前回に引き続き昭和元禄落語心中第五話をNHKオンデマンドで視聴しました。ここからしばらく鬱展開が続きますが、ぐっと踏ん張りつつ感想を書いていこうと思います。ちなみに一話~四話の感想はこちらから。
第五話「決別」
第四話で破門にされた助六、一方真打としてトリを任せられる菊比古。両者の境遇が大きく動いていく第五話は、原作四巻の八雲と助六編「其の六」、「其の七」をベースに進んでいきます。
この話は話が入れ子になっており、現在の助六、菊比古のストーリー、そして病に倒れた八雲が語る、師匠八雲の過去回想シーンの2つで構成されています。(この話全体の構成を一話でやっている、と言えるかもしれません。)
この五話で印象的に描かれているのは、まず師匠八雲の過去回想シーン。
父に師事した若き日の八雲ですが、才能に勝る一人の弟子が入門。何をやってもかなわなかったその弟子に様々な手段で対抗し、工作した末に八雲の名を譲る約束を父にとりつけ、失望したその弟子は出ていってしまいます。その弟子の名は助六。そう、まさに自分の弟子、助六の育ての親だったのです。
そのことを知っていた八雲、自らの弟子の助六、菊比古への嫉妬心、自らの後悔などを病床の傍らにつきそう菊比古に吐露して死んでいきます。落語界の師弟関係、本当の親子関係も絡まった関係性の複雑さと哀しさを表したこのシーン。「業」のようなものを感じさせられます。
助六はみよ吉との間に子ができたことで東京を離れ、菊比古は師匠の八雲を看取り、有望な真打ちとして落語界を背負う立場に向かっていく。二人の別離がはっきりする第五話、しかしその数年後、菊比古は助六の行方を求めて旅立ち、久々の再開を果たす。抱き合う二人、というところで第五話「決別」は終わります。
今回なんといっても印象的なのは菊比古と助六の別れのシーン。
東京を離れることを菊比古に告げた助六。懸命に食い止めようとする菊比古ですが、結局最後に正式に後ろ盾があって弟子入りした菊比古と根無し草の助六ではそもそもの立場が違う、と突き放され、しかしせめて落語はやめないように、とすがりつきます。
二人の絶望の表情、うつむく助六にしがみつく菊比古。このために岡田将生を起用したのか、というくらい美しい別離のシーンになっています。このシーンを見るためだけでもこのドラマを見るべき、と言っても過言ではないでしょう。いや、美しい。
と、このように菊比古と助六の別れをじっくりと、ねっとりと描いた第五話でした。男同士の友情と嫉妬、三角関係とあらゆる感情を描き出してきた昭和元禄落語心中。
「八雲と助六編」も残り一話。どのような結末を迎えるのか、私は知ってるだけに憂鬱な気分になるところもありますが、しかしだからこそ美しいし見応えがあるというもの。とにかく美しい別れを見せてくれた第五話「決別」感想でした。おあとがよろしいようで。