が両方同時にしているような丸藤のチョップがオカダの胸に叩き込まれ、身体を捻って苦悶するオカダ。所々オカダの反撃はあるものの、この試合全体のベースは丸藤のチョップが作っていったように見えました。
オカダはコーナーに座った丸藤へのドロップキックからの場外でのフェンス越しボディアタックでペースを掴みかけるも、丸藤はエプロンへのパイルドライバー、カウント19でようやリングに戻った所にコーナーからのドロップキック。なかなか自分のペースに持ち込めないオカダ。丸藤はかなり冷酷に攻め込んでいきますが、基本はチョップ。オカダも基本技で攻めていくので、古典的なプロレスかと思いきやリズムは今のプロレス。しかしテンポはいつもの新日本というより丸藤の全日本・ノアのテンポに近いように感じました。技の切り返し合いではなく、しっかりと間を取って互いの技を受け合う展開。その意味では丸藤が作ったリズムにオカダが乗っかっていったと言ってもよいかと思います。そして、オカダはその「やられっぷり」で試合の主役になっていきました。
チョップとエルボーの打ち合いで苦悶の表情を浮かべ、一発食らうごとにロープによりかかるオカダ。ここで胸を張って耐えるのではなく痛さを全身で表す姿。「天才」レインメーカーではなく、一人の等身大のプロレスラー「岡田かずちか」の姿がここから立ち上ってくるようでした。ペースを握られながらもトラースキックにはドロップキックで返し、不知火を切り返してジャーマン。やられながらも返していくオカダ。先を読みながら技を切り返し合ういつものスタイルとは違い、やられてやられて泥臭く立ち上がっていくオカダの姿は新鮮でもあり、感情、意地の見える闘いでした。
丸藤の不知火が炸裂し、虎王も喰らいフラフラのオカダ。ここで再びの虎王を狙う丸藤をツームストン・パイルドライバーで返したオカダが再びツームストンの体勢に。連発か?と思いきや丸藤を持ち替えたオカダはなんとエメラルド・フロウジョンの体勢で丸藤を落とし、これを返された所でレインメーカーで3カウント。なんとか丸藤を降し、防衛を果たしたのです。
そして試合後、素直に丸藤を認めたオカダ。思えば凱旋帰国以来、ほぼ相手を認めずに上から目線で闘ってきたオカダ。棚橋とは「先輩レスラー」という視点より「ライバル」という立ち位置でずっとやってきたため、「ベテランレスラーのペースに乗っかって受け身で試合をする」という姿をてらいなく見せられたのはこの丸藤戦が初めてではないでしょうか。つまりは「等身大の若手レスラー」としての姿を他団体の丸藤相手に初めて見せることが出来たということでしょうか。素直に好青年っぷりが出ていた試合でした。
結果的にこの試合はプロレスリング・ノア、そして丸藤を新日本プロレスファンに売り込む最高のプロモーションになったように思います。この試合を見て、文字通り「オカダ・カズチカはノアとはレ~ヴェルが違うんだよ」と思ったファンはそうはいないんじゃないかと思いますし、丸藤自信の技バリエーションとしてはまだ凄いものは出し切っていないまま。まだまだ底を着かないままに負けていった丸藤。ある意味オカダ、新日本プロレスから「まだまだノアとはやっていく」というメッセージのようにも思えます。負けた丸藤を抱えて、悔しそうな顔をして去っていくマサ北宮も新日本プロレスワールド視聴者には印象に残ったことでしょう。
これからのプロレスリング・ノア、新日本プロレスはどういうふうに絡んでくるのか。鈴木軍はどうなるのか。来年はここらへんがガッチリと軸になっていくような予感がしたこのタイトルマッチでした。がんばれアグレッション!
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