男マンの日記

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SHOメイン劇勝!7・1 「GLEAT ver.1」で見たGLEATという団体と成長ストーリーと「UWF」

ついにヴェールを脱いだプロレス団体「GLEAT」

7月1日、いよいよ噂の団体GLEATが旗揚げ。CIMA率いるGプロレスリング、田村潔司が指導するLIDET UWFからなる団体「GLEAT」。そのGLEATの正式な旗揚げ戦がついに7月1日に行われました。実際見には行けませんでしたが、YOUTUBEで生配信をやっていたのでそれで見ました。全部見たわけじゃないのでざっくり感想になりますが、セミ、メインはしっかり見たので、LIDET UWF部分を中心に振り返ろうと思います。

 

興行の構成として、前半部分はGプロレスリング、後半部分がLIDET UWF。マッチメーク自体、LIDET UWF部分に他団体選手が参戦し、話題を振りまいていたように思います。センダイガールズの橋本千紘、そして第二次UWFの「生き残り」船木誠勝、そしてなんと言っても新日本プロレスのSHOを引っ張り出したのが大きい。実際自分のTLでもメインについての話題が多く、注目度は明らかにメインが大きかったように思います。

 

安定のGプロレスリング、橋本千紘&船木誠勝と田村潔司の歴史

Gプロレスリングは全部は見れませんでしたが、見る限りは安定のクオリティだったように思います。かなりの肉体美を獲得したエル・リンダマンが前説からの田村ハヤトに勝利したのも進化を見せ付けましたが、第3試合の6人タッグではさすがのストロングハーツの完成度&鬼塚一聖がカズ・ハヤシをフォールするという番狂わせ、そして「Gプロレスリング」のメインというべきT-HAWKvs河上隆一では力強い攻防を繰り広げた上で河上が勝利。T-HAWKが場外へのトペで鉄柵に激突したことから骨折で長期欠場となってしまったのは残念でしたが、それぞれの選手の進化と新しいものを作り出していこうという意気込みを感じることが出来ました。あと井上京子強すぎ。

 

そしてその後始まったLIDET UWF。センダイガールズから参戦の橋本千紘は福田茉耶相手に圧倒、いきなり空手出身の福田の蹴りをキャッチしてアンクルロック、サイドスープレックス、水車落としとただただ圧倒。ブラジリアンキックを食らう場面もありましたが、ローキックをキャッチしてのアンクルロックでギブアップを奪って勝利。必殺技オブライトを出す前に勝利を決めました。

この日は出ませんでしたが、1996年にはゲーリー・オブライトと不穏試合を繰り広げている田村のいる団体に、「オブライト」をフィニッシュに持つ橋本千紘が出場していることには、なんというか歴史を感じるし、感慨深いものがありました。

そしてセミファイナルの飯塚優VS船木誠勝。リングスに憧れ、GLEATのプロフィールページにも「年齢から考えると絶対にリアルタイムではないが、前田日明のリングスをこよなく愛し、特に一番の推しメンはヴォルク・ハンである。」と書かれるくらいのハン好き(プロレスラーに「推しメン」って表現もちょっと違う気もするけど)が船木に挑むチャレンジマッチ。

試合内容は本当に終止船木が圧倒。いきなりアームロックでエスケープを取り、フィジカルで圧倒しながら組み伏せていく船木。飯塚もなんとか飛びつき腕十字で一矢報いますが、打撃のラッシュからのチキンウイングフェースロックで船木圧勝。なんというか、UWFルールでの船木が強すぎて頭クラクラする試合でした。

そして船木と田村は2008年4月、「DREAM.2」で対戦しています。

gonkaku.jp

試合内容としては田村圧勝でしたが、強烈に印象に残ったのがこの日の煽りV。UWFを「内ゲバを繰り返した理想を追い求める集団」として学生運動、あさま山荘事件になぞらえる過激な作りでしたが、当時の熱狂、選手間の深すぎる溝を推し量るには十分なもの。煽りVを超えた、「第二次UWF」の一つの側面を表現しきっていた映像でした。 

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そして令和に復活した「UWF」に船木誠勝と田村潔司がいる。今、船木VS田村が見たいか?と言われるとちょっと微妙な気持ちになりますが、飯塚を圧倒する、という形で船木が存在を見せつけたセミファイナル。生きてるとこういうの見れるんだな、と思っちゃいました(だったら生観戦しろよ、と言われるとぐうの音も出ませんが)

   

いよいよメイン!SHOvs伊藤貴則は何と何の闘いだったのか?

そしていよいよメインイベント。SHOvs伊藤貴則。伊藤は先日のVSハードヒットで試合には勝ったものの川村亮に終盤まで圧倒されたのを見ていたのでまだUWF的な闘いに慣れていないのかな、という印象。一方、新日本プロレスからの刺客、SHOはレスリング(グレコローマン)で大学選手権準優勝、フリースタイルでも西日本準優勝、国体出場経験もある強者。そして、海外遠征時に総合格闘技の試合に出場、柔術も青帯を取得するなどかなり格闘技の技量がある選手でもあります。

 

試合は開始早々は互いにローを蹴り合うUWF的展開。しかしすぐにSHOがタックルからグラウンドに持ち込み、早くもそのポテンシャルを見せていきます。グラウンドで組んだ時の体捌き、首を取りに行くときの動きに格闘技的な素養が感じられ、こういう互いの基礎的な格闘技の技量が覗けるところがUWFの醍醐味の一つ。グラウンドではSHOに一日の長がありそう、というのはここで感じられました。

その後互いにスタンドでの打ち合いに。伊藤が体格で勝るためコーナーに押し込んでいき、そのままグラウンドで上になる展開になるも、SHOも冷静に対応。アームロックで初エスケープを奪ったのはSHO。少しづつSHOがその牙を剥いていきます。

しかし伊藤も旗揚げ戦のメインを担当、新日本プロレスとの対抗戦なだけにそこは意地を見せ、ロー、ミドル連打。ぐらつくSHO。しかしSHOも投げからアームロックでエスケープを奪い、明らかにグラウンドでは上なところを見せつけます。

ここから伊藤はパワー重視の戦法に舵を切り、担ぎ上げてのスパインバスターから逆エビでエスケープを奪い、SHOのスリーパーからの三角絞め(鮮やかな動き!)を持ち上げてのパワーボムでダウンを奪う。ポイントで互角に並んで意地を見せる。しかし、これが災いしたのか、伊藤のスタミナ切れがここらへんから明らかになっていき、一気に試合が終盤に向かっていきます。

互いが掌底を打ち合う展開から、スープレックスの投げあい、ここでキック連打からのハイキックでSHOダウン!ここで一気に伊藤が掌底でたたみかけようとしますがSHOが突然のラリアット!いきなりのプロレス技に伊藤がひるんだところにジャーマン、腕十字とつないで最後は三角絞め。再度バスターしようとした伊藤でしたが力が抜けたところでレフェリーストップ。SHOが初のUWFルールでの勝利を挙げました。

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個人的感想としては、UWFの試合というより、終盤は互いのバックボーンのプロレス色が強く出た試合だったように思いました。伊藤もまだUWFルールでの試合数も少なく、練習期間もそんなに長くない。SHOはもちろん新日本プロレスで普段試合をしているわけで、そのプロレス的な呼吸が合ったからこその終盤のたたみかけ&盛り上がり。「シーンと見る」格闘技のシリアスさというより、終盤に向けて大技でワっと盛り上がっていく、典型的なプロレス的な面白さのある試合でした。

16分という時間のメインイベントですが、UWFの試合のシリアスさ、格闘技的なレベルとしてはLIDET UWFvsハードヒットのメインイベント、伊藤貴則VS川村亮のほうが上に見えたし、もっと言うとハードヒットでの佐藤光留VS川村亮のほうが上に見えました。ただ、団体同士の戦い、旗揚げ戦というシチュエーションとしてはこの日のSHOvs伊藤貴則は面白かったし、互いの気持ちがぶつかり合う熱い試合を見せてくれました。

 

和田レフェリーに勝ち名乗りを上げてもらって、帰り際に弓引きポーズを披露したSHO。田村潔司も「UWFルールの素質がある」と話しており、これからの参戦で「点が線になる」かどうか。GLEATの手腕が問われるところです。

そして、この興行で良かったのはこのあとのマイクの締め。まず所属選手がリングに上がり、リンダマンが回す形で鬼塚、T-HAWK、飯塚、渡辺とそれぞれ話していき、負けてがっくりしている伊藤に「伊藤さん、ダメージあるのわかるけど、今日からGLEAT始まりですよ!負けたからってクヨクヨしてない!」とハッパをかける場面も。伊藤も渡辺をビンタしてから「ここからどんどん驀進していくんで、皆さんついてきてください!」と絶叫。最後はリンダマンが「行くぞみんな!GLEATについてこい!」で締め。なんというか「団体だな~!」という感じ満載。一体感を一気に感じるエンディング。GLEATをこれから応援したい!という気持ちにさせてくれました。

   

令和の今、「UWF」を名乗る意味。個人的「UWF」史について。

今回のメインイベントは、試合としては面白く見ましたが、「UWF」という冠がつくと少し物足りない部分もありました。それはひとえに互いの格闘技的な技術の引き出しからくるものなのかな、というのと個人的には思っていました。そして、twitterを眺めていると、「UWF」を初めて見たファンの人達、格闘技を普段見ない人達と自分との温度差を感じたのも確かです。

私がUWFを見始めたのは第二次UWFが解散し、UWFインターナショナル、リングス、パンクラス、藤原組と、UWF系の団体が4つ存在した奇跡のような時期でした。また、その時期はPRIDE前夜。今のように定期的なTV中継をするメジャー格闘技団体が存在しなかったため、今で言うRIZIN的な部分もプロレス団体やUWF系の団体が担っていたような状態。ほんとうに各団体が「最強」という幻想を追い求めて激しく対立し、ファンもその中で右往左往していました。

その中で自分はUWFインターナショナル、リングスを主に見ていましたが、その中でUWFルールの名勝負を見てしまっているので、いきなりは無理でもやはりそこを追い求めて欲しい(そこはハードヒットにも思うところではありますが)と思ってしまいます。それはなんというか、呪いみたいなもんなので許して欲しい。でも、「UWF」って言って集客するからには、そんな呪われたファンを呼び起こすことでもあるということをLIDETにもわかって欲しい。

例えばリングス時代の田村潔司VS山本宜久とか、田村潔司VSヴォルク・ハンとか、キングダム時代の桜庭和志VS金原弘光とか、各自youtube等でアレして頂ければ落ちてると思うのでぜひ一度見ていただきたい。UWF系団体はそれぞれ総合格闘技化していって消えていく(パンクラスは総合格闘技のプロモーションとして生き残っていますが)運命にありますが、格闘技とプロレス。その間にあるからこその技術レベルの高さは凄いものがありました。

 だからこそ、今回の週刊プロレスの表紙には少し引っかかってしまいました。そもそも、「U」と一文字で表記したときには「LIDET UWF」以上の意味。一般的には第一次~第二次UWFからその派生団体を示すことは明らか団体と私は思っています。

 

だからこそ、今回の「U」を「貫く」という表現は、過去存在した「UWF」を含めて新日本が「貫いた」ということになり、今回のSHOvs伊藤貴則に対してはかなり誇大なものなはず。それをわかった上で、意図的に週刊プロレス(&GLEAT?)が今回の表現を行ったように見えたのです。今回のGLEAT旗揚げ戦にゲタをはかせた、というか。SHOが表紙であることには100%異論ないです。いい写真だと思いますし。

週刊プロレス 2021年 7/21 号 [雑誌]

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 そして、もう一つLIDET UWFに考えてほしいのは、「今UWFを名乗ってプロレスをやる意味」についてです。今は30年~20年前のUWFブームとは違い、立ち技ではK-1、RISE、総合格闘技ではRIZIN、修斗、DEEP、PANCRASEらの国内団体、海外ではUFC、ONEなどの団体がしのぎを削っています。寝技のみの大会もQUINTETなどがあり、格闘技は地上波中継、Abema中継も定期的に行われ、もうエンターテイメントとしての格闘技が定着している状態です。

特にRIZINは煽りV、選手たちの舞台裏、そして試合とプロレスの専売特許だったストーリーに関してもしっかりとフォローしており、これを今から超えるのは相当大変のように思います。

今回RIZIN.28での朝倉未来VSクレベル・コイケにしても、試合前の煽り動画から

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そして試合。話題性もあり、地上波生中継もありました。

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そして試合後の舞台裏動画。二人の控室での邂逅もしっかり動画にされています

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このように、二人の関係性で煽り、ハイレベルな試合、そして試合後もドキュメントで追っていく。これを見せられると、これ以上のものをLIDET UWFが提供することが出来るのか。もちろんGLEAT旗揚げ戦では、「UWFルールだからこそ」SHOを呼べたというのはあるし、ハードヒットとの対抗戦も実現した。UWFルールだからプロレスの展開としてこそ出来ることもたくさんあるし、だからこそ話題をさらうことも出来ました。

ただ、これから先を考えたときに何を目指しているのか。もうエンタメとしての格闘技が確立してしまっている令和3年にUWFルールで何を表現しようとしているのか。GLEAT旗揚げ戦を見てから今まで、色々と考えを巡らせてしまいました。とりあえず今回わかったのは

自分がすげ~面倒くさいUWFおじさんだったってこと!

なにはともあれGLEAT、期待&応援してます!僕から以上!

   

 既に色々関連書籍が出ているUWF。いくつか紹介させてもらいます。

第一次~第二次UWFを中心にまとめているドキュメンタリー。プロレス、総合格闘技とのせめぎあい、選手同士の確執が生まれる過程についても描かれています。 

 とにかくいろんな選手のUWF証言集。食い違いまくる各選手の状況描写、状況認識からしてもう状況がただものではなかったことがハッキリわかる一冊です。 

 UWFを格闘家から見た視点が主になっている一冊。「グラップラー刃牙のモデル」でおなじみ平直行がけっこうしっかりと裏側まで描いています。

 現在はQUINTET主催、プロレスリング・ノアでも活躍する桜庭和志。そんな桜庭がUインター→PRIDEと、格闘技、プロレス界に翻弄されていくさまを描いてます。はっきり桜庭寄りだなぁ、と感じる部分もありますが、この時代のプロレス&格闘技界の空気を感じることが出来る一冊です。 

 とこんな感じです。もっとUWF本は出てますが、とりあえずここらへんが面白いor流れがわかりやすいかな、と思ったものになります。UWFはまあまあな沼なので、軽い気持ちで足を踏み入れるのをおすすめします!ウエルカム・トゥ・UWF!