男マンの日記

マンガ、落語、お笑い、プロレス、格闘技を愛するCG屋の日記。

三沢光晴メモリアル2021、新しいノア、変わらないノア。現在進行形のメモリアル興行。

この日の「三沢光晴メモリアル興行2021」天国で三沢も呑みながら楽しく見ていたような気がします。それだけ今のノアらしくストーリーも動き、楽しめる「攻めた」興行でした。タイトル移動、裏切り、乱入、前哨戦での丸藤敗北、盛りだくさんのてんこもり興行でした。面白かった~!

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満員札止め。逆境の中行われたメモリアル興行への期待感。

5月31日、プロレスリング・ノアの三沢光晴メモリアル興行、後楽園ホール大会をAbemaTVで観戦しました。これはそもそも5月31日に大田区体育館での開催を予定されていたものが緊急事態宣言で中止になり、その代替として開催されたもの。そのため平日の後楽園興行となりましたが、徐々に観客が入り始め、後半戦にはほぼ満員に。この客入り、三沢光晴というレスラーを観客が悼むとともに、現在進行形のプロレスリング・ノアの支持率を示しているように思います。

実際、この日のメインイベントは6・6サイバーファイトフェスの前哨戦、と言い切るには豪華すぎるタッグマッチ。武藤敬司&田中将人VS丸藤正道&船木誠勝のタッグマッチ。凄い!

そして、セミにはGHCナショナルのタイトルマッチ、杉浦貴VS桜庭和志の杉浦郡対決、他にもJrヘビーのタイトルマッチとして小峠篤司VS進祐哉、タッグタイトルマッチとして中嶋勝彦&マサ北宮VSモハメドヨネ&谷口周平、Jrタッグのタイトルマッチとして小川良成&HAYATAVS原田大輔&大原はじめ。もともと大田区体育館を予定してただけあって4大タイトルマッチが組まれる気合の入れようです。

正直、後楽園ホールでは勿体ないくらいのカード。ハコが小さくなってもスケールを落とさないあたり、ノアの気合の入れようがわかる。そしてそれはファンにも通じ、終始盛り上がった三沢光晴メモリアル大会になりました。 

 

6月6日に発売する「三沢イズム」Abemaでの解説でもおなじみの元週プロ編集長、佐久間一彦氏責任編集の三沢光晴本。

過去主婦の友社から発売された単行本を再編集、新たに小橋建太、秋山準、丸藤正道への取材も追加した魂の一冊。

まさに「三沢メモリアル・書籍版」の趣となっております。

   

 私の中の三沢光晴。選手にとっての三沢光晴。

私自身、プロレスを見始めたタイミングは全日本プロレスのいわゆる「四天王プロレス」前夜から。ジャンボ鶴田が体調不良で徐々にフェイドアウトし、本格的に三沢光晴、川田利明、田上明、小橋建太のいわゆる四天王が中心になっていった時期でした。詳細についてはこのエントリにまとめてありますが、三沢が亡くなったときはショックも受けましたし、ディファ有明の追悼イベントにも行きました。ディファ有明からゆりかもめの「市場前」駅までファンの列が出来ていたことを覚えています。

なお、自分の想いはこのエントリに書きましたので一読頂けると幸いです。

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そして2019年、ジュニアタッグリーグに優勝した小川良成がマイクを取って言った言葉がずしりと響きました。

三沢さんを知っているファン、知らなかったファン

みんなにお願いがあります。

三沢光晴というレスラーを

忘れないでください。

そして、2020年はプロレスリング・ノアにとって激動の年でした。1月にリデット体制からサイバーエージェントの連結子会社となり、7月には運営母体が株式会社サイバーファイトへ。コロナ禍の中無観客興行を余儀なくされながらも歩みを止めませんでした。

そんな中行われた2020年の6月13日、無観客、ネット配信でのメモリアル興行が行われました。メインイベントは潮崎豪VS齋藤彰俊。このカードは2009年6月13日、三沢光晴が命を落とすことになった試合(バイソン・スミス&齋藤彰俊VS三沢光晴&潮崎豪)で闘った二人のシングルマッチでした。「最後のタッグバートナー」と「最後の対戦相手」の闘い。この試合で心に大きな傷を負ったであろう二人による、三沢光晴を心に宿しての闘い。GHCヘビー級選手権試合として行われました。

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30分に迫る激闘。途中からグロッキーになりながらも潮崎の攻撃を受けまくる彰俊。天を指差してのバックドロップを放つなど、三沢が亡くなった「あの試合」からの決別を改めて表現した試合になりました。

そして試合後の彰俊の言葉。

GHCヘビー級チャンピオン、潮崎豪殿

いや、シオ!ベルトはお前を選んだ

しかし、負けはしたけど、効いてるけど一言だけ言いたい

シオ!ありがとう!ありがとう!ありがとう・・・。

これで、負けたけど、オレ、次に進むよ

またどこかで接点があったら闘おう

お前は最高のチャンピオンだよ潮崎

ありがとうーーー!

三沢没後11年、改めて「前に進む」ことを宣言した彰俊。それを受け止めて「ありがとうございました」と礼を言った潮崎。この試合がほんとうの意味で、選手にとっての「三沢メモリアル」と言えるのかもしれません。

 

全日本プロレスから独立して旗揚げ、東京ドーム大会を開催するなど一時期隆盛を誇ったプロレスリング・ノア。しかしそこから地上波を失い、資金繰りも悪化する中で三沢の死、そして仲田龍の死、経営譲渡、ディファ有明閉鎖など圧倒的な「負」のイメージがついてしまったノア。

しかし2019年にリデット体制となり、サイバーエージェント傘下になり、リデット時代からの懸命なイメージチェンジの努力によってようやく「新生プロレスリング・ノア」のイメージが浸透し、ようやく「三沢光晴」をきちんと過去のものにすることに出来たように思います。そして2020年の潮崎豪VS齋藤彰俊。それを経ての今年「三沢メモリアル」がどうなったのか。結論から言うと、現在進行形のプロレスリング・ノアをしっかりと見せつけてくれました。

   

タイトル移動、裏切り、乱入、アイコンの敗北、波乱のメモリアル! 

そして、この日の興行はノスタルジーというより、現在進行形の「プロレスリング・ノア」 を見せた、「動きの多い」興行になりました。

GHCジュニアタッグ選手権はチャンピオンの小川良成&HAYATA組が敗北。原田大輔が片山ジャーマンで小川を降し、原田大輔&大原はじめ組が新チャンピオンとなりました。しかし原田&大原相手に26分の激闘を繰り広げた小川良成。三沢メモリアルを勝利で飾ることはできませんでしたが、その「テクニック生き字引」っぷりが相変わらずの充実っぷりでした。しかしその駆け引きを制した原田&大原組。揺れ動き続けるノアジュニアですが、安定政権をもたらしそうなタッグチームではあります。今後どうなるか。

 

そしてなんといってもGHCタッグ選手権。ここにきてケタハズレのタフさを見せつけ、その地の強さを見せつけたのはモハメド・ヨネでした。マサとぶつかりあい、中嶋の蹴りを受けまくる。トんだ目をしつつもゆらりと立ち上がり続けるその姿。骨格の太さもあいまってまだまだ第一線でいけそうな雰囲気。個人的には谷口よりも強さを感じました。

しかしハイライトは試合後に。マサ北宮がタッグパートナーの中嶋をバックドロップで投げ、「ず~っと昔から嫌いだった」って理由で金剛脱退。今後どうするのか。これには驚かされました。メモリアル興行で仕掛けるマサ...。

セミファイナルの杉浦VS桜庭もさすがのテクニック合戦。おじさん二人が序盤はキャッッキャしながらだましあい、大人の駆け引きを繰り広げますが、さすがに後半戦はアツいバチバチファイト。桜庭も適度にいなしながらスパっと寝技を魅せる。杉浦が丸め込んで勝利しましたが、 杉浦が桜庭に歩み寄り、その持ち味を引き出した好勝負でした。そして試合後の乱入劇。杉浦の「またぐなよ」という茶番、ササダンゴのプレゼン。ちなみにササダンゴマシンが提案した「ぐるぐるバットデスマッチ」は、解説席に居たNOSAWA論外とマッスル坂井が対戦したことのある試合形式でした。

 

そしていよいよメインイベント。6・6サイバーファイトフェスの前哨戦ではありますが、それだけでは済まない豪華タッグマッチ。色々と見せ場はありましたが、なんといってもこのシーンでしょう。 

武藤敬司はいつからか「他人の記憶を使って闘っている」というように、天に指をさしてから三沢のエメラルドフロウジョンを丸藤にお見舞いするという「凄い絵」を提供してくれました。 興行ダイジェストはこちら。

 

www.youtube.com

   

前向きな「三沢光晴メモリアル2021」にノアの未来が見えた!

このように、メモリアル興行とはいえ現在進行形の「プロレスリング・ノア」を見せてくれた5・31プロレスリング・ノア後楽園大会。

やはり「追悼大会」となるとどうしてもしんみりするし、故人を悼む、という色合いが強くなってきます。しかも三沢はノアのリングで亡くなった人。その事件はいつまでたってもノアという団体、選手たち、ファンに絡みつき、長い間暗い影を落とし続けてきました。

しかも、三沢が亡くなる前から経営的に下向きだったノアはこの事件から長い低迷期に入っていったこともその「暗い影」をなかなか振り払えなかった原因だったように思います。経営母体を移したり、新日本プロレスとの関係性を深め、鈴木軍との抗争を繰り広げたり、新しい風を巻き起こそうとしてもなかなか上手く行かない。どうしても旗揚げから数年の調子の良かった「あの頃のノア」に引っ張られ、それがゆえに三沢の影に囚われているように見えました。

 

しかし、ここ数年でようやくリデット体制による「新生ノア」が波に乗り、サイバーエージェント傘下になってもその「攻める姿勢」は継続。それがあって去年の潮崎豪VS齋藤彰俊という、「選手が三沢光晴と向き合うシングルマッチ」を行い、過去との決別が出来たことで今年は「メモリアルマッチ」をしっかりと普段着の興行として行うことが出来た。興行の頭とメイン前に三沢のVTRが流れ、選手も緑色のリストバンドをするなど三沢へ贈る興行ではありましたが、しんみりとした空気は極力廃し、起伏の大きい興行で楽しませてくれました。

プロレスリング・ノアという団体自体がようやく三沢光晴といい距離を保ち、尊敬の念を保ちながらこの日のような興行が出来た、ということが三沢への恩返しでもあり、ノアファンにとっても明るい未来が見えたんじゃないでしょうか。面白かった!面白い「三沢メモリアル2021」興行でした。三沢さん!ノアはもう大丈夫です!