心のメインイベント・世界Jr選手権試合 岩本煌史VS阿部史典
1月24日、全日本プロレス後楽園ホール大会が行われ、私も観戦してきました。この日のメインイベントは諏訪魔VS芦野祥太郎。葛西純VSブラックめんそ~れのGAORA選手権もあり客席もほぼ満席、全体的に盛り上がった大会でした。しかし個人的な「心のメイン」はセミファイナルで行われた世界Jr選手権試合
岩本煌史VS阿部史典!
現全日本プロレス・世界Jr王者の岩本煌史、プロレスリングBASARA,元ユニオンMAX王者・挑戦者の阿部史典。この二人は名古屋のプロレスリングのあるスポーツバー、スポルティーバでデビューした先輩後輩の仲。2012年デビューの岩本、2014年デビューの阿部。名古屋にルーツを持つ二人が東京の団体所属となり、全日本プロレスのタイトルマッチでシングル対決。まさに「同じ釜の飯を食った二人」がプロレス界のド真ん中で対決。浪漫!
年末の佐藤光留Presents,「Jr Battle Of Glory」トーナメントでも組んだ二人。惜しくも決勝進出はなりませんでしたが、そのときから息のあったコンビネーションをみせていました。
いざセミファイナル・青春タイトルマッチ開戦!
そして試合は進みセミファイナル。早速入場したのは阿部史典。タオルアクションをカマしながら、「格闘探偵」Tシャツで入場。格闘探偵団バトラーツ、澤宗紀をルーツに持つ阿部史典。全日本プロレスでも「格闘探偵」を貫く意思を感じます。
そして阿部とは対象的にガウン、オーバーマスク、そしてベルト姿。堂々たるチャンピオンとして入場した岩本。はっきりと「受けて立つ」という姿勢を感じます。心なしか後ろに立っている李日韓レフェリーも心強そうに見つめています。きっと。
そして試合開始、いきなりバックを取りに行く阿部、すかさず取り返す岩本。そこから離れた両者はじっくりと間をとってから組み合い。寝技の展開に。岩本が腕を取り、阿部が飛行機投げから腕を取ると岩本が足をすくっていき、レッグロックからネックロックへ。すかさず脇固めに返す阿部。寝技に関しては阿部が一日の長がありますが、岩本もしっかりと受けて返していく大人のレスリング。やんちゃな弟を兄が制しているような、後輩を先輩があしらうように返していきます。
そして観客がノッてきたら力を発揮してくるのがこの阿部史典というレスラーの真骨頂。観客を煽り、手拍子を起こしてからのサッカーボールキック!!
しかし蹴られた岩本も立ち上がって睨み合いに。試合はだんだんヒートアップ。岩本もDDTからSTFで絞り上げ、客席にもそれが伝わっていきます。しかし阿部も突進してくる岩本にドラゴンスクリュー、コーナーの岩本にスクリュー式のソバット、そしてビクトル投げからのレッグロックから膝十字とテクニックの多彩さを見せる。5分経過し、一進一退の攻防が続きます。
エルボーとビンタの打ち合いから、蹴りに来た岩本の足をとって阿部がドラゴンスクリュー、岩本はロープの反動を利用しての一本背負いと互いに得意技の応酬。そこから岩本が肩固めで阿部を締め上げ、そこから叩きつけたところを阿部が脇固めで切り返す。互いを知っているだけに技の切り返しもエグい。脇固めから腹固めに移行する阿部。ロープに逃れられるも「負けてたまるか!負けてたまるかァ~!」と叫ぶ。気持ちが「漏れてる」阿部。
その後阿部が腕へのオーバーヘッドキック、岩本がロープに振ってのニーリフト、再びロープに飛んだ岩本に阿部がドロップキック、すかさず岩本の膝蹴り、阿部の延髄斬り。息をつかせぬ攻防が繰り広げられます。
岩本のラリアット、阿倍の延髄斬りから両者ダウンの状態の二人。寝たまま蹴りあい、殴り合う二人。膝をついてのエルボー合戦から立ち上がってのエルボー合戦。その打ち合いをスピンキックで制した阿部が顔面への伊良部パンチから渾身のお卍固め!
長時間締め上げて技を解いた阿部が再び伊良部パンチを決めるも岩本も裏投げで反撃。すかさずブレーンバスター、ジャーマン・スープレックス・ホールドと畳み掛けますが阿部もカウント2で返す!
続いてドラゴン・スープレックスを狙う岩本ですが、これは怨霊クラッチで返した阿部、しかしすかさずロープに振られた阿部、岩本が狙いすました孤高の芸術炸裂!
しかしそれを食らった勢いで丸め込む!カウント2!初めてみた切り返し!
さらにすかさず再びの孤高の芸術!さすがにこれは返せない!カウント3。
最後まで激しかった試合を制し、岩本煌史が世界Jr王座の防衛を果たしました。
しばし隣同士に倒れ込んで、互いに何かを語りかける二人。さしずめ運動部の放課後、練習が終わったあとのような、二人の間だけの空間がそこにあるようでした。
そしてベルト写真を撮ってから互いに座礼。深々と頭を下げる二人。タイトルマッチに爽やかな風が吹きました。
まとめ
名古屋からの先輩後輩の対戦。私は名古屋時代を見たことないですが、互いの絆はビンビン伝わってくる試合でした。シリアスな中で互いを確かめ合う動きもあり、互いを知っているからこそじゃれあうような場面も。爽やかかつ激しい試合を孤高の芸術で勝利した岩本煌史が見事に防衛しました。最後は座礼でしめくくられたこの試合、爽やかな風が吹きました。
この試合でも思いましたが、阿部史典の面白さが際立ちました。技の予備動作からインパクトの緩急の激しさ。止まってから一瞬で動く激しさにこっちが裏切られる。と思ったらノーモーションでのソバット、ドラゴンスクリュー。ときには観客も転がしてくる。その多面性に本当に魅了されました。
そしてその阿部史典にきっちり勝った岩本煌史。全日本Jrチャンピオンとしてノア、新日本ら他団体のチャンピオンを見据え、どこまで全日本Jrの価値を高められるかの勝負もしないといけない立場。今回ハッキリとその王者っぷりを見せましたが、さらに次のCIMA戦で何を見せるか。しばらく正念場が続きそうです。