男マンの日記

マンガ、落語、お笑い、プロレス、格闘技を愛するCG屋の日記。

8・1 プロレスリング・ノア広島大会。黄昏の桜庭和志が辿り着いた方舟。

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GHCヘビー級タイトルマッチ。丸藤正道VS桜庭和志

8月1日に行われたプロレスリング・ノアの広島大会をAbemaTVで観戦しました。

この日のメインイベントはGHCヘビー級選手権試合、丸藤正道VS桜庭和志。前回の杉浦戦後で防衛を果たした丸藤に挑戦表明した桜庭。ノア参戦からGHCナショナルへの挑戦は数度、そして杉浦貴とGHCタッグ王座を保持するなど、少しずつタイトルへの階段を登っていきそして今回満を持してのGHCヘビー挑戦。

前哨戦のタッグマッチでは寝技で丸藤を圧倒し、キックを叩き込む場面も見せるなど期待感を持ったまま当日を迎えました。

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そして迎えた8・1広島大会メインイベント。煽りVからのらりくらり。読書には興味ないけど格闘技には興味がある、なかなか感情を表に出さない。終始半笑いの桜庭に対してリスペクトを表明しつつプロレスで上回ろうとする丸藤正道。

「グレイシーハンター」、「IQレスラー」と呼ばれ、格闘技で瞬時のひらめきを武器に勝ち進んできた桜庭、デビュー当時から天才として期待されながらそれに応えてきた丸藤。天才同士ではありますがそのキャリアは真逆。格闘技とプロレスを渡り歩いてきた桜庭と全日本からノアと一筋に歩いてきた丸藤。正反対の歴史を歩んできた二人のタイトルマッチが幕を開けました。

   

一歩踏み出した桜庭、チャンピオンとしてのプロレスを魅せた丸藤。

入場した二人ですが、桜庭はいつも通りのラッシュガード姿。桜庭から丸藤に握手を求め、それに丸藤が応じたところで試合開始。静かな緊張感が漂う中、手四つからプロレス的な腕の取り合いへ。桜庭もしっかりと応じていき、丸藤も返す。オーソドックスな序盤かと思いながら見ていると、いきなり足を取り膝十字の体勢に入る桜庭、慌ててロープに逃げる丸藤。がっちり入る前に慌ててエスケープする丸藤が警戒しているのが分かります。

その後も倒れたところから絡みついての足関節、ローリングして組み付いてから関節を取りに行くなどノアの選手がやらない動きから関節技を狙っていく桜庭。定番の流れになかなかいけない苛立ちを抱えながら闘う丸藤。試合のペースを桜庭が握ったままタイトルマッチは進んでいきました。

その後もアームロックで悲鳴を上げ、極められた腕へのPKで悶絶。ままならぬ試合運びの丸藤でしたが、桜庭の両耳を掴むラフファイトから徐々に反撃へ。コーナーに押し付けてランニングエルボーとペースを掴み懸けますが、トラースキックとキックの打ち合いから桜庭のハイキックが側頭部にヒットしてダウン!なんとか立ち上がったところにネックロックで締め上げられますがなんとか外していきなりの虎王でさすがに桜庭もダウン。両者立ち上がってからこの試合のハイライトが訪れます。

 

桜庭のモンゴリアンチョップ、丸藤の水平チョップの打ち合いとなり、乱打戦になっていく中で桜庭が一旦タイム。丸藤も応じ、なにかしら奇襲に転じるかと思いきやラッシュガードを脱ぎだす桜庭。上半身裸でのチョップの応酬に応じていきました。

チョップの応酬に応じる中でみるみる胸が赤くなっていく桜庭、そこで桜庭らしさ爆発!胸にくっきり赤い跡がついた桜庭は自分がチョップを打った後背中を向けて、「こっちに打て」のアピール。不思議な表情を浮かべながらも丸藤が応じ、丸藤の背中へのチョップと桜庭のモンゴリアンチョップの応酬、という珍しい絵面に。

しかし、なぜ丸藤が背中へのチョップに応じたかというとそこには作戦が。何度かの応酬の末に背中を向けた桜庭に向かってチョップではなく、背後から桜庭の顔面を捉えるフックキックが炸裂。すかさず不知火を狙っていく丸藤ですが、ここは桜庭。背後にまわったところでスリーパーに捉えて形勢逆転!

胴締めスリーパーに捕らえて締め上げていき、あわやギブアップの状態に。桜庭チャンピオンの姿が見えるところまでいきましたがそこは丸藤。桜庭の胴締めをほどき、前転してスリーパーを逃れてからパーフェクト・キーロックへ!回転しながらキーロックを深く極めていく丸藤。

しかし桜庭、さらに丸藤がキーロックしながら回転しようとしたところで腕を外して下からの三角締めをスパっと極める!鮮やか!この格闘技とプロレスを行き来する関節技の応酬はこの二人じゃないと不可能な攻防。丸藤もぐったりしてレフェリーチェックをされながらもなんとか足をロープに伸ばしてエスケープ。しかしまだグロッキーな丸藤、桜庭がハイキック、ローキック、カーフキックを交えたラッシュ。しかし喰らいながら、フラフラになりつつ倒れない丸藤、桜庭が一瞬間をおいたところに虎王で反撃。虎王からスピンキック、虎王とラッシュをかけますが、丸藤がリストクラッチ式虎王を狙ったところをスリーパーに捉える桜庭、コーナーに登って宙吊り式に締め上げるもパンチで外した丸藤、そのまま桜庭を抱え上げてポールシフト式エメラルドフロウジョン!カウント2!しかしここからが丸藤の真骨頂。スピンキック連打から虎王、これがカウント2で終わるとコメカミを掴んでの虎王・零を桜庭に叩き込んでカウント3。丸藤正道が二度目の防衛を果たしました。

abema.tv

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二度のスリーパー、そして三角絞めと、徳井の寝技で丸藤を追い込んだ桜庭ですが、最後は丸藤の一気の畳み掛けに一日の長があった、という結果になりました。個人的には終盤の攻防でキック連打を選んだ桜庭。ここで例えば投げ技連発からの寝技、またはタックルに入ってからの関節技に持って行けていたら、とも思いました。ノア的なプロレススタイルに合わせず、関節技と打撃中心に闘う桜庭。それでもかなり丸藤を追い詰めましたが、ここ一番での投げ技のフィニッシュがない、という課題が見えたタイトルマッチでもあったように思います。 

方舟の継承者

方舟の継承者

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 流浪の格闘家桜庭和志、辿り着いた方舟で魅せた笑顔

とはいえ、試合が終わった後、座り込んだまま丸藤に握手を求め、互いに座礼したあと両手を合わせ、おそらく感謝を示した桜庭和志。それはこの試合がかなり充実感があるものだったからだろうし、見ていて白熱した好勝負でもありました。面白かった!桜庭の良さが生きたし、ノアで取り組んできたことの集大成でもありました。「プロレスラー・桜庭和志」の現時点での姿。一つの完成形が見えたとも言えるんじゃないでしょうか。

そもそも、「グレイシーハンター」、「IQレスラー」として一斉を風靡し、総合格闘技のアイコン的な存在になった桜庭ですが、PRIDE GPでホイス・グレイシーを倒したのは2000年のこと(このときプロレス大賞・敢闘賞を受賞しています)、今から21年前になるのです。

ここで絶頂を迎えた桜庭和志は、徐々に波乱万丈の時期を迎えます。2001年からヴァンダレイ・シウバに3連敗。また、メインイベンターとして試合をし続けないといけない事情もあったにせよ、足首の腱断裂、眼窩底骨折などをおして試合をし、ノゲイラにも敗戦するなど戦績も悪化、2006年には高田道場退団、PRIDE離脱。桜庭の格闘家としてのいわゆる「全盛期」はこの時期までだったと言えるでしょう。

そこからはHERO'S参戦、2006年には「あの」秋山との「ヌルヌル事件」もあり2007年にはホイス・グレイシーと再戦し判定負け。なかなか思うように勝てなくなっていき、2011年のDREAM崩壊によって一旦総合格闘技からは遠ざかります。

そして2012年には新日本プロレスに参戦。いきなり中邑真輔の持つIWGP ICのベルトに挑戦しますが敗北。(しかしこれは名勝負でした)しかしその後はグレイシーとの格闘技戦などで存在感を示しますが、永田との対戦で腕を脱臼するなど順調には行かず、柴田勝頼とのシングルマッチにも敗れ、2015年の1・4で鈴木みのるとのシングルマッチで敗北。同年に新日本プロレスを離れていきます。

その後はRIZINで青木真也と闘って敗北、総合格闘家としてはこの試合が最後になっていますが、プロデューサーとしてQUINTETを立ち上げ、そして2019年からプロレスリング・ノアに参戦しています。

このように、2000年代後半からの桜庭和志は決して順風満帆ではなく、むしろ苦悩しているように見える時期のほうが長かった。総合格闘技の象徴的存在でありながら、新日本プロレスでは上手いこと結果を残せなかった(それでもVS中邑戦、VS柴田戦、VS永田戦は名勝負だったと思います)そんな桜庭和志が今回の8・1丸藤戦の後には笑顔を浮かべていたのには一ファンとしてちょっとぐっと来てしまいました。

いつか一撃必殺のフィニッシャーを身につけた桜庭がGHCヘビーのベルトを巻く日が来るのか。そんなことを想像させてくれるだけでもこの日の試合は感動的でした。今のプロレスリング・ノアの懐の深さ、闘いの多様性に感謝したい気持ちになった、そんな今回のタイトルマッチでした。いい試合、沁みる試合でした!

   

桜庭の半生についてはこの本参照!だいぶ桜庭寄りかな、という印象もありますが、桜庭の波乱の人生、苦悩について読ませる一冊です! 

 あと桜庭といえばやっぱりこの曲。 私は未だにゾクっとします!名曲! 

SPEED TK RE-MIX

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