宝島社から出ている原田久仁信「劇画 プロレス地獄変」を読みました。
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・実録WJ「地獄のど真ん中」前編・後編
・渕正信&G馬場「ザ・ジャイアントワールド」
・ノア巨額詐欺事件の真相「だまされてODAWARA」
・マイティ井上「ノア夢十夜」
・北朝鮮・平和の祭典「平壌の冷たい夏」
・橋本真也夫人の回想「ある愛の詩」
・ドキュメントFEG破産「Kの悲劇」
・ターザン山本「放蕩息子の帰還」
・内外タイムス倒産!「ゴマシオ百年の孤独」
・さすらいのヒットマン「阿修羅・原物語」
・悲しみの大巨人「アンドレ・ザ・ジャイアント伝説」
・アンドレVSハンセン頂上対決「”田コロ伝説”の舞台裏」
・はぐれ国際軍団「ラッシャー木村 男の涙酒」
というわけで、この目次タイトル群にグっと来た人は読んで損はないでしょう。栄光の季節を過ぎた人生の終盤、現実と戦い、あがくレスラーたちの姿を赤裸々に描いた、いわば「裏プロレススーパースター列伝」とも言うべき一冊、というだけで充分なわけで。
とにかくいろんなレスラーの人生が詰まっているこの一冊。
WJでメジャー意識が抜けず大失敗する長州、とばっちりを食う健介、振り回される永島。北朝鮮でただムチャを言う猪木。浮気しほうだいの橋本などのただただ自業自得なドタバタ劇。
それにはぐれ国際軍団、アンドレ・ザ・ジャイアント、阿修羅・原と続く染みる、そして少しホロっとできる男達のブルース。
そしてリアルに「詐欺には気をつけよう」と思えるノア関連の話など、色んなテイストの話があり、共感出来たりできなかったり。またハードな話でもそこは原田先生の茶目っ気ある切り口、レスラーの困り顔に思わずほっこりとしたりして楽しく読み進められます。
そもそもこの漫画群は別冊宝島のプロレスムック本に掲載されていたものをまとめたもの。雑誌自体はどぎついトーンと露悪的な匂いが強くてあまり好きじゃなかったんですが、この「劇画 プロレス地獄変」 一冊にまとまってみると、漫画という形式と作者のプロレス愛もあいまって楽しく読めました。アンドレや阿修羅の話とか純粋にイイ話も入っているのがいい。それにヒドい目にあってもどこか憎めない、愛嬌のあるレスラーたちの悲喜こもごもが描かれた、コクのある一冊になってます。
谷川さん・・・。
激しい試合シーンも。中邑の表情がちょっとツボですが。
龍源砲再会シーン。任侠映画のようなこの渋さ。
そして、今の新日を見ていて何かが足りない。物分りのいいエンターティナーの競演に退屈さを感じるファンもぜひ一度この「劇画 プロレス地獄変」を手にとって欲しい。そして出来れば「プロレススーパースター列伝」とともに、プロレスの光と影、このコクのありすぎる世界を垣間見て欲しいものです。今の時代、確実に間違った生き方なのははっきりしてるんですが、どこか魅力的なのも確か。そんな昭和のプロレスラーたちを味わえるのがこの本なのです。