男マンの日記

マンガ、落語、お笑い、プロレス、格闘技を愛するCG屋の日記。

6・8 ハードヒット「JUST DO IT」青木篤志へ、選手、観客、それぞれの思い、それぞれの闘い

 新木場1stRingは超満員。当日券で西側奥の席に座ると、観客席にもぽつぽつと青木篤志のグッズを身に着けた観客が見えました。この日のハードヒットが、青木の報道があってから最初の「青木篤志が出るはずだった大会」だったこともあり、口には出さなくても誰もが青木篤志を意識している空気が伝わってくるようでした。

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ダークマッチが一試合あり、その後にリングへ佐藤光留が登場。ここで観客はやっぱり何か青木篤志の事を話すのかな、と思いつつ聞いてたと思いますが、その中でまずは大会名「JUST DO IT」について説明。そもそも般若の「黙ってやれ」を佐藤光留が好きで、でも「黙ってやれ」って大会名はないな~、と思っていたところに通りかかったヨシタツが「”黙ってやれ”って英語でJUST DO ITっていうんですよ」と助言。そして大会名が決まり、その大会名に沿って待望されている関根”シュレック”秀樹との対戦を決定。そして大会直前の6月4日、青木篤志の事故死が報道されたのです。

 

「プライベートでは一度も会ったことがない、それが自分も青木さんもかっこいいと思ってた」という独特の言い回しから、亡くなった青木のところに向かったことを話す佐藤光留、青木の顔を見たら「いいからやれ」という顔をしていた、といいます。

生まれるのも自然なら死ぬのも自然なことなんだなって。我々は毎回死ぬことも覚悟してリングに立っている。永遠に出来ないからこそ、価値があるものもある。選手全員にハッパをかけて、1分1秒でも早い勝利に向かって全力疾走する、そんな試合をしてくれと焚き付けております。これがプロレスのすべてではないですが、大事な大事なボクたちが信じたプロレスの根幹の一部だと思います。

そして変態自衛隊のTシャツを試合後の売店で販売すること、ただ残ってるサイズがXLとXSしかないと。そして足が折れても売店に立つ、売上は隊長も熱心に支援してたTAKAYAMANIAに寄付する、と宣伝した後に、「今日も一生懸命頑張ります、よろしくお願いします」と挨拶。いよいよ本戦開始となりました。 

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 第1試合 シングルマッチ10分1本勝負

◯ 鈴木秀樹(フリー)
(0分20秒 キーロック)
✕ 井土徹也(HEAT-UP)

入場早々気合を入れる井土、いつもとおりの静かな表情を見せる鈴木。握手して試合開始早々、キックと掌底でガンガン攻め込んでいく井土。しかしこれを捌いた鈴木、井土の腕を取って投げ、そのままグラウンドでのキーロック、井土タップ!試合終了!なんと試合時間20秒!鈴木秀樹の秒殺勝利となりました。いきなりの衝撃!

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マットを叩き、悶絶して悔しがる井土ですが、鈴木秀樹に向かっていくことはせず。そのままリングを降りていきました。そしてそれをロープにもたれながら見届けた鈴木も四方の客に挨拶してから去りました。ハードヒットでの鈴木秀樹は他団体でのスタイルと変わらないように見え、これが鈴木がハードヒットのリングで存在感を放つ理由になっているように感じました。UWFをやろうとしない、というか。いつものように闘い、いつものように去っていく。いきなりカッコよさを見せつけられる試合でした。

第2試合 タッグマッチ15分1本勝負

◯ 前口太尊(TEAMタイソン)&唐澤志陽(M16 TOKYO)
(8分05秒 TKO)
✕服部健太(花鳥風月)&鶴巻伸洋(フリー)

 第二試合は服部、鶴巻のプロレスラータッグに前口太尊、唐澤志陽のキックボクサータッグが立ち向かう、という構図。そして試合は予想通りに関節技で攻める服部&鶴巻、スタンドの打撃で攻める前口、唐澤、という展開になっていきます。

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初見でしたが、目を見張る動きを見せていたのが服部健太。下から絡みつくように足関節を取りに行く動きには、ヴォルク・ハン的な、所英男的な機敏さが有りました。たてつづけに関節技でエスケープを奪っていくレスラー組でしたが、キックボクサー二人も徐々に打撃で盛り返していき、鶴巻が二人から打撃を受けまくり仁王立ちで受けの強さを見せる場面もありましたが、最後は服部が捕まり、前口太尊のラッシュを受け、コーナーに詰められての飛び膝でKO負け。キックボクサータッグの勝利となりました。

互いの得意分野をぶつけ合うような試合でしたが、やっぱり前口太尊強かった。現役でKNOCKOUT出てるのは伊達じゃないというか、ラッシュの迫力が凄すぎました。

 

そして試合とは関係ありませんが、6月21日現在、鶴巻伸洋選手がバイク事故により入院中とのこと。早期回復をお祈りしております。

  

第3試合 シングルマッチ10分1本勝負

△ 松本崇寿(リバーサルジム立川ALPHA)
(10分00秒 時間切れ引き分け(残りポイント5-5))
△ 岡田剛史(T.K.ESPERANZA)

今までの試合と打って変わってふたりとも柔術着で登場したこの試合。さながら柔術の回転体のような試合となりました。ガンプロ参戦時とはうってかわってじっくりと攻めていく岡田、下からの攻めが得意からか、どんどん引き込んで下から極めに行く松本。10分間ほぼほぼノンストップで繰り広げられる寝技の攻防。 

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ロールしながら足を取り、腕をたぐって三角絞めにいく松本、オモプラッタで返して腕ひしぎを狙う岡田、それを返して袈裟を取っていく松本・・・というような展開がめまぐるしくず~っと続く。観客も静まり返ってリング上を見つめている。「静かに熱狂する」という表現がぴったりくるような回転体。リングスでのサンボ勢のように、一つの技に固執せず次々と体勢を変えながら技をかけていく二人。ずっと見ていたい。

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そしてそのまま10分時間切れ。試合後には大きな拍手に包まれた柔術マッチ。最後の方はかなり極めに近くなっていった気もしますが、できればまた再戦してもらって決着をつけて欲しい試合でした。いや~、面白かった~。

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第4試合 シングルマッチ10分1本勝負

◯中台戦(TEAM OVER KILL)
(4分48秒 ヒザ十字固め)
✕阿部諦道(浄土宗西山深草派)

プロレスリングBASARAの阿部史典、ハードヒットでは阿部諦道として出場しています。なぜかは知らないけど。相手の中台戦はDEEP,パンクラスに参戦経験のある格闘家。体中タトゥーのコワモテ。試合もいきなり激しい展開になります。

前の試合とは打って変わっていきなりバチバチの打撃戦。掌底で打ち合い、阿部もローリングソバットがヒット。打ち勝った中台が倒していくも阿部が切りかえしてヒールホールドでエスケープを奪っていきます。

阿部も鈴木秀樹と同じく「いつも通り」のファイト。トリッキーなタイミングでの打撃、裏拳連発、イキイキとケンカする阿部、そしてそれにキツい一発で応えていく中台。UWFというよりバチバチのケンカファイトを貫いた二人、最後はタックルで倒された中台が膝十字固めで返してギブアップ勝ち。ケンカファイトを制しました。

 

そして試合後は互いに張り手を交換して退場。いいケンカを見せてくれました。やっぱり大事なのは気持ち!闘争心!激しくもカラっとした闘いでした。

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第5試合 グラップリングタッグマッチ15分1本勝負

◯KEI山宮(GRABAKA)&ロッキー川村(パンクラスイズム横浜)
(7分38秒 腕ひしぎ十字固め)
✕田村男児(全日本プロレス)&TAJIRI(フリー)

 そして迎えたグラップリング・タッグマッチ。予定では青木篤志が出場するはずだったこの試合。代役として全日本プロレスの後輩、田村男児が出場。田村は去年の4月デビューの20歳。アマレスでインターハイ出場経験があることもあり、適性があると見られたのか。そしてなんといってもTAJIRIがこのハードヒットでどんな闘いを見せるのか注目されました。

 

TAJIRIはいつも通りの佇まいで入場。入場前にトップロープに登って水を吹き、場を支配しにかかります。ハードヒットの中で異端なTAJIRI,その異端さをいかんなく示し、存在感を際立たせていくのはさすがベテラン。いっぺんに観客の視線がTAJIRIに集まります。

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TAJIRIそっくりなパンタロンで登場の山宮、いきなりTAJIRIを挑発していきますが、TAJIRIはスカして田村にタッチ。結局TAJIRIと川村のマッチアップで試合開始。するといきなり下からの毒霧攻撃!TAJIRIワールドに川村は抗議するもレフェリーが見ておらず。翻弄するだけ翻弄して田村にタッチするTAJIRI。試合は田村が奮闘し、川村に果敢に攻め込んでいきますが、山宮を倒したところで回転して切り替えされて腕十字で一本負け。

山宮もTAJIRI風のコスチュームの下に川村のコスチュームを着てくるなど仕掛けを用意していましたが、やはりプロレスラーとしての立ち回りはTAJIRIが一枚も二枚も上。試合は負けましたが、しっかりと「TAJIRIの試合」という刻印を刻んで去っていきました。

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試合後、山宮が川村に対戦要求し、川村がそれに応える、という一幕が。青木の代役だった田村も若手らしさを出していきましたが、さすがに山宮、川村がこの試合形式での差を見せた一戦となりました。

そしてここで休憩。ダークマッチとしてポージング合戦などが行われていましたが、私はとりあえずトイレ休憩に。そしてMOBSTYLEのTシャツを購入。XL一枚しかないところをなんとか購入できた!危ないとこだった・・・。

 

第6試合 空手エキシビジョンマッチ10分

SUSHI(フリー)
(4分20秒 エキシビジョンのため勝敗なし)
菊野克紀(沖縄拳法空手沖拳会)

 休憩明けの試合は空手エキシビジョン。登場したのはなんと菊野克紀!元UFCファイターがハードヒットに!豪華!

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絵になる男!

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久々にみたおすしさん!

試合は、というかエキシビジョンですが、SUSHIが一方的に菊野にボコられる展開に。とにかく打撃一発一発が明らかに重そう。ドス、バチン!とエグい音を立ててSUSHIの身体に食い込んでいきます。明らかに有効打をもらいまくったSUSHIですが、根性で立ち上がる、プロレスラーとしての意地で立ち続け、突きを出し、なんとか蹴りを出す。二度のダウンを喫するもなんとか立ち上がったSUSHIに観客も大歓声を送りますが、菊野の回し蹴りを食らって3度めのダウンを喫したところでレフェリーストップ。

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セミファイナル シングルマッチ10分1本勝負

◯和田拓也(フリー)
2分37秒 裸絞め
✕飯塚優(HEAT-UP)

セミファイナルはワダタクこと和田拓也vsHEAT-UP期待の若手、飯塚優とのシングルマッチ。 レスリング、サンボの技術を持ち、修斗、パンクラスのみならず海外でも活躍。一時期キング・オブ・パンクラシストにも輝いた和田拓也。そしてなんといっても青木篤志とは幼馴染で親しい間柄。この試合にかける気合はハンパではないはず。そしてハンパじゃなかった。

ローキックの打ち合い、テイクダウンの取り合いになりますが、冷静に試合をコントロールした和田、スタンドで優位に立ってからバックドロップ気味の投げを決め、すかさずスリーパーで一本勝ち。地力の差を見せつけました。

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試合後、青木と幼馴染の和田がマイクを取って挨拶。4年前に青木との試合でハードヒット初出場をした和田拓也。昔から青木はかっこよかった、女の子にもモテたし、レスリングでも勝てなかった・・・。と思い出を語っていきました。

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最近も二人で北海道にジンギスカンを食べに旅行した、そのとき予定になかったけど動物園に言って楽しかった、という仲の良さを話す和田。しかし段々と感極まっていき

青木の魂を引き継ぐとか、そんなことじゃなくて、俺はまだまだプライベートで青木と話したかったし、もっと遊びたかった。今日もこれ終わったら銭湯に行く約束してたし・・・。

と、「あいつの分まで闘う」とか、「あいつに恥じない戦いをする」というようなレスラーとしての言葉ではなく、親友として「プライベートで遊びたかった」という言葉。本当に大事な親友を失った、という和田拓也の慟哭が伝わってくるようでした。

最後はオレは誰よりも青木篤志を最高に愛してる、またいつか遊んでくれ!
明日から、また、生きるぞ!

 

   

 

メインイベント シングルマッチ15分1本勝負

△ 佐藤光留(パンクラスMISSION)
(15分00秒 時間切れ引き分け)
△ 関根シュレック秀樹(ボンサイ柔術)

 そしていよいよメインイベント。佐藤光留が相手として選んだのは関根”シュレック”秀樹。わかりやすく屈強な体格を持つ格闘家。警察官でありながら、40代になってから辞めて格闘家に。格闘家としてONE CHAMPIONSHIP、巌流島、QUINTETに参戦しています。そして入場したらやっぱりデカい。一方の佐藤光留は顔を隠し、たたずまいで覚悟を感じる入場。いやがおうにも盛り上がります。

 

ゴングが鳴ると、打撃、ローキックを中心に攻めていく光留、キックを返しつつテイクダウンを狙っていくシュレック、という展開に。ロー連打を受けたシュレックですが、イマナリ・ロールのような形で足をとってテイクダウン。スリーパー狙いから腕十字。互いの得意分野をぶつけあうような展開で互角の攻防が繰り広げられます

最初にポイントを取ったのはシュレック。重いローキックをヒットさせ、そのまま足をとってヒザ十字に。これで光留エスケープ。

光留が反撃に出て、キックから首をとってスリーパーに持っていくもUインター定番のレッグロックで再び光留エスケープ。これで2ポイント差に。しかし光留もすかさず打撃で反撃。キック、掌底のラッシュでダウンを奪い1ポイント差。どんどんロストポイントが積み上がっていく熱戦に。

関根はカニバサミからのヒザ十字というテクニックを見せ、光留もアキレス腱固めで反撃。しかし両者が熱くなり、観客の熱も上がっていく中バチバチのスタンドの攻防になっていき、気合のぶつかり合いになっていきます。

バチバチの攻防から関根がタックルからの水車落とし、光留はコーナーに追い詰めてラッシュからのハイキック!関根も首をとって後転してのネックロックで互いにポイントを奪い合い、ついに残り一分になると蹴りとビンタの応酬。互いに雄叫びを上げながらの殴り合い、蹴り合いが続き、関根が仁王立ちになったところでゴング。時間切れ引き分けに終わりました。

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会場がなにか異様な興奮に包まれる中、互いに健闘を称え合い、帰ろうとするシュレックを光留が呼び戻します。そして光留が、俺はただ格闘技の選手を呼んで興行してるわけじゃない、凄くてかっこよくて強いメンバーでやってる。関根さんもそのうちの一人。その関根さんがプロレスをどう思ってるか聞かせてくれ、とシュレックにマイクを渡すと、シュレックは感極まっているように、慟哭しながら語り始めます。

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関根は途切れ途切れながら、プロレスを諦めて警察官になり、警官を辞めて格闘技をやり、プロレスをやっている自分にも優しく声をかけてくれた青木篤志、高山善廣への感謝を述べ、「こんな45歳のジジイでも、プロレスは僕の夢です、ありがとう」とマイク。観客の中にも感動と涙が溢れていきました。

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そしてそれをうけて佐藤光留も「俺のプロレスの半分だった青木篤志は、本当に死ぬまでプロレスラーだった。俺たちは死ぬまでプロレスやればいい。途中で辞めたりする人もいるけど関係ない。生きて、生きて、生き続けて。立てなくなるその日まで、一生プロレスラーでいましょう!ありがとうございました!」と締め。すぐに売店に立っていました。逞しい!

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こうして幕を閉じたハードヒット新木場大会。全選手が「JUST DO IT」の掛け声のもとで集まり、それぞれのファイトを見せつける、そして客もそれを全力で受け止める。

その中で普段着のスタイルを持っていたレスラー。鈴木秀樹、阿部史典、TAJIRIが光り、青木篤志への想いを和田拓也、佐藤光留が吐露したことで青木篤志という存在の大きさが改めて浮かび上がった。

観客だけでなく、不在の青木篤志にも見せた。そんな印象の大会でした。選手たちの、佐藤光留の生き様ガッツリ受け止めました。 明日、また、生きるぞ!!

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最強レスラー数珠つなぎ

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