男マンの日記

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2023・11・19 朝倉未来が負けた日。

2023年11月19日、朝倉未来が負けた。

キックボクシング団体RISEの新イベント、オープンフィンガーグローブによるキックボクシングオンリーの大会「FIGHT CLUB」のメインイベント、初代RISEオープンフィンガーグローブマッチ65Kg級チャンピオンのYA-MANとキックボクシングルールで対戦した朝倉未来でしたが、1R1分たたないうちにYA-MANの右ストレートをもろに喰らってダウン。なんとか起き上がるもすぐに追い打ちを喰らいダウン。レフェリーがすぐに試合を止めてKO負け。あっけなく敗北を喫しました。

〇YA-MAN(TARGET SHIBUYA)
KO 1R 1分17秒
●朝倉未来(JAPAN TOP TEAM)

efight.jp

朝倉未来が負けた。しかしこの試合での負けはただの負けではなく、朝倉未来というキャラクター、ブランドが一気に崩れ落ちるような負けだったように思います。

そもそも名古屋の不良から前田日明主宰の格闘技大会OUTSIDERで頭角を現した朝倉未来、2018年からRIZINに出場し始めても連勝を飾って一気にフェザー級のトップ選手に。同時にYOUTUBEでも驚異的な再生数を叩き出し、トップYOUTUBERとの交流を深める中で「令和のOUTOSIDER」とも言えるBREAKINGDOWNを開催するなど、ファイターとしても経営者としても一流、その生き方、オーラそのものが若者のあこがれの対象、まさに「カリスマ」的な存在として君臨していました。

 

 

今まで朝倉未来がRIZINで無敗だったわけではなく、今まで4回の負けを喫しています。

2020年11月 RIZIN.25の斎藤裕戦

2021年6月 RIZIN.28のクレベル・コイケ戦

2022年9月 超RIZINのフロイド・メイウェザー戦

2023年7月 超RIZIN2のウガール・ケラモフ戦

 

負けてはいますが、斎藤裕戦は接戦の判定負け、クレベル、ケラモフ戦は絞め技での敗退、メイウェザー戦はエキシビション。そして何よりどの相手もRIZINトップ選手、メイウェザーに至ってはあのメイウェザー、ということで朝倉未来が評価を落とすことはありませんでした。(ケラモフ戦敗退後は現解説がささやかれたりしていましたが、それでも朝倉未来の強さ自体を疑う声は殆ど出ませんでした)

 

そして負けてもそこから立ち上がり、また強敵を倒していくことで自らの強さを証明してきた朝倉未来。彼が自らのキャラクター、カリスマ性を保っていられるのはさまざまな事業での成功もありますが、なによりRIZINで実力を示してきた、というのが基本にあったはず。しかし今回のYA-MAN戦での敗北は後輩であり、未来より格下とされてきた選手からの敗北。YA-MAN自身はオープンフィンガーのチャンピオンではあるものの、例えば那須川天心、武尊ほどの実績はまだないこれからの選手。その選手から打撃でKOされてしまったことでSNSも一気にどよめき、彼を知る格闘技関係者、選手たち、ファンも大いにざわつき、未来敗北のショックがタイムラインを埋め尽くす騒ぎになりました。

平本蓮を筆頭に、青木真也、安保瑠輝也、川尻達也ら本当に沢山の選手たちが朝倉未来について語り、対立し、関係者、ファンを巻き込んで燃え上がるまさに格闘技界未来ファイヤー状態。朝倉未来が負けたことでその影響力をまざまざと見せつけたというか。「ああ、やっぱりまだまだ格闘技界は朝倉未来中心だったんだな~」というのを改めて思い知らされた形になりました。

 

 

しかし正直、なんでこの試合を受けたのか。初となるキックボクシングマッチ。7月にケラモフに敗北を喫してから4ヶ月と試合感覚はふつうのようですが、未知の競技に挑むにはあまりに短い準備時間。そして例年のRIZIN大晦日大会の一ヶ月前。負けたときのリスクも大きい試合でした。

実際、朝倉未来は焦っていたのかもしれません。RIZINの現フェザー級チャンピオンは鈴木千裕。パトリシオ・ピットブルに大アップセットで勝利、その勢いを駆って未来が負けたケラモフにアゼルバイジャンで勝利してチャンピオンに。その前の大会では未来が負けたクレベル・コイケを金原正徳が内容的に圧倒して勝利。RIZINフェザー級の主役が完全に鈴木千裕、金原正徳に移った印象がありました。

その状態を打開していくため、この試合に勝利した上でRIZIN大晦日で強さを見せて名誉回復、そんな青写真を描いていたんじゃないか。そんな印象を受けるほどこの試合をあっさりと受け、すんなりと試合に挑んでしまった。

そこに油断があったのか、ダメージの蓄積があったのか。不慣れなルールのため思い通り戦えなかったのか。そのすべての要素が絡み合ってこの結果を産んでしまった。今までのRIZINを牽引し続け、明らかに朝倉兄弟のおかげで何度もRIZINが救われた瞬間があったのは確実、日本の総合格闘技が今、この安定した盛り上がりを見せているのは朝倉未来の存在がかなり大きいはず。今まではちょっと人間離れした、というか、人間らしい姿をあまり見せなかったんですが、試合直後であまり記憶が定かでない状態で動画を出し、その中で引退を示唆したことで「朝倉未来引退」とネットニュースを騒がせましたが、後日落ち着いてから改めて動画をアップしていました。

www.youtube.com

今回負けたショック、こんな終わり方で良いのか、という後悔。勝ったら年末も出るつもりだった、という予定(さすがに出ないらしいですが。そりゃそうだ。)

そしてどんどん朝倉未来が普段思っていたことを吐露していきます。いろいろな事業をやっていると、周りから「練習しろ」と言われていてそれがストレスとなっていたこと、選手としてRIZIN、事業としてのBREAKINGDOWNが支えになっていたけどそれで批判されたこと。エンターティナーとしてみんなを楽しませたいけどやればやるほど格闘家・朝倉未来が批判されてしまうというパラドックス。

そして、周囲の助言から、肉体的・精神的ダメージを抜くために一旦格闘技を休むという宣言。こんな負け方で終わりたくない、という気持ちもあるけれど、一度自分で試合をしたいと思うまで休みたい。血反吐を吐くまで練習してまた強い姿を見せたい、その時まで...と、いいかけたときに涙を見せた朝倉未来。必ず戻ってきます、それまで暖かく見守ってほしい、と語り、動画は終わっていきました。

 

この敗北で、カリスマとしてではなく「人間・朝倉未来」を見たように思いました。今まではどこかスカしていたというか、自分の立ち位置を意識した言動を常にコントロールしてきた朝倉未来が敗北で見せた涙。どこか吹っ切れたような姿。

かなり大きなものを失った朝倉未来ですが、今回のYOUTUBEを見たり、SNSを見たりして改めて朝倉未来の次を見たくなりました。RIZINを見てきて今までの朝倉未来にもちろん思い入れは大きいし、今回の負けで「やっぱり弱かったんじゃん」って言うファンとかいたらイラっとするくらいにその強さも弱さも見てきたつもりですが、今回一段またさらけ出すことでさらに朝倉未来への興味が深くなったというか。

誰にも負ける気がしなかった朝倉未来、一旦落ちてから立ち上がる朝倉未来、ボロボロになり、むき出しの姿をさらけだす朝倉未来。これでとことん朝倉未来を見れる。こちとらとことん「格闘家・朝倉未来」をしゃぶりつくす。最後まで見届けたい気持ちになった。そんな朝倉未来の敗北でした。

とりあえず朝倉未来選手、ゆ~っくり休んでまた復帰をお待ちしてます!

今までありがとうございます、これからも見させていただきます!