1月4日、2024年のプロレス初観戦は東京女子プロレス後楽園ホール大会でした。会場に入る前から入場の行列ができていて、ホールに入るとかなりの客入りが予感される密度。この日は東京ドームで新日本プロレス、TDCホールでスターダム、後楽園ホールで東京女子と水道橋近辺で3団体が興行するという異常事態。日本のレッスルマニアウイークみたいになってました。
実際、主催者発表では1235人の観客が入っていたそうで、今年後半くらいは700~800くらいだった東京女子の後楽園ホールにしては盛況。超満員までもう一息という感じでしょうか。ただサイバーファイト系の観客数発表は盛りがちなんで怪しいところもありますが。
前説はいつもの難波リングアナ。今回は1・4ドームがあるからか外国人客も多く(実際目視でも結構いつもより多かったように思います)そのために英語でのアナウンスも追加されていて、難波アナが英語アナウンスをするたびに大きな拍手が。優しい世界...。
去年の後楽園は声援禁止だったため、難波リングアナいわく「声を出していい後楽園ホール大会は4年ぶり」らしいです。発声練習での大歓声に感激する難波リングアナにこっちも勇気付けられました。最後のいいとものタモリのやつ、もう段々若いファンには通じなくなってる気もしなくはないですが。ともかく難波リングアナの前説がこの東京女子プロレスの明るい雰囲気を作り出してるのは間違いない。
そしてアプガプロレスの歌のコーナーをはさんで本戦スタート。今回歌った「バロバロ~It's Battle~」は今までより大分アップテンポで結構好きです。
というわけで全10試合。振り返っていこうと思います。
しかしさすがに後楽園ホールで10試合休憩無しはケツがだいぶ痛くなるのでそこは改善していただきたい。最初はビールガンガン行こうと思ってましたが今回南側の割と真ん中の席だったのでトイレ考えて控えました。特典会が浅草橋ヒューリックホールで3部構成だったんで時間無いのはわかりますがそこは考えてほしかった。
第一試合の6人タッグ。凍雅選手が毎回紙テープを見上げて幸せそうな評定をするので見ていて微笑ましい気持ちになります。この感じでカウンターのエルボーはガツンと強めに入れていくギャップが素敵。
試合は宮本もかと長野じゅりあの空手タッグ連携、桐生真弥の新年初謝罪が飛び出すなどわちゃわちゃしながらも進み、上福ゆきがフェイマサーで鳥喰かやを沈めて勝利。鳥喰かやはそろそろどこかで弾けたいところ。もう3年目、後輩の23年デビュー組がかなり脚光を浴びているので危機感を持たないといけないのでは?と思ってしまいます。
今日もノーサポーター!ストロングスタイル原宿ぽむ! #tjpw pic.twitter.com/0gOCVRyl8H
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紙テープ引っかかるHIMAWARI
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そして第二試合。乃蒼ヒカリ欠場により愛野ユキがプリンセスタッグ挑戦が決まりカード変更。急遽ラム会長参戦。今回は原宿ぽむ、ラム会長のらくをめぐる三角関係百合営業を中心に試合展開。もちろんおやすみエクスプレスも飛び出してらくぽむワールド全開。しかしラム会長もしっかり色を出してアシスト。らくが風城を降して勝利。
しかしこの試合、HIMAWARIの奮闘に注目したい一戦でした。年少組の二人を率いてらくぽむワールドに立ち向かい、ラム会長との攻防を逝ってに引き受けたHIMAWARI、この試合の裏MVPだったように思います。がんばれHIMAWARI!
今一番応援したくなる!角田奈穂!
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そして第三試合。乃蒼ヒカリ欠場によりふりーWifiでのタッグベルト返上の憂き目を見た角田奈穂が瑞希に挑んだ試合。この試合が全試合の中で異色なほどにゴツゴツとした展開になりました。
特に角田が仕掛けたように見えましたが、とにかく打撃を互いに入れ続ける。かなり東京女子としては異質なほどに当たりの強いエルボーがゴン、ゴン、と鈍く重い音を響かせ、前蹴りでガンガン顔を蹴っていく角田奈穂。瑞希も一歩も引かずに対抗し、さらに自分の持ち技、飛び技を繰り出しつつ技自体はガンガンキツめに入れていく。一歩間違えば不穏試合になるくらいのゴツゴツした試合は瑞希のキューティースペシャル。しかもその場で持ち上げて一気にブリッジして抑え込むもの。「終わらせた!」っていう感じの試合でした。
とにかく二人の気持ち、特に角田の気持ちがやるせない中でバチバチと冷たい火花を放っていたような。わかりやすくも華やかでもない試合でしたが、そこには闘いがあったように思います。角田奈穂はもうシングルベルトを奪って頂きたい。
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中島翔子勝利!
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第四試合は毎年恒例、中島翔子とハイパーミサヲの特殊ルールマッチ。
今回は「新春!龍が如く夢を叶えよ!だるまマッチ」
※通常のプロレスルールでの決着はなく、リング中央に吊るされただるまに2024年の願いを込めて片目を入れた選手が勝利となる特別ルール。
とのことで、リング中央に吊るされたダルマの下には脚立が設置されたラダーマッチ。まあそんな事関係ないようなあるような状態で後半は後楽園ホールのロビーをフル活用、ハイパーミサヲの戦闘用自転車(なんとクラファンで制作)も大活躍。ハチャメチャな展開になった試合は中島翔子が勝利。この振り幅があるのが東京女子プロレスがDDT系列であることの所以というか。悪ノリ強めで楽しかったです。
第五試合、里歩vs鈴木志乃はとにかくAEWスター里歩さんの存在感が凄かった。試合は5分くらいで終わりましたが、私はもうスターを拝めてありがたい、という気分に。
鈴木志乃25歳、里歩26歳となんと年齢は一年違いなんですが、1年と18年という圧倒的プロレスキャリアの差がある二人。いつか鈴木志乃が互角に渡り合う日は来るのか?とにかく里歩さんが全てに圧倒的なスターっぷりを見せつけて去っていきました。さすがの一言。
今日の東京女子、メインはもちろん、伊藤麻希vs山下りなのGCW直輸入マッチも素晴らしかったけど、上原わかなvsアジャコングも心に残った。いきなり側転エルボーで急襲、スリーパーで粘りに粘った上原わかな。このガツガツ感!負けてもなおアジャに対峙するその意気やよし!
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そして良かったのが第六試合のアジャコングVS上原わかな。謎の企画「夢プロレス」でアジャと対戦済の上原わかなが東京女子プロレスでデビューしてからの成長をアジャに見せた結果となりました。いきなりの奇襲も気持ちが見えたし、ガムシャラにスリーパーで締め続ける姿も勝利の執念を感じました。HIMAWARI、鈴木志乃、凍雅、風城ハル、大久保琉那と充実の23年デビュー組の中、同期トーナメント「ねくじぇねトーナメント」優勝、一歩抜け出しつつある中でさらに印象に残るファイト。アジャにも今度は認められ、今年はガンガン上に食いついていく姿を見たくなる上原わかなでした。
デスマッチアマゾネス!山下りな!
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伊藤麻希ピザカッターinTJPW!
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最後に血を顔に塗るのも良い!
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伊藤麻希vs山下りな良かった!
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そして個人的最推しカードの伊藤麻希vs山下りな!最近東京女子とアメリカのGCWを行き来してニック・ゲージと組み、準レギュラー扱いの伊藤麻希、GCWのウルトラバイオレットチャンピオン(なんと男女問わないデスマッチベルト!)の山下りなのシングルマッチは東京女子プロレスというよりGCW直輸入の一戦となりました。
試合開始から噛み合う二人。まず「カワイイポーズ」を披露し、山下にもポーズを即す伊藤麻希。山下が寝転んでポーズを取るとすかさずこけしを叩き込む伊藤!「世界一可愛いのは伊藤ちゃんパンチ」を叩き込み、山下が同じく「世界一かわいい」をコーナーでやろうとすると叩き落とす伊藤!しかし相手は山下りな。伊藤がGCWでのトレードマーク、ピザカッターを取り出したのを合図のように山下も机を持ち出して対抗、だんだんとハードコアの予感がしてきます。
伊藤を抱え上げ、松井レフェリーに賄賂を渡して籠絡してから机に叩きつける暴挙!しかし伊藤も負けじと山下を場外に叩き落してからのエプロンからスイングDDT、コーナーからのクロスボディと畳み掛けたあとピザカッター!奪った山下も「使うぞー」と宣言、もみあいの中で松井レフェリーが排除されると伊藤が山下にピザカッター攻撃で山下が顔面流血!GCW!GCW!
この流血で山下のハードコア魂に火が着いたか、リングにイスを持ち込み、互いの頭をイスに叩きつけ合うハードコアイス合戦!ここは山下が制しますが、伊藤も負けじとコーナーにイスを据えてのフェイスウォッシュ!ピザカッター、フェイスウォッシュとアメリカで組んでいるニック・ゲージの技を出していく。この試合は紛れもなく山下りなと伊藤麻希にしか出来ないGCWのシングルマッチ!これを後楽園ホールで見せてくれた二人に震えました!今までFITE.TVでしか見たことなかった「GCWでの伊藤麻希」がここにいました。スゲー!スゲー!
最後は伊藤、山下のスプラッシュマウンテンに沈みますがGCW濃度の高い、通常ルールながらもハードでヤバいシングルマッチを見せてくれました。良かった~!
荒井優希、インターナショナルプリンセス王座戴冠! #tjpw #SKE48 pic.twitter.com/9vd3w8mUn7
— 男マン (@otokoman) 2024年1月4日
第八試合はマックス・ジ・インペイラーvs荒井優希のインタナショナルプリンセスタイトルマッチ。これはさすがにインペイラーが圧倒します。
ガンガン荒井優希を持ち上げ、叩きつけ、殴りつけてひたすら蹂躙。存分にモンスターっぷりを発揮しますが荒井優希もビッグブーツ連発でなんとか逆転を狙いますがボディプレスで圧殺寸前。しかしなんとコーナーから飛んだところを受け止められながらも丸め込み、起き上がったところをファイナリーでカウント3!え!?って叫びそうになりましたが満身創痍の荒井優希がなんとかインターナショナル王座に輝きました。輝きました!
しかし終始怪物性を発揮してくれたインペイラー凄かった。ベルトは手放しましたが、これからも呼び続けてほしい選手。キュートな怪物っぷりをまた見せて欲しいところです。
そして、セミファイナルはふりーWIFIの返上により3WAYでのプリンセスタッグ選手権。辰巳リカ&渡辺未詩vs鈴芽&遠藤有栖vs水波綾&愛野ユキ!終始3組が入り乱れる展開が続きますが、さすがにここで存在感を発揮したのがアニキこと水波綾。
入場からアニキコールを浴びて場を支配、最も小柄&キャリアの浅い鈴芽&遠藤有栖もコンビネーションで場をかき回し、渡辺未詩はパワーで、辰巳リカは狂気とヒップアタックで水波に立ち向かいますが持ち前のパワーで押し返す水波。乱戦の末にリング上に残された愛野ユキと遠藤有栖、愛野がUBV(変形サイドバスター)でフォールを奪って勝利。ユキニキこと水波綾&愛野ユキが初のプリンセスタッグチャンピオンに輝きました。
この3WAY、ノータッチなこともあり目まぐるしい展開、13分と短い時間ながら攻防が詰まった濃厚な試合。水波ではなく愛野がフォールを奪っての戴冠。ユキニキの今後に注目です。
山下実優vsマーシャ・スラモビッチ凄かった!噛み合うハードヒットファイト!何度でも見たい迫力! #tjpw pic.twitter.com/3FTa0IqPGW
— 男マン (@otokoman) 2024年1月4日
そして凄かったのがメインイベント。山下実優vsマーシャ・スラモビッチ!
一時期マーベラスにも来日参戦し、Impact、GCWでも活躍するマーシャが日本で山下実優と対決。アメリカンインディーのトップレベルの女子レスラーが挑戦してきた、ということが試合開始後すぐに判明しました。海外では1勝1敗の両者、一旦の決着戦とも言える一戦。
試合開始直後からガッチリ組みあったまま場外になだれ込み互角の攻防。場外での打撃戦もその重さが違う。山下もいきなりギアを入れていきハイレベルな攻防に観客もヒート!場外戦でのエプロンでのライガーボムから旋回式のトペで観客のハートをガッチリと掴んだマーシャ。優位に立って山下を蹴りまくる。山下も蹴りまくり、エルボーもガッツリ入れていく。マーシャもひるまずガンガンやりあう。そのことで山下実優も何かを開放しているような力強いファイト。女子の「ストロングスタイル」というものがあるんならこういう試合なんだろう、と思わせる力強さとスピード。ずっと一進一退。とにかくずっと凄い。
サッカーボールキックの連打から片羽締めからの払い腰でさらに締め上げる山下、なんとか逃れるマーシャ、コーナーに突っ込む山下を丸め込み変形の河津掛け、パッケージドライバーを狙うも不発かと思いきやコーナーに向かってダブルアームスープレックスとエグい攻撃。マーシャも引き出しの量がすごい!しかし打撃の重さは山下か。
一進一退の中でギアを上げ続けた二人の攻防、キレが落ちないままマーシャの飛び膝、山下の三角跳び延髄斬りも決め手にはならず。マーシャのハイキック→バズソーを受けてもカウント2で返す山下、スカルキック合戦もマーシャがヒットさせるもカウント2,ベルトへの執念を見せた山下がロープに走ってのスカルキック、フォールを返したマーシャに膝立ちのところにスカルキック、背後からのクラッシュ・ラビットヒートを叩き込んでから正面からのクラッシュ・ラビットヒートを炸裂させてようやくカウント3!!山下実優の勝利、ベルト防衛を果たしました。
いや二人共凄かった。マーシャの引き出しと打撃のキレも凄かったし、それにより普段何処かでリミッターを賭けている山下実優の底力が引き出されたように感じました。
そして試合後の締めはもちろん「限界、自分で決めんなよ!」
こうして幕を閉じた1・4東京女子プロレス後楽園ホール大会。個人的には今までの東京女子とは違う波を感じました。それは「海外からの波」
今まで日本のプロレス界と交わらず、ほぼ鎖国を貫いている東京女子プロレス。しかし山下実優、伊藤麻希が海外団体に参戦し続けていることで「国内とは鎖国、海外とは開国」という不思議な状況が生まれつつあります。そして、そのことにより今まで純粋培養されてきた東京女子プロレスのファイトスタイルに変化が生まれつつあるように感じます。
基本的にスープレックスや顔面への打撃、流血などもほぼほぼ無い東京女子プロレスですが、今回の伊藤麻希VS山下りなのような大流血、ハードヒットな打撃の応酬となったメインイベントが「輸入」されてきた。そして現状山下実優がチャンピオンである限り、山下に東京女子の選手が挑戦するにしても今回のマーシャ戦とも比較されるし、マーシャに勝った山下に勝利するための説得力をどう産んでいくのかという問題も出てくるはず。
旗揚げ以来、どこかで日本の伝統的な女子プロレスに背を向けて独自の道を歩んできた東京女子プロレスが、ここにきて海外勢によって大きな変革を迎えつつある。
そんな予感を感じさせる1・4後楽園大会でした。充実!