男マンの日記

マンガ、落語、お笑い、プロレス、格闘技を愛するCG屋の日記。

「プロレスキャノンボール」感想(ネタバレあり)映画よりめちゃイケより面白い「映画館で見るプロレス興業」!?

というわけでネタバレありのリアルな感想。リアルといっても一つ前のがフェイクというわけではなく、踏み込んだというか、穿った見方中心の感想です。

 

最も笑った菊池の一言

基本的には大家に爆笑しながら見ていたこの映画。そのピークになったのは、菊地毅の放った「俺は夢の中にいるのか」の一言。そりゃそうだ。仙台のとあるバーの中、大家と今成という二人のプロレスラーが全裸になってビンタの張り合いをしているのだから。「あまりにも俺の常識と外れてて、まるで夢の中にいるみたいだ」と菊池がつぶやくのも無理もない。しかし本人大真面目。この、間抜けだけど本人は真面目なゆえのギャップが笑いにつながり、それはこの映画の中で存分に発揮されていました。この「裸で張り合う」ことを提案し、事後の報告を受けて爆笑していたディーノチーム、大家が泣く度に爆笑し、最後には泣く大家を写メして爆笑していたマッスル坂井の底意地の悪さにもニヤリとさせられました。いや~、笑った。あの破壊力は凄かった。ほんとうに「ほろ苦いけど笑える作品」に仕上がっていたと思います。

東北復興」というテーマの唐突さ

ただ、ラストの東北で興行をする、という展開にはあまり必然性を感じなかったかな、というのが本当のところ。一日目の試合が基本的には関東圏で行われ、二日目の試合は東北。ここで実際に客と触れ合う試合をしたのはディーノ組と大社長組。そして、作中で実際に「プロレスに飢えている観客」と触れ合い、感じたのはディーノ組でした。ゆえに、興業を実際にはっきりと提案するのは飯伏、HARASHIMA、ディーノであるべきだし、あそこでディーノが周りを動かす形で話が進めばもっと納得感があったかと思うのですが、実際提案したのは鈴木みのるでした。プレビューを見て全員が感動する、みたいな描写もなかったので、ちょっと唐突に見えたのが正直なところ。パワーバランス的に一番上の鈴木みのると高木三四郎が話を進めていったのも予定調和感のある部分でした。下から上を突き動かして欲しかった。

まあ、結局最後には「プロレスっていいよな~」とか思ってしまうちょろい客でもあるし、それも画の力、特にバラモン兄弟に水をかけられ号泣していた子が飯伏を一生懸命応援する姿をはじめ、ニコニコしながら試合を見守る観客たち、メインイベントの試合中に売店で売り子しながら立ち上がって試合を見てしまうサスケ、夢中で試合を見る選手たち、号泣する大家、会場が一体となるという表現がありますが会場の全員がリングに夢中になっている光景にはぐっとくるものがありました。

映画になりきれなかった「プロレスキャノンボール2014」

bylines.news.yahoo.co.jp

てれびのスキマさんが言及されているように、マッスル坂井はこの映画を作るのに「めちゃイケ」を参考にしたと話しています。正直今のめちゃイケと比べれば100倍くらいは面白いと思いますが、故に映画というよりはTV的なつくりになっています。

特にカットを細かく割っていき、ナレーションベースで事件を並べていくあたりバラエティ的というか。そのおかげでテンポよく見れて面白かったんですが、ただそこで少し不満だったのが大家と今成の心情もナレーションで処理してしまったこと。そこはナレーションがなくても徐々に伝わってくる形にして欲しかった。撮影方法的に難しいかもしれませんが、ただ事後に掘り下げた映像を流すとか、DDTの初期~ユニオン~ガンプロの映像を入れていくという手法もとれたはず。そこが残念なところでした。

 

というように、この映画について「映画になりきれなかった」部分があるとしたら、それは実質的な主人公、大家の掘り下げの不足なのだと思います。

今成と二人でキャノンボールに参加する決意を固めた経緯、東北に残り宣伝活動をした光景、もっと映像で表してこっちの心に植えつけて欲しかった。確かに思いが先走って号泣する大家の姿で伝わるものはありますが、やはり説明されずに画で見せてからの号泣でこそぐっとくるもの。その部分をナレーションにした時点で(予算的、時間的限界もあったかと思いますが)この作品は映画的ではなく、TV的、マッスル的手法を選択したのだと感じました。

帰ってきたマッスル

なんだかんだ言って結局楽しかった「プロレスキャノンボール」やはり「マッスル」を思い出しました。コメディタッチで始まり、そして中盤に大転換。ラストは泣かせるドラマに仕立てるというこの構成。さすがの職人芸。そしてやっぱり「プロレスはいいもんだ」と思わせるつくり。素晴らしかった。満足しました!

KAMINOGE―世の中とプロレスするひろば〈vol.39〉話のできる男・飯伏幸太

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 結論としては

「映画館でいいプロレスを見せてもらいました」

 ぜひTVでも放送して、全国のお茶の間のドギモを抜いてほしい。ドギモを抜いてから「プロレスっていいね~」と思って欲しい。その力のある作品だと思いました。

 

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