男マンの日記

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デスマッチに賭ける無軌道な青春の軌道!小島和宏「W☆ING流れ星伝説 星屑たちのプロレス純情青春録」

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伝説のデスマッチ団体「W☆ING」とは何か?

その昔、破天荒なデスマッチ、杜撰な運営、絶え間ないハプニング、めくるめくカオスに包まれたプロレス団体がありました。その名もW☆ING。1991年から1994年、約3年間という短い活動期間でありながら、ファンの間には強烈な印象を与えた団体でした。

とにかく数々の「事件」をプロレス界に起こした団体でした。その一部をあげると

  • 松永弘光、後楽園ホールのバルコニーから初の「バルコニーダイブ」
  • ミスター・ボーゴVS松永弘光の「人間焼肉デスマッチ」
  • ミスター・ポーゴ対ジェイソン・ザ・テリブルの「棺桶デスマッチ」
  • 松永光弘対レザーフェイスの「五寸釘デスマッチ」

ミスター・ポーゴ、松永弘光、金村ゆきひろはここで名を挙げ、邪道、外道や齋藤彰俊も参戦。そしてさまざまな怪奇派レスラー。ジェイソン・ザ・テリブル、レザー・フェイスら、洋画モチーフの覆面レスラーが活躍。インディー界での「怪奇派」の流れを作ったとも言えるでしょう。

「W☆ING流れ星伝説 星屑たちのプロレス純情青春録」は、そんなW☆INGの歴史、成り立ちから熱狂、そして崩壊までを追いかけた一冊。あのとき熱狂したファンも、歴史上の団体として名前だけ知っているファンも、初めてW☆INGに触れるファンも。この破天荒で適当でいきあたりばったりの、でも無駄な情熱に溢れたこの団体に触れてみたい、と思うようになる。そんな一冊になっていると思います。 

   

 「W☆ING流れ星伝説 星屑たちのプロレス純情青春録」

 改めて紹介しますが、この本は伝説の団体「W☆ING」の旗揚げから崩壊までを、元週刊プロレス記者の小島和宏氏が改めて関係者に取材し、書き綴った一冊です。Amazonの紹介文から一部抜粋するとこのようになってます。 

1991年8月7日、後楽園ホール。
のちにプロレス史にその名を刻むインディー団体、「世界格闘技連合 W☆ING」がTAKE-OFF(離陸)した。
だが、わずか3シリーズをもって団体は分裂。
茨城清志は新たな団体、「W☆INGプロモーション」を設立へと動く。
大半のスタッフ、選手と共に同年12月10日、「SKY HIGH AGAIN」を後楽園ホールで開催する。
資金は持ち出し、リングは全日本女子プロレスから10万円で借りるなど、"ないない尽くし"の再旗揚げ戦。
茨城は破格のギャラを払ってミル・マスカラスを招聘。
満員にはならなかったものの、なんとか再スタートを切ることに成功した。

W☆INGのリングに集まった男たちは、誰もが世間的には無名だった。
メジャー団体の選手のようなめぐまれた体格や身体能力がはなかった。
だが、プロレスに憧れ、愛する気持ちだけは誰にも負けていない。
それは、団体の運営を担うフロントの男たちも同様だった。
どうしたら、リングで輝けるのか。どうしたら、世間にW☆INGを知ってもらえるのか。
その煩悶の中、男たちは汗と血と涙を流しながら、きらめきを求めて過激なデスマッチへと身を投じていく。
夜空に一瞬、輝く流れ星のごとく――。

W☆INGは人脈と実行力はあるが時間、金、全てにルーズな茨木清志氏が代表として設立、そこに大宝拓司氏らのスタッフが加わり、徳田光輝、齋藤彰俊、そして松永光弘の「格闘三兄弟」をメインに格闘技路線を歩もうとしますが、ミスター・ポーゴも参戦していたこともあり、あれよあれよと言う間に怪奇派が暴れ回るデスマッチ団体になっていきます。

そこからしてもう「マンガみたいな」プロレス団体ではあるんですが、紹介されていくエピソードも本当に破天荒なものばかり。 

  • マイク・タイソンを招聘すると社長が言い出す
  • ビッグマッチを行うも当日売れたチケットの数をちゃんと数えてない
  • 旗揚げまもなく社長と運営の方針が食い違って分裂
  • スタッフがパチンコで営業の経費を稼ぐ

などなど。とにかくちゃんとした大人がほとんど出てこない369ページ。金もなく、有名選手もいない弱小団体が数々のズンドコを繰り返しながらその情熱とアイディアと行動力で時代に一つの花を咲かせ、鮮やかに散っていく。そんなプロレスに狂った大人たちの「プロレス純情青春録」がここにありました。

   

良質な「血みどろプロレス青春活劇」

とにかくアクの強いスタッフ、選手たちが次々と登場し、数々の裏切りが繰り広げられながらもどこか読後感のよさ、爽やかさが漂うのは著書の小島和宏氏の個性のような気がします。血みどろの闘いを繰り広げた団体の記録でありながら青春ストーリーでもある。なんとも不思議な一冊でした。巻末にはW☆ING全興行の試合結果が掲載されており、当時のスタッフの座談会も新たに収録されています。伝説の団体の歴史を知る歴史書として、プロレスへの情熱だけを燃料として走りきった人間たちへの讃歌として、ボリューム多めですが、あっというまに読める一冊でした。

W☆INGの興行はクエストからDVD化されています。この本を読んでから試合を見るかたも、当時見ていた試合を振り返るかたにも良いかと思います。とにかくジャケットからして秀逸なものばかりです。もちろん中身もヤバい!