試合前の舌戦で話題を集めたこの一戦。両者ともいつも通りの入場。会場人気は少し内藤が上か、という声援の中ゴング。静かに試合が始まります。
まずみのるを場外に投げた内藤が恒例の寝そべりポーズ。そしてリングインした鈴木から避けるため内藤が場外に逃れると、みのるも同じく寝そべりポーズで対抗。まずは心理戦。かけひきから入っていきます。スカシ系ヒールの内藤に、みのるがつきあっていくことで優位に経とうとしていく流れ。しかし、みのるも最近とみにヒール色を強く出していて、観客のヒートを買う発言を繰り返しています、つまりスカシ系ヒールと純粋憎まれヒールとの闘い。ヒール同士でどちらがマウントを取るか、という闘いも技の応酬と同時に行われているのがわかります。
ここで内藤が動きます。場外にみのるを引きずり出して鉄柵攻撃。そしてリング内に戻ってヘッドシサーズで締め上げる内藤。ラフから寝技でペースを掴みにかかります。しかしすかさず気迫を全面に出して蹴っていくみのる。反撃を受けつつもあくまでもナメた感じの内藤、しかしここでみのるが一気にラフファイトに!
再び場外に内藤を蹴り出したみのる、エプロンからのPKから鉄柵にホイップ、凄いイス攻撃、ついでにヤングライオンを蹴り飛ばして存分に怒りを表現。怒りといっても分かりやすい怒りではなく、青い炎がメラメラ燃えているような冷たさを含んだ怒り。その怒りで攻め続けるみのる、会場は内藤コール。その観客にも怒りを向け、罵声を浴びせるみのる。最近の中でもヒールを意識しているよう。怖い鈴木みのるを存分にアピールしていきます。座った内藤を蹴りまくり、アームロックで手首を曲げて腕を絞り上げる。内藤もツバ攻撃から低空ドロップキック、ネックブリーカー連発と反撃。あくまで半笑いを保ったままの内藤。みのるのPK三連発、内藤のスイングDDT、みのるのエルボーと内藤のチョップの打ち合い。エグい角度でエルボーを当てていくみのるですが、内藤もジャンピングエルボーで反撃。シーソーゲームが続きます。
ここでみのるが大技!内藤がみのるをロープに上げようとしたところでレフェリーを掴んで防御、突き飛ばし、内藤へロープ越しにアキレス腱固め!これは珍しい!しっかり両足とフックした腕で締め上げる。ヒール&寝技が得意なミノルらしい技でここで一気にペースを握ります。そしてさんざん包帯をしている右膝を蹴っ飛ばしてからの膝十字!しかもきっちりと極めていない左足もロックしての膝十字がガッチリと極まる!ここは何とか逃れますが、こうなるとみのるの独壇場。エルボーを連発してからの足四の字。理詰めの足攻めで内藤を追い詰める。リングの真ん中で極まった四の字、なんとか少しずつ這ってロープに逃れる内藤。この段階ではさすがに内藤の余裕も消え、みのるも少し疲れが見えてくる。試合はもう20分経過、
ここから明らかに会場ではみのるがヒール、内藤がベビーフェイスの構図になっていき内藤コールが観客から湧いてきます。そもそもこのタイトルマッチ、チャンピオンがみのる、チャレンジャーが内藤なんですが、みのるのヒール要素が爆発した結果内藤がベビーフェイス的立場になっていくと同時に、内藤が防衛戦みたいな空気に。
ここで内藤もDDT,リバースDDTで反撃しますが、みのるは内藤を倒して再び膝十字。頭を固めて、ロープに逃れられそうになるとリングの真ん中に引っ張ってくる周到さ。そこから逃れられそうになるとアンクルホールドの形にしてからの倒れ込んで膝十字、内藤が反転しようとすると今度はクロスヒールホールド、そして一回技を解いてからの膝十字。この間5分間、ひたすら膝を攻め続けるみのる、こらえる内藤。こうなると為す術のない内藤でしたが、みのるが再び技を解いてヒールホールドに切り替えた所を回転してなんとかロープに。次々と形を変えながら膝を攻め続けるみのるの引き出しは流石。そして寝技で対抗できない内藤の弱点が露呈した形。内藤はほぼレフェリーストップ寸前の状態に追い詰められます。あやうし内藤!会場は完全に内藤コール!
そしてとどめのスリーパーに入るみのる。そしてゴッチ式パイルにいこうとしたみのるですがここは内藤がなんとか返し、意地を見せます。そしてここから反撃を開始する内藤、気合のビンタ連打でみのるをグラつかせ、逆落しは垂直落下式ブレーンバスターで返してディスティーノ!3カウント!内藤勝利!
正直見てて「え?」と叫んでしまいましたが、ほぼ9割みのるが支配していた試合。内藤も余裕を失い、本当に絞り出した勝利でした。30分にわたる勝負。正直、みのるが内藤の膝を攻めていた時間が30分中10分は越えていたんじゃないかという試合でしたが、瞬間的なたたみかけで勝利した内藤。新チャンピオンとなりました。そしてマイクを取った内藤。熊本の観衆に語りかけます。
約2年5か月ぶりの新日本プロレス熊本大会、ということは・・・。約2年5か月ぶりの熊本での新日本プロレスとロス・インゴ・ベルナブレス・デ・ハ・ポン。我々の提供する最高級のプロレス、皆様、堪能していただけたでしょうか?
2年前、この熊本で大変なことが起こりました。
今もあの時の傷を持っている方々、たくさんいらっしゃると思いますが、だからこそ、俺は言いたい。
変わらないこと、あきらめないことはもちろん大事。でも、変わろうとする思い、変わろうとする覚悟そして、一歩踏み出す勇気も、俺は大事なことなんじゃないかなって、思います。
だから!だから、我々ロス・インゴ・ベルナブレス・デ・ハ・ポンは、プロレスを通じて、一歩踏み出す勇気を皆様に与え続けていきたいなと思います。
次回の熊本大会、さらに進化した我々、ロス・インゴ・ベルナブレス・デ・ハ・ポンのプロレスを、熊本の皆様、楽しみに待っていて下さい。
つまり、つまり~!次回の熊本大会まで・・・。
トランキーロ! あっせんなよ!
そして最後に「デ・ハ・ポン」コールで締め。観客を勇気づけ、最後に締める。完全なベビーフェイスとしてベルト奪取、というかベルト防衛のような雰囲気で興行が終わっていきました。チャンピオンと挑戦者の構図が試合後には逆だったような捻れを感じさせたタイトルマッチ。攻められ続けた内藤が一発で取る、というのもまさにチャンピオンの試合。今のロスインゴ人気が内藤を後押しした形となりました。
こうして終わっていった新日本プロレス熊本大会。個人的には圧倒的な鈴木みのるのヒール力と関節技の引き出しに唸ったメインイベントでした。新日本復帰直後にIWGP挑戦、その後にNEVER,インターコンチとベルトを獲っていき、再びIWGPを狙う日があるだろう、と思わせる闘いでした。内藤が勝利した試合ですが、これからの鈴木みのるがどうするか気になる。それが今の私の興味です。いや、みのる凄かった。全盛期!
ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン〈新日本プロレス〉 (スポーツアルバムNo.60)
- 作者: 週刊プロレス編集部
- 出版社/メーカー: ベースボール・マガジン社
- 発売日: 2017/12/18
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