1月13日に行われたプロレスリング・ノア後楽園ホール大会をAbemaTVで見逃し配信で見ました。
都内では雪も降った悪天候の一日ではありましたが、1139人の動員。去年年末あたりからノアの後楽園ホール大会も1000人超えが普通になってきた印象もあり、客入りに比例して会場も盛り上がっていました。
サクサク進行かつ充実の前半戦。TEAM NOAHが船出!
簡単に振り返っていくと、まず第一試合のドラゴン・ペイン&アルファ・ウルフvsニンジャ・マック&アレハンドロvsHAYATA&Eitaの3WAYタッグマッチで客を温めにかかる。ただわりとノアのこの手の第一試合見るたびに思うんですが、超ルチャ!みたいな試合がここだけなので興行の中で浮いてるような気もしちゃいました。盛り上がりはしてるんですが、この後の盛り上がりとちょっと違うような。まあ新人同士のシングルがいい、とも言いませんが。
第二試合は谷口周平VS佐々木憂流迦。佐々木憂流迦のプロレスデビュー第二戦。第二戦にしてはかなりいい試合に見えました。スモールパッケージホールドという谷口のフィニッシュはもうちょっと違いを見せてわかりやすく叩き潰して欲しいとは思いましたが、打撃戦での分厚さの差ははっきり見せるファイト。佐々木憂流迦も自分の得意分野、関節技を活かした上できっちりと「プロレス」に向き合っていて好感を持てました。
第三試合TEAM NOAHとしての船出の一線となった丸藤正道&杉浦貴&小澤大嗣&大和田侑vsモハメド・ヨネ&齋藤彰俊&小峠篤司&Hi69の8人タッグマッチ、バチバチファイトをやりたい、という意志は伝わったけどやはりその先が課題かな、という内容に見えました。そもそもキツい試合は以前からやっていて、そこが周りに伝わらなかったところが暗黒期を迎えた原因のはず。今回小峠が小澤を仕留めましたが、わりと順当な結果。ノアを変えるのであれば、わかりやすくいきなり丸藤からフォール奪うくらいのインパクトは欲しかったところです。
大原はじめがダガの持つJrヘビーのベルトに挑戦表明した6人タッグもスピーディーで面白かったし、GHCナショナルの前哨戦ではタイタス・アレクサンダーが光ってたんで17日が楽しみな感じに。
そしてセミ前に組まれた征矢学VS大岩陵平のシングルマッチでは、大岩が正しく若手として征矢に叩き潰される結末に。負けはしましたが、トップレスラーにガンガン食らいついていく気合いを見せた大岩。「大岩がノアの若手だったらなぁ~」ってノアファンも思ったことでしょう。それくらい良かった。全体的にサクサク進み、試合はセミ、メインに。
ジェイクと拳王、清宮と潮崎で考えたプロレスを「伝える」こと
セミファイナルはジェイク・リー&アンソニー・グリーン&YO-HEY&タダスケvsマサ北宮&稲葉大樹&近藤修司&宮脇純太の8人タッグマッチ。ジェイク組はGLGだけどマサ&稲葉はなにかユニット名とか無いんでしょうか。マサが結構主張しているのでここはユニットを組んでやってほしいところ。
試合はそれぞれのヘビー組とジュニア組の見ごたえある鍔迫り合いが見れる試合に。特にジェイクとマサのバチバチ、近藤の下で修行中の宮脇がYO-HEY、タダスケに立ち向かっていく2つの闘いが並行しているような試合。その中でYO-HEY、タダスケが試合を作っていく力とアピール力を発揮していたのが印象的でした。
試合は宮脇がタダスケを強引に丸め込んで勝利!近藤と組んでのタッグタイトルマッチ挑戦を宣言する宮脇!若さ!若さっていいね!近藤に「まだ早い!」とバックステージで怒られるのも愛嬌。
そしてメインイベントはチャンピオン拳王に潮崎豪が挑むGHCヘビー級選手権試合。TEAM NOAHを立ち上げていきなりの大舞台に挑む潮崎、去年のN-1優勝者でありながらタイトルマッチに敗れてからはなかなか存在感を示せず。今回の拳王への挑戦も一度断られ、さらに「アイ・アム・ノアという”言葉”を賭けろ」という条件付き。
コロナ禍の中、激闘でプロレスリング・ノアを支えてきた潮崎豪が産んだ”アイ・アム・ノア”を奪われる屈辱と引き換えのタイトルマッチ。それくらい今の潮崎がベルトに遠い...。
それでもメインで光ったのは潮崎豪。試合序盤は拳王のペースでしたが蹴りをラリアットで迎撃してから足攻めでペースをとりもどした潮崎。粘り強い足攻め、とことん一か所を攻め込んでいく執念。そこからはひたすら愚直にやられてもやられてもチョップを打ち込み、やられても立ち上がり、拳王の蹴りをひたすら受け止める。いつもの潮崎ではありますが、そこにはどこか滅びゆくものの美しさすら感じるたたずまい。ハードな打撃の交換をしつつ、そこには明らかに「時代をつかもうとするもの」と「時代を取り返そうとするもの」というエネルギー総量の違いを感じてしまいました。
最後は雪崩式ドラゴンスープレックスという荒技を拳王が見舞い、PFS、そしてフィニッシュの炎輪でカウント3。GHCヘビー級王座防衛を果たしました。
しかしこの興行で感じたのは、試合そのものというよりもマイクアピールの強さ。特にセミファイナルの試合後、ジェイク・リーが清宮に迫ったマイクはまさに清宮だけでなく、プロレスリング・ノア所属選手全員、いやプロレスラー全員に届いて欲しいものでした。
清宮海斗!お前に一言物申す!
有明!あれだけオレがステキなバトンを渡したのに、何だあのマイクはよ!
(観客大歓声)
お客さん静かにしてくれ、オレの話がまだ終わってない!
清宮海斗!認めるよ。お前は素晴らしいレスラーだ。センスの塊だと思うよ、試合の内容を見ていてもね。
ただな!ただな!どれをとってもな!お前の言葉一つを取ってみてもだ。
小さくまとまりすぎなんだよ!
お前はこのリングで何を見せたい!
何を伝えたい!
お前の生の感情を、お客さんは期待してんだよ!
まさに、まさに自分がプロレスラーに求めてるのはこの「何を見せたい?何を伝えたい?」というところが生で伝わってくるマイクであり、生で伝わってくる試合。必ずしもマイクという手段を取る必要はないですが、何がやりたいかを伝えてくれるプロレスが人の心を打つ。プロレスラーとしてのジェイク・リー、表現者としてのジェイク・リーの心の叫びが突き刺さりました。
1・13ノア後楽園でのジェイク・リーのマイク。ちょっと江頭2:50入ってたのが好きでした。https://t.co/KeiPlLByP8
— 男マン (@otokoman) 2024年1月22日
#noah_ghc pic.twitter.com/fSBg743duu
マイクアピールの入りがちょっと江頭っぽくて面白かったです。
メインイベントの拳王も試合後のマイク。
アイアムノア!
アイアムノア!
アイアムノア!
めちゃくちゃ響きいいよなあ!
だがなおい!おい!潮崎豪!
今日からオレが、ノアを引っ張っていく。今日からじゃねえな。
前からオレがノアを引っ張っていくのは変わりない。
だが、ノアをさらなる高みに持っていくには
潮崎、お前が必要だ。
ノアの聖地、ディファ有明でデビューして、ずーっとノアを背負ってきたてめえのプロレス人生をオレ走ってるぞ。
おい!潮崎だけじゃねえぞ!チーム・ノア!
てめえらにも言ってやるぞ。ノア、このままで満足か?
全然!満足じゃねえだろう!
まだまだノアを高みに持っていく。
おい潮崎豪!これからチーム・ノアがどうなるかはお前次第だ!
だからな、チーム・ノア、もっともっと上げて行けよ。
そのためにオレがプレゼントをやろう。
オレが!3分前に獲得した!アイアムノアの言葉を!
オレがお前に!プレゼントしてやる!
まだまだ!アイアムノア!チーム・ノア!まだまだ上を目指していけ!それだけだ!
主張があり、目的があり、そして気持ちが伝わるマイク。やはり個人的にはプロレスリング・ノアのレスラー、ファンともにまだどこか愚直に、無口に試合をこなすことへのこだわりがあるように思います。しかし、いくら凄い試合をしてもそれだけでは伝えきれないものがあるはず。何のために闘うか。マイクアピールに加え、SNSや動画配信など選手の気持ちを伝えられる手段が増えた今、自分から主張してストーリーを生み出すことができるレスラーがより価値を高めることができるようになっている時代。
結局今のノアでその流れに乗り、自らストーリーを生み出せているのは拳王とジェイク・リーの二人だけ。彼らの一言一言で観客がどっと湧き、耳を傾ける。それはいわゆる「マイクアピールが上手い」というだけではなく、彼らに主張があり、言いたいことがあるから。清宮のジェイクへの返答が観客に響かなかったように、”それ”を観客は感じ取ってしまう。そこに今のプロレスリング・ノアの課題があるように思います。
試合は粒揃いで面白いけど、ノアにはやはり、どこか足りないものがある。そんなことを感じた1・13プロレスリング・ノア後楽園ホール大会でした。アイアムノア!