6月18日に行われた全日本プロレス後楽園ホール大会。私はその日、事前にガンバレ★プロレスのファンイベントに申し込んで当選していたため、生で見ることは出来ませんでした。
しかし、ハードヒットでの佐藤光留の姿を見たからには、青木篤志のテンカウントゴングが鳴らされるこの大会も見ないといけない、というわけで全日本プロレスTVで観戦しました。
第一試合の丸山敦&田村男児vs大森北斗&青柳亮生から、やはり何か、大会終了後に行われる青木の追悼セレモニーがどこか漂うような空気。しかしブラックめんそーれの「シャー」、ゼウスと崔の激しすぎるぶつかりあい、最強タッグ以来の再来日を果たしたパロウ&オディンソンのTHE ENDのド迫力、試合終了後に放った互いに敵をパワーボムで抱え上げ、空中でぶつけあうという荒業。しかも持ち上げたのが諏訪魔と石川修司というのが凄い。月末の後楽園ホールで世界タッグ戦を闘うこの両者。わかりやすく強くてデカい選手のぶつかり合いで会場のテンションも上がっていきます。
そしてセミファイナルのアジアタッグ選手権。チャンピオンの大日本プロレスタッグ、河上隆一&菊田一美に挑んだジェイク・リー&岩本煌史。ダーティーな攻撃も交えてペースを握っていく大日本タッグに翻弄されるジェイク&岩本でしたが、ジェイクのパワーを利して徐々に反撃。ジェイクの打撃&岩本の柔道技の連携も決まり始め、最後はジェイクのバックドロップ一発。試合終了後、互いに握手をしてシングル要求。大日本とのネクストがありそうな結末を迎えています。
そしていよいよメインイベント、佐藤光留VS岡田祐介が始まりました。
リング上には全身、青木篤志のイメージカラー青で固めた和田京平レフェリー。この大会、どの選手も喪章代わりに身体の何処かに青いものを身に着けていました。
まず最初に入場したのは岡田祐介。エプロンに上がって一発気合を入れてから入場。そして佐藤光留は篠原涼子の「愛しさと切なさと心強さと」で入場。ここ一番でしか使わないテーマ曲。この日の特別さがわかります。
そしてなにより、もう岡田祐介が泣いている、それを見る佐藤光留の目も潤んでいるように見える。タオルで顔半分覆っていたのでわかり辛かったですが、互いに涙をこらえながら、やはり明確に青木篤志の追悼試合、という気持ちで闘う決意を固めていたのでしょう。岡田祐介のセコンドには諏訪魔、佐藤光留のセコンドには石川修司とスーパー・タイガー。Evolutionと青木ゆかりの選手が見守るリング上、ゴングが鳴りました。
まずはグラウンドの攻防を繰り広げる二人。手四つとみせかけてタックルに入る岡田、首をキープしてひっくり返して上になる光留、腕をとって返し、首を取る岡田、足を刈って倒す光留、いったん離れてスタンドに戻る二人。二人ならではの攻防を会場ごと見守っています。
そしてそんな中光留のローキック、ミドルキックが岡田に炸裂。岡田もエルボー合戦を挑んでいきますが、いちいちキツい一発を入れていく光留。エルボー連打をソバットで返してからのヘッドロック。ロープワークから岡田がエルボー一発で光留を倒す。岡田も「新人」では済まないという意地を見せていきます。
スリーパーで固めたところを脇固めで絞り上げられ、アームブリーカーで悲鳴を上げ、足を取りにいったら下から腕十字で返される。そして青木が多用していた腕を掴んで倒れ込みながらの腕へのキック。岡田はなかなかペースを掴めないままですが、しかしギラ付く目でエルボーを返していきます。いや、この時点でもうたまらない。
光留は、青木を意識しているような腕攻め。コーナーから腕にエルボーを落とし、腕をロックして腹にヒザを入れるエグい攻撃。そして中腰の岡田に思いっきり蹴りを叩き込む。まるで青木と二人分のキツいやつを岡田に入れているような、というと陳腐な表現かもしれませんが、それくらい厳しい佐藤光留。
光留はこのメインイベントに対し、「青木さんがくれたメイン」と話していました。それだけにだらしない姿は見せられない。聞かれたら「いつもと一緒」と言うでしょうが、どんどん厳しさを増した攻撃を岡田に叩き込んでいきます
コーナーに詰めてのボディパンチからのミドルキックと今度は腹攻め、腕攻め、腹攻めとピンポイントで追い詰めていく光留。しかし岡田もランニングエルボー連発、ミサイルキック二連発となんとか反撃。理詰めの光留に対して気合と根性で返していく岡田。岡田にとっては光留以上に「青木篤志にもらったメイン」といえるこの試合。おそらくシングルでのメインイベントは初だと思いますが、2017年1月デビュー、キャリア2年半のの岡田祐介。メインでなんとか自分を表現しようとあがいていくのが頼もしい&ぐっとくる。アームロックを決められてからのボディスラムからドロップキックでフォール、カウント2でしたが勝ちへの気持ちを見せていきます。思わず見ているこちらも頑張れ岡田!と思ってしまう。いいぞ!
すかさずトップロープに登る岡田でしたがジャンピング・ハイキックを喰らい、コーナーに登った光留に腕を極められるピンチに。しかし魂のヘッドバットで逃れ、
後頭部へのヘッドバット連発からロープを使ってのスイングDDT。これは形が崩れますが構わずトップロープに登ってのダイビング・ヘッドバットでカウント2。この試合はじめてのチャンスを掴んだ岡田、ここからたたみこむ。ヘッドバット連発からビンタ。ここから張り合いになっていきますが打撃では光留が一枚上手。スタミナもあってか弱々しいビンタの岡田に対し、強烈なビンタからヒザ連打を見舞う光留。フラフラの岡田。しかしここで!光留のハイキックをヘッドバットで受け止める岡田!しかし光留もロープワークから延髄斬り!この延髄斬りのロープワークは青木篤志がドロップキックを放つときのロープワークにそっくりだったのは偶然か。そしてここで一段ギアを上げた光るが一気に畳み込んでいきます。
一気に抱えあげてのデスバレーボムから状態を起こさせてのPK。これはカウント2で終わるもバックに回っての投げっぱなしジャーマン。岡田がフォールを返したところを腕十字で捕らえ、岡田がクラッチして耐えるもそれが切れたところを腕十字、すかさず足をとっての捕獲式腕十字にチェンジすると岡田がたまらずギブアップ。佐藤光留が後楽園ホールのメインイベントで勝利を上げました。
メインイベント 特別試合
◯佐藤光留
(18分01秒 捕獲式腕ひしぎ逆十字固め)
✕岡田佑介
そして和田京平に手を挙げられたときに天を仰いだ光留。リングサイドの秋山準も涙をこらえながら見つめ、エプロンの諏訪魔と光留が抱き合い、そして改めてリング上で正座して頭を下げる光留と岡田。ここで一気に光留も、岡田も、そして諏訪魔も、会場中が青木篤志への感情を解放したかのようでした。
木原リングアナに差し出されたマイクを受け取った光留。涙をこらえながら話し始めました。
今日は、青木篤志対佐藤光留の世界ジュニア戦がある予定だった後楽園ホールに、多数の来場ありがとうございます!
僕の、僕のプロレスの、半分だった、青木さんが...突然いなくなってから本当に,忙しい...日々でした!
自分の興行があったり、すぐ...全日本のシリーズが始まったり、楽しみの、楽しみにしてる人もたくさんいたんで、僕が、へこんでるわけに行かないと思って...
青木さんに会いに行った間も、いいから、やってください。いやもういいからそういうのいいからリングに上がってくださいという人で、やっぱりそういう顔してました。
でも、でも・・・・青木さんが!いるはずだった!リングに立ったら!
青木さん、本当に寂しいよ!
青木さん!青木さーん!
青木さーん!
(うなだれる光留、観客拍手)
ベルトを持ったまま遠くへ行っちゃった、青木さん!
防衛期限の11月の終わりまで、そのベルト絶対に、誰にも渡さないでください!
僕たち全日本ジュニアが、死ぬまでそのベルト、譲り受けてから、輝きつづけさ・・・・ますので、
もうこういう噛むところがあなたのイタズラなんだよ・・・。
どっかにいるんだろ!青木さん!よく聞いとけよ!
全日本ジュニアは、一生!一生!明るく、楽しく、激しく、進化し続けます!今日はほんとに、どうもありがとうございました!
号泣しながら喋りきった佐藤光留。諏訪魔も涙を拭い、泣いている観客も多数見受けられました。ハードヒットではすべてを全うした佐藤光留がここで感情を一気に爆発させたようで。その思いの強さに心えぐられました。
そして追悼セレモニー、テンカウントゴング。木原リングアナの「世界ジュニア選手権者、190パウンド、青木~篤志~!」というコールでセレモニーは終わり。リング上に青い紙テープが四方から投げ入れられました。そして遺影を上げた佐藤光留が四方に深く頭を下げ、エボリューション4人プラス石川修司で遺影を持ってのリング状撮影。改めて岡田と握手した佐藤光留、深々とリングに一礼して、改めて天を仰いでからリングを去りました。
生で見れなかった全日本プロレス後楽園ホール大会でしたが、ネット観戦ながらも佐藤光留、岡田祐介、そしてEVOLUTIONの面々、青木篤志に泣かされた大会でした。そして未来を作っていくという意思を感じるメイン。全日本プロレスジュニア戦線を背負う覚悟を決めている佐藤光留、そして岡田祐介。不器用な、でもこうじゃなきゃいけないメイン。6月18日の全日本プロレス後楽園ホール大会は、確かに佐藤光留VS岡田祐介がメインイベントでした。
週刊プロレス 2019年 06/26号 No.2016 [雑誌]
- 作者: 週刊プロレス編集部
- 出版社/メーカー: ベースボール・マガジン社
- 発売日: 2019/06/12
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る