男マンの日記

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プロレスという鏡から見る世界。ディック東郷「東郷見聞録」に感じるプロレスの豊かさ。

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先日、2020年1月末に発売されていたディック東郷の著書「東郷見聞録」を読みました。一気に読んだ、というより出先とか通勤中にちょいちょい読んでようやく読み終わったのでその感想を書いていこうと思います。

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このブログをちょいちょい読んでくれる方にはディック東郷の説明をするまでもないのかな、と思ってるんですが、書名から辿った方、ふんわりたどり着いた方もいるかと思うので、改めて簡単にディック東郷について振り返っておきます。

ディック東郷は1991年、ユニバーサルプロレス(日本初の本格的ルチャ団体、ザ・グレート・サスケ、スペル・デルフィン、邪道・外道などを輩出)から「巌鉄魁」としてデビュー。あっさりと団体が消滅したこともありみちのくプロレスで「SATO」としてマスクマンとして参戦します。

そして後に素顔になってリングネームを「ディック東郷」と改名。これを機に「海援隊☆DX」として、獅龍、テリー・ボーイ、TAKAみちのく、船木勝一とユニットを結成。そのままWWFに乗り込んだのが1998年。ここからWWFでの一年間が世界で「ディック東郷」として最も有名だった時期だと思います。

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しかし1年ほどで日本に戻り大阪プロレス入団、2004年にはプロレスラー養成所「SUPER CREW」を設立。ここからDDTの佐々木大輔、プロレスリング・ノアの覇王、プロレスリングBASARAの久保らを輩出。

その後はK-DOJO、みちのくプロレス、DDTなどを渡り歩いた末に引退世界ツアーを発表。2011年に国内ラスト引退興行を行って外道と対戦。その後引退世界ツアーに旅立って2012年9月、ボリビアの地で引退試合を行いました。この「東郷見聞録」はこのときの世界ツアーの様子を東郷が日記形式で振り返った本になっています。 

東郷見聞録~世界一周プロレス放浪記~

東郷見聞録~世界一周プロレス放浪記~

 

 2012年の8月に日本を旅立ったディック東郷。とにかくそこから世界中を回っていきます。まずはオーストラリア、そしてヨーロッパへ。イギリス、フィンランド、ドイツ、ベルギー、フランス、スペイン、イタリア。そしてアメリカからメキシコ、南米に渡ってペルー、エクアドル、チリ、そしてボリビア・・・。とにかく掛け値なしに本当に世界中を回った「ワールド・ツアー」になってます。とにかく凄い。

そして、これだけ世界を回ってもそれぞれの国できっちりとプロレスの試合を行っているのがディック東郷の凄い所。日本を旅立つところから全部のスケジュールが決まっているわけではなく、その都度オファーを受けつつ色んな国に行くスタイル。国によってプロレスが盛んな国、ほぼ行われていない国など様々ありますが、読んでいて興味深かったのがツアー後半になって南米に入ってからのプロレス珍道中。

ここで面白かったのは、あまりプロレスが盛んではないけれど情熱のあるレスラーが選手を集め、団体を作って日々生活をしながらプロレスをやっていたりするペルー、チリ、アルゼンチンなどの国々。そこにはそれぞれの国民性、人々の生活があり、それぞれの形でプロレスと付き合っているのが見えてきます。選手の職業は様々で、タクシー運転手だったり八百屋だったり大工だったり。そんな彼らが仕事が終わったあとに練習に集まってくる。山奥の掘っ立て小屋にリングがあってそこでディック東郷が練習を教えたり、その東郷の宿がホテルではなく団体レスラーの親戚の家、その庭で団体の選手が集まってバーベキューをしたり酒を呑みながらプロレスについて語り合ったり。アメリカ、日本、メキシコのようにしっかりと団体があり道場があり、コーチがいて専業の選手が真面目に練習して・・・。というプロレスとはまた違う光景がそこには広がっています。

時には試合がなくなったり、警察のストに出くわしたり、人種差別の現場を見てしまったり。いろんな事件に巻き込まれつつも今までの弟子たちも集結し、なんとかボリビアでの引退興行を成功させるべく走り回るディック東郷。この本は「プロレス世界紀行」であり、「ディック東郷世界冒険記」でもありました。

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日本では今いろんなプロレス本が出ています。UWFの裏話、選手たちの確執、隠れた最強選手は誰か・・・。プロレスという文化が成熟してるからこそ日々色んな本が出てるわけですが、実際に世界を回ったディック東郷の圧倒的説得力、そして「プロレス」というものの多彩さに改めて気付かせてくれる本でした。堅苦しく考える必要なんてない。世界では色んな人が色んなプロレスをして闘って騒いで楽しんでるんだよ。そんなディック東郷のメッセージが伝わってくるようでした。

プロレスにそんなに思い入れがなくても旅行記として楽しめるし、プロレスファンからしても東郷が出会った選手たち。ザック・セイバーJr、マーティー・スカル、ワンチューロ(現ディエゴ)、ハートリー・ジャクソン、という名前を見つけるだけでも楽しい。なんというか、プロレスの「豊かさ」を感じさせてくれる本でした。 

東郷見聞録~世界一周プロレス放浪記~

東郷見聞録~世界一周プロレス放浪記~

 

 ちなみにディック東郷(@boliviacuba)はこの引退ツアーの後、2016年に復帰して現在みちのくプロレスで活躍中です。積極的に色んな団体に参戦しているので、この本読んで興味持った方もぜひ一度試合を見て頂きたい。「レスリングマスター」と呼ばれるだけはある。しっかり楽しませてくれることは保証します!本も試合もオススメです!