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雲田はるこ「昭和元禄落語心中」9巻。次巻最終巻!落語に取り憑かれはじめる八雲

アニメ絶賛放映中!でお馴染みの昭和元禄落語心中。このたび最新刊9巻が刊行されましたので購入、早速読みました。 

昭和元禄落語心中(9) (KCx)

昭和元禄落語心中(9) (KCx)

 

 7巻で倒れ、8巻終盤でようやく生きる気力をとりもどしかけている八雲ですが、なかなか落語をやるまでの力は湧いてこない様子。それを与太郎こと助六がなんとかしようといろいろな手を尽くして落語に向けようとしていくのが涙ぐましい。

実際、名人と呼ばれた落語家が一度大病をしたりして休んだりするとまた高座に向かうまでに結構な気力、体力が必要なようです。

 

立川談志も喉の治療で入院、退院後は散々文句を言いながらようやく情熱大陸のイベントで落語をやるさまがDVDにもなったくらいですし、五代目三遊亭圓楽も脳梗塞で入院した二年後に落語家を引退しています。若いころ身体に染み込ませた噺も休んでしまって抜けてしまうと再び身体に入れるのは大変なんだろうなと思います。

そして、落語の最中に絶句して高座を降り、その4ヶ月後に亡くなった八代目桂文楽の例をあげるまでもなく、落語家の引退と死はかなり近いところにあるもの。それを感じているのか、何とか八雲を復帰させようとする助六。そして家族を総動員しての作戦で何とか八雲を高座に引っ張り出すことに成功します。

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 信之介の無邪気な笑顔。子供の笑顔の強さ!

この巻は落語シーンが多くとってあり、助六の芝浜、八雲のたちきり、死神。

「芝浜」は夫婦の絆、「たちきり」、「死神」はどちらも死をテーマにした噺となっており、家族とともに生きていく力に満ちた助六、一度死の淵から生還しながらも死と向かい合わざるをえない八雲をそれぞれ象徴した噺。また、その噺を演ることにより過去に引きずられ、死に向かって進んでいってしまう八雲。落語をやって生きる落語家でありながら、落語によって死にむかってしまう。

また、現助六の与太郎も、過去に引き摺られる八雲に手を差し伸べるのですが、八雲が「たちきり」を演ることにより先代の助六、みよ吉に引っ張られてしまう。

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 八雲の前に現れるみよ吉。生と死、過去と現在の境を彷徨う八雲

 そして「死神」を演る八雲の前に現れる先代助六、「死神」は男が自分の命の灯火が灯る蝋燭を渡される、というところでサゲにつながる噺ですが、八雲の灯火は消えてしまうのか。それとも再び火を着けるのか。誰かが吹き消してしまうのか。

   

生と死、過去と現在が入り交じる展開となったこの9巻。実際アニメが放送中なので見てから読むか、読んでから観るかは中々悩ましいところだと思いますが(ちなみに5話時点だと原作では3巻の途中くらいです)確実に面白いし、ここにきてタイトルの意味合いが浮かび上がってきた「昭和元禄落語心中」ぐっと引っ張りこまれた9巻でした。

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