男マンの日記

マンガ、落語、お笑い、プロレス、格闘技を愛するCG屋の日記。

3・21ガンバレ☆プロレス板橋大会。今成革命とプロレスリングを見る喜び。

 新日本プロレスのニュージャパンカップが行われた日、私達は板橋グリーンホールでガンバレ☆プロレスを見ていた。いつものように開場より早めに集合し、居酒屋でダラダラと呑む。その店は孤独のグルメで登場した店の支店らしい安めの居酒屋で、サイコロ振ってゾロ目だとハイボールがタダに。偶数だと半額、奇数だと倍の値段(量も倍)になるので思わず多めに飲んでしまい、そのせいで開場から少し遅れての入場になってしまった。だから入場式でのマイクは聴いてない。丁度第一試合の松永VS鷲田が始まるところだった。

 

板橋グリーンホールの客席は7~8割埋まっている、というところだろうけれど、そもそもイスの数がそんなに多くない。頑張ればあと1~2列は並べられるだろう、というところがぽっかり空いている。昼に同じ会場でやった東京女子の画像をtwitterで見ると、明らかにガンプロよりイスが多く並べられ、その席もぎっしりと埋まっている。

思えばガンバレ☆プロレスは常にレギュラーが入れ替わっている。二年前の後楽園ホール大会では大仁田と大家が6人タッグで闘い、なんとか満員と言っていいくらいの動員となりこれがガンプロ歴代一位の動員だろう。そして今までその動員を上回ったことはないし、後楽園ホール大会も開催されていない。

出場選手も、大家の前に立ちはだかった藤田ミノルが和解のあとマスクマンとして参戦し、現在参戦していない。その次にライバルとなったKENSOも、KAZMA SAKAMOTOも今は居ない。今は勝村周一朗、ブラック・リベラ、岡田剛史という格闘家トリオと大家ファミリーとの抗争を繰り広げている。

大家の決め台詞は「プロレスをメジャースポーツに」だが、団体規模はなかなか大きくならず、レギュラー選手も入れ替わっていき大会規模は大きくならない。未だに王子、板橋、成城などの100人規模の会場で大会を開き続けている。

大家は決まって観客を煽り、アジテーションを行う。プロレスをメジャースポーツに。ただ時々ゾッとするのは、このままの規模のまま、「メジャーになる」という合言葉だけは変わらないまま月日は経ち、大家たちも、観客達も歳をとっていくことになってしまうんじゃないか。大家はガンプロをどうしたいのか?大きくしたくはないのか?出来ないのか?いろいろと考えてしまう。そして第一試合のゴングが鳴る。

 

第1試合 ヤングガンバレの挑戦! 30分一本勝負

◯松永智充(14分21秒 逆片エビ固め)✕鷲田周平

鷲田周平を松永智充が蹴り、投げ飛ばし、踏みつけ、場外に投げ捨てる。第一試合の試合タイムは14分21秒。試合タイムの大体の時間は鷲田がうずくまっている、起き上がろうとしている、苦しんでいる時間だった。ただただ松永が鷲田を痛めつける。まだプロレスラーになりきれていない鷲田に、「これがプロレスだ」と叩きつけるような。「かわいがり」を思わせるプロレスだった。第一試合に6人タッグやバトルロイヤルを持ってきて観客を掴みに行くDDTとは一線を画した「第一試合らしい第一試合」、なんというか、いいものを見た、という気持ちにさせられた。何も出来なかったが、「鷲田頑張れ!」と思わせてくれる第一試合だった。

 

第2試合 スペシャルピンチヒッターマッチ 30分一本勝負

◯沙紀(9分21秒 カワイルドバスター→片エビ固め)✕清水ひかり

第二試合のアクトレスガールズ同士のシングルマッチは完全に沙紀による清水ひかり(とセコンド)に対する教育マッチ。リング上での沙紀は頼もしく、東京女子プロレスで活躍する瑞希とともにしっかりと自分の居場所を確保しているのを感じさせられた。安定感のある試合の末、変形のブレーンバスターで勝利。沙紀をもっと見たくなった。あと予想外に新コスチュームがモンハンぽかった。あれ頑張ればエディットで作れるんじゃないだろうか。 

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 第3試合 神秘の瞬間! インドとパンダが手を組んだ!スペシャルタッグマッチ! 30分一本勝負

◯安部行洋&力
(9分23秒 カミゴェ→片エビ固め)
バリヤンアッキ&✕4代目3代目J-Soulパンディータ

第三試合は安部&力VSバリアンアッキ&4代目3代目J-SOULパンディータ。はっきり言ってパンディータのボロボロっぷりが気になった。体の各所にテーピングが施され、今にもどこか破れそうだったがそのことを気にしない暴れっぷり。今回は最前列で見ていたので、乱闘から逃げ回るのが楽しかった。そして力の充実っぷり。独特のぎこちなさ、ギクシャクした動き、雄叫び、気合い、ついつい引き込まれてしまう。

安部に関しては今のその位置でいいのか?と思ってしまうがまあそれは本人の問題だろう。アニメファンを振り切ってコスプレ・レスラーとして売り出す(自演乙みたいに)気もなさそうだ。余計なお世話ですな。

着ぐるみ、オタク、インド人、そして力道山の孫、とバラエティに飛んだ試合。個人的にはこういうのこそインディー、という気もする。あやしげな、安っぽい見世物小屋のような光を放っているこんな試合を見ているとき、不思議な優越感を感じるのだ。

 

第4試合 ガンバレ、伊橋! 続・見せろ! 伊橋の“U” 30分一本勝負

◯鶴巻伸洋(9分34秒 クロス・ヒールホールド)✕伊橋剛太

”あの”長州主催興行でキレられる事件からシリアスタッチの「伊橋の試練」的な試合が続いている。次のDDT後楽園では金本浩二と闘う伊橋。急に重い荷物を背負わされては居ないか、この路線を乗り越えた先に何かがあるのか、それは誰にもわからない。DDTからも、レスラーとして、というよりエビスコ酒場の料理人としての期待をされているんじゃないかと(あと困った時の無茶振り要員)飯伏の負の遺産・・・。

今回も鶴巻に叩き潰されて終った伊橋。しかし、自分らしさを出す場面はあったように思う。体型はある程度絞ったところでキープしているようだし、ここからマサ斎藤のような、石井智宏のような体型を目指していくのか。「飛べるデブ」から「飛べる強いデブ」になるのか。

試合後鶴巻がマイクを持って言った言葉にはぐっときた。以下、DDT公式サイトより。

ひと言いいですかね・・・。伊橋!悔しいか!? 去年、オマエもっと悔しいことあったよな。

俺もな、どインディー団体でデビューして20年ほど、プロレスマスコミに散々言われて来たよ。けど、今でもこうやって何とか続けてきてるんだ! この悔しさを忘れないで、絶対に辞めるなよ! 続けろよ! そして頑張れよ!

鶴巻は19歳のときに格闘技デビューし、同じ時期に伝説の団体W☆INGでプロレスデビュー。紆余曲折の格闘技&プロレス人生を送ってきた鶴巻の重い重いエール。長州に叱咤されてから、伊橋は色んな人の思いを次々と背負っている。いつかこれに応えるのか。どうなったら応えたことになるのか。プロレスは難しい。

 

セミファイナル ガクセイプロレスラーリターンズ 30分一本勝負

◯MEN’Sテイオー&怨霊
(17分36秒 東海スペシャル→エビ固め)
翔太&✕冨永真一郎 

この日、新日本プロレスがニュージャパンカップ決勝戦を行っていた。ザック・セイバーJrが棚橋弘至を関節技で翻弄して優勝。新日本プロレスの「道場神話」を打ち砕いてみせた。棚橋弘至は学生プロレス出身、そしてこの試合は冨永の呼びかけで行われた学生プロレス出身選手同士のタッグマッチだ。

前の大会で行った冨永とのシングルマッチ同様、テイオーは様々な関節技、寝技で冨永と翔太を翻弄してみせた。冨永のタックルを切って逆にがぶって見せる。手四つから腕を捻って倒し、両手を抑えての押さえ込み。そこから手を離さずに冨永の腕をクロスさせて締め上げる。そのまま倒れて変形バックブリーカー、鮮やか過ぎる技術を見せつけられる。観客も静かに、しかし緊張感を持って見守るレスリングの攻防。こういうときに私はプロレスを見る喜びを感じてしまう。ザック・セイバーJrの試合を見るときと同じ感情を、この試合で揺さぶられてしまった。大技で盛り上がるのもいいが、シン・・とした空気の中選手の細かい攻防をじっと見つめるのもいいものだ。翔太と怨霊も腕の取り合いからスタートし、飛行機投げから腕を取る、という基本的なプロレスの攻防を流れるように進めていく。

この時間を過ごせただけで、冗談でなく「ああ、今日ガンプロ来て良かった」と思っていた。怨霊も、テイオーも、学生プロレスからプロに入り、メジャーの海を泳いできて今こうして板橋の片隅で試合をしている。それを100人足らずの観客がじっと見つめている。尊いなぁ・・・と思ってしまうのだ。

試合はテイオーが貫禄勝ちをした。でもこういう試合に踏み込んでいく冨永も翔太も良かったし、怨霊もしっかりと脇役として役割を果たしていた。この組み合わせで何度でも見たくなる試合だった。本当は冨永や安部や翔太がトップに登っていかないとガンプロはいけないんだろうけど、こういう試合も見たい。ついつい欲張りな気持にさせる試合だった。

   

メインイベント ガンプロファミリーvs勝村軍(仮)イリミネーション6人タッグマッチ 時間無制限勝負

大家健&今成夢人&織部克己
(3-2)
勝村周一朗&岡田剛史&ブラック・リベラ

 

第一退場者:ブラック・リベラ

◯織部克己
(10分23秒 オーバー・ザ・トップロープ)
✕ブラック・リベラ
第二退場者:織部克己 
✕織部克己
(12分23秒 ニンジャチョーク)
◯勝村周一朗
第三・第四退場者:大家健&勝村周一朗
▲大家健
(17分38秒 両者オーバー・ザ・トップロープ)
▲勝村周一朗
最終退場者:岡田剛史
◯今成夢人
(19分38秒 片エビ固め)
✕岡田剛史

 そしてメインイベント。勝村はブラックリベラ、岡田剛史を引き連れて大家・今成・織部組と対戦。この試合はオーバー・ザ・トップロープルール、負けたら退場、どちらかの選手が全員退場した時点で負け、というイリミネーション形式で行われた。今まで勝村軍に翻弄されまくっていた大家軍。この変則的なルール、6人タッグマッチ、という形式でどうなるか。そして勝つとしたら大家がリベラにスピアーとかで勝つのかな、と思いつつなんとなく見始めた。

そもそもこの抗争のゴールがよくわからない。勝村は大家を叩き直す、強さを見せる、と言っているわけで、自分がエースになる、とか大家を追い出す、というような野望を表明しているわけではない。藤田ミノルのように、人生を曝け出し、大家への嫉妬を吐き出して潰しにかかっているわけではない。どこかガンプロのためを思っての行動なのだ。だから正直この抗争がどう流れていくのか、についてはあまり関心がわかなかったし、メインのこのカードもまあ、なるようになるだろうな、と思っていた。あとプロレスの強さと格闘技の強さはまた別物だと思う。

まさかの今成爆発

織部、リベラが脱落した後、ロープ際でもみ合う大家と勝村を二人まとめて場外に突き飛ばして失格に追い込み、岡田との1VS1になってからは散々サブミッションに苦しみながらも叫び、うめきながら脱出。叫びながらヘッドバット、気勢を上げながらブレーンバスター。とにかくずっと叫んでいた。そしてリベラのスーツケース攻撃が岡田に誤爆する、という展開にも助けられ、ハイキック二連発から最後にランニングニーアタックで3カウント!今成夢人勝利!観客爆発!

正直ガンプロをナメていて申し訳なかったと思う。どうせ最後は大家が勝って泣きのマイクを・・・みたいな予想をちょっとしていたのを見事に裏切ってくれた今成勝利。ハッピーエンド。全身で喜びを表す今成。しかし、大家がマイクで「よく頑張ったと思うよ、今成!」と呼びかけると空気は一変。今成がこう言い放った。

おい大家! ここは俺がマイクを持つタイミングだ。オマエが持つタイミングじゃねぇよな!オマエェェェ!!!

今、俺にエールを送っていいところ取りしようとしたな。そぉいうわけにはいかないんですよねぇ! 

なぜなら、ビコーズ、なぜなら! 最後に勝ったのは僕だからですよぉぉぉ!サイッコウにぃぃ気持ちいいぃぃぃ!

 心の叫び。今まで半分裏方として、大家の二番手に甘んじていた今成。ここで、今まで溜めていた何かを一気に吐き出すように、狂人の目をしながら、笑いながら叫ぶ。どこかトんでる表情だった。なにかから開放されると人はこういう表情になるんだ・・・。反論する大家に「帰れ!」と言い放ち、再び熱く語る今成。

今ここにリングに立っている主人公は僕ですよ! もう二番手の人生は過ごさない! 映像班だからとかそういうのじゃない! 映像班でもトップを狙う! 大家さんはカリスマ、でも今は誰でもカリスマになれる時代です! 俺も大家さんに追いつけるようなカリスマになります!

そして、初めての今成の締め。

スリー、ツー、ワン! 自分が主人公!

そして恒例のバッコミタイム。BAD COMMUNICATIONで踊り狂う今成とガンプロレスラーズ。最前列にいた私もついついリングをバンバン叩いてしまった。楽しい!今成に引き上げられたテンションのせいでつい熱中してしまった。そして今成というレスラーの狂気にアテられたか・・・。

そしてその後の集会でも存分に狂気を発揮した今成。エプロンに座り、織部に熱く語り、大家を「奥さんのおかげで大きい絵に住んでる」と批判し、「大家さんがしょっぱい試合したら、その家に火炎瓶投げてやりますよ!」と叫ぶ。犯罪!そして翔太を呼び寄せるといきなり号泣。そして「みんな、何かをやろーう!」と超ボンヤリした締め。今成の、今成のための、今成が叫び続けた興行だった。

 

興行が終わり、電車を乗り継ぎ新宿に行ってDDT経営のエビスコ酒場で呑んでいた。壁に張り出されたDDT両国のカードを見ながらああだこうだ言って帰宅。風呂入って一息ついてからしみじみと、今日の今成が羨ましいな、輝いているというか、パワーが溢れ出ているというか、愛しさに溢れてるなと心から感じてしまった。ガンプロ見に行ってほんとに良かったな~、と思った。新日でも、DDTでも、全日でもなくガンプロ。そんな3月21日でした。おわり。

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