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ラウェイ・ドキュメンタリー「迷子になった拳」観戦記。浮き沈み激しい人たちが彷徨う群像劇

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”世界一過激な格闘技”ミャンマー国技「ラウェイ」

4月22日、アップリンク吉祥寺にミャンマーの国技「ラウェイ」を描いた映画「迷子になった拳」を見てきました。今田哲史監督のドキュメンタリー映画です。予告編動画はこちら。

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「ラウェイ」は、わかりやすく言うと「素手で殴り合うキックボクシング」。

世界一過激な格闘技とされ、頭突き、頚椎への攻撃、投げも許される。神事でもあり競技でもある。神に捧げる踊りを踊り、殴り合う。ダウンカウントも長く、とにかく起きて闘えるうちはひたすら闘う、という過酷さ。とにかく人間が極限まで削られる格闘技のため、選手たち、関わる人達のむき出しの感情が顕になる競技です。

日本でも元ZERO-1の中村祥之氏がプロモートして日本大会が行われ、後楽園大会が何度か行われています。プロレスラーの奥田啓介、高橋奈七永らも参戦したこともあり、私も何度か映像では見たことがありますが頭突きや素手の殴打で顔が腫れたり切れたりすることも多く、出血も頻繁に起きるためエグい場面が続出するのでそういうのが苦手な人は避けたほうが無難かもしれません。

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ラウェイを巡る、全力で蠢くクセの凄い人間模様

映画自体はラウェイの歴史、成り立ちを追いかける形で始まります。なにしろ撮影開始が2016年。が、メインで追いかける選手は日本人二人。金子大輝選手と渡慶次幸平選手。金子選手は学生時代にやっていた体操を怪我で断念し、総合格闘技などをやりながらラウェイを知ったことでミャンマーのジムで練習することになった本当に筋金入りというか、日本で頻繁に行われるようになる前からラウェイに参戦している選手。そして渡慶次選手は中村祥之氏プロモートでラウェイがおこなわれるようになってからラウェイに参戦、勝ったり負けたりしつつも徐々に頭角を現していった選手です。

映画の前半は金子選手を置い続ける形で進んでいきます。日本でラウェイが行われることはほぼなく、ミャンマーに渡って試合をする日々。最初はなかなか勝てずに苦労し、少しづつ勝てるようになってきたところでトラブルに巻き込まれる。なかなか人生も上手く行かず、ミャンマーに住み始めて彼女が出来ても上手く行かない。金子選手自身もネガティブなところがあり、見ていてイライラする場面もたくさん。だからこそ人間臭さもあり、愛せる部分もあるんですが、とにかく上手く行かない人生に感情移入してしまいます。 

そもそもミャンマーとのラウェイ対抗戦の団長だった小林聡も「おちこぼれたキックボクサーがやる競技」と言っていたくらいで、知名度もなくただただ過酷な競技だったラウェイ。それをミャンマーに行ってやっていた時点でかなり変人だとは思うんですが、その負けても立ち上がっていく姿にぐっとくる。人間的に好きにはなれないけれど圧倒されるものがありました。

 

そしてもうひとりの主役、渡慶次選手。渡慶次選手は妻子があり、中村氏のプロモートでラウェイ日本大会が行われる時に参戦、ハッキリと「お金が良いから」という理由で参戦し、参戦当初は減量失敗や負けがこんだりと上手く行かない日々が続きますが、徐々に順応していった結果人気も得てラウェイへの愛情も生まれ、ミャンマーに学校を作って支援するまでに。調子乗りではあっても人の良さもあり、試合の面白さでも人気を得ていくサクセスストーリー。もちろん子育てをしながら練習して闘うという苦労もあり、連敗する時期もあり、なにしろ一年に6回骨折するという苦境もありますが、それを明るく乗り越えていく姿はスカっとするし、応援したい気持ちになっていきます。

 

このように対象的な金子選手、渡慶次選手を追っていく過程で二人の家族、日本にミャンマー・ラウェイを紹介した高森拓也夫妻、ミャンマーに溶け込み、ラウェイに魅せられて紹介していく中村祥之氏、金子選手の「日本の師匠」のラーメン屋さん(強烈!)と、ラウェイに引き寄せられた濃厚な人たちが織りなす人間模様というか、もがき苦しむ人間たちへの讃歌というか。とにかく濃厚で濃密なものを見たい人にはオススメの映画になっています。諸々の事を考えつつエンディングの「ファイト」を聴くとなんというか、頑張って生きようという気持ちになりました。いや、濃厚な時間でした。

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そしてその日はスターダムの白川未奈選手とライターの尾崎ムギ子さんの対談付き。映画を見たあとの二人の話は金子選手のお母さんの話に終始。金子さんに「やりたいことをやるなら自分の金でやれ!」と終始正論で詰めていくお母さん。私も見ていて自分のことを言われているようでいたたまれない気持ちになりました。その後「稼げないなら仕事ではない」と親に言われた話などとにかく金子選手の話に終始。ダウナー&ネガティブながらも何かしら語らざるを得ない何かが金子選手にはあるのだと思います。

   

改めて見つめ直した、私が見てきた格闘技

この映画を見て思ったことがありました。私自身、プロレスから始まってPRIDE、HERO'S、DREAM、RIZIN。そして修斗、PANCRASE、DEEPと総合格闘技を見てきたし、K-1のような立ち技格闘技も見てきました。しかしそれは競技化された格闘技であり、ラウェイを見るともっと根源的な、闘う闘志、立ち上がってくる生存本能、痛みに耐える根性というような生身の感情がある。アスリートとしてはメジャーな格闘技のほうが上かもしれませんが、より心に訴えるものがあると感じました。なにか、自分が「格闘技」というものの一部しか見ていなかった、というのを痛感する。そんな映画だったように思います。

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そんな「迷子になった拳」の公式サイトはこちら。劇場情報も載ってますが、今回の非常事態宣言で公開日が変わっていたりもするので各自確認の上見にいってください。どよーんとしたり疲れたりすると思いますが、どこか力をもらえる作品なのは確か。是非一度見てみることをおすすめします。特に格闘技ファンであればなにか感じるところがあると思います。今回は以上です、おあとがよろしいようで!