ノア&DDT合同会見。衝撃発表!
2・12プロレスリング・ノア武道館大会の3日後、2・14DDTカルッツかわさき大会の翌日、サイバーファイトによるノア&DDT合同会見が行われ、武藤敬司のプロレスリング・ノア入団、秋山準のDDTプロレスリング入団が発表されました。
武藤敬司、秋山準ともに直近のビッグマッチで団体のシングルチャンピオンになったばかり。武藤敬司は58歳、秋山準は51歳。前チャンピオンの潮崎豪が39歳、遠藤哲哉が29歳なだけに、一気にプロレス界チャンピオンの平均年齢が上がった。「時計の針が一気に戻った」と言われた状況でしたが、二人が入団発表をしたことで、この状況がこれからある程度続いていくんだろうか?とも思える会見でした。
しかし、なぜノアだけ翌日会見ではなくこの日だったのか?と考えると、明らかにこの二人&高木社長&丸藤副社長の4ショットのインパクトを狙ったものでしょう。サイバーファイトが設立され、特にプロレスリング・ノアのネット上での広報が洗練されているのが明らかになっている中、マーケティングとしてこの4ショットを撮らせたサイバーファイト。かなりビックリさせられました。
木梨憲武をドーム大会に招聘した新日本プロレスもターゲットを40代に定めていることもあり、90年代、00年代に大きなインパクトを残していた両選手の入団も、同じく40年代ファンにかなりフォーカスした方針からなのではないか、という印象を私は受けました。
もちろんDDTもノアも若手がきっちりと育っている、という前提の話ではありますが、いかにその若い選手にスポットをあてていくか。未だに「昔はプロレスを見ていたけど今は見ていないファン」の数がかなり大きく見積もられていて、今では財力もあるであろうそんなファンを呼び戻すことが利益につながる、と考えられているのを感じます。
ただ、同時に発表されたことで一緒くたにされているこの二人の入団ですが、それぞれの団体にとっての役割は大きく異なります。それについて少し書いていこうと思います。
武藤敬司をしゃぶりつくせ!スターがやってきたプロレスリング・ノア
記者会見で語ったことによると、武藤敬司のプロレスリング・ノアとの契約年数は2年間。二年後には還暦を迎える武藤。年齢としてはキリのいいところでもあり、武藤としては、二年後にはレスラーとしてある程度の区切りをつける意思があるのかもしれません。
武藤自身は一選手としての契約ということを強調。「もしかしたらこのリングで朽ちていくのかわからないけど、契約したからにはこの団体に俺の骨の髄までしゃぶってもらいたいと思っております」と語り、業界ナンバーワンにする、という高木三四郎の言葉に対して「業界ナンバーワンのレスラーを抱えた以上は組織でもナンバーワンになってもらわないと困りますね」との武藤節。レスラーとしてリングに上がるだけ、というわかりやすいスタンスを貫いています。
すでに武藤敬司というレスラーはレジェンドとして名声を得ているし、ノアでやらなきゃいけないこともチャンピオンを獲った以上特にもうないはず。あとはノアの他の選手が武藤敬司とどう絡み、武藤が持っているもの、強さ、名声、テクニックを奪い取ることが出来るか。完全にリング上での闘いになってくるでしょう。今後が楽しみです。
「王道」を奪えるか。DDTプロレスリングの新たな「道場論」
一方、DDTプロレスリングに入団した秋山準は一年契約。選手契約と同時に「ヘッドコーチ」として選手指導も担うことになりました。
会見で大社長はジャイアント馬場、三沢光晴という名前を出し、「人材育成ということも含めて、ゲストからさらに一歩踏み込んだ形でヘッドコーチとしてDDTに色んなものを教えていただきたい」と、明らかに全日本プロレスの「王道」を意識したコメント。
そして秋山もDDTの歴史とスタイルを尊重して「全部ガラッと変えるつもりはない」と言いつつも「一人くらい一から教えたい」とも発言。武藤とは違い、一歩踏み込んだ関わり方をすると宣言しています。
今までのDDTのスタイル、これからについて、大社長も先日ツイートしていました。
秋山準選手、DDTヘッドコーチ就任。秋山さんの持つ1〜10のプロレスの技術、そして本道のプロレスをDDTにブチ込んで頂きたい!DDTのプロレスが変わるとかそういう事ではない。今のDDTにプラスされるのがベスト。DDTが今以上を目指すには不可欠だと思うのです。秋山さん、よろしくお願いします! #ddtpro pic.twitter.com/6aLtrK6g15
— 高木三四郎 SanshiroTakagi (@t346fire) 2021年2月19日
DDTが今までどういうスタイルだったか。設立当初は木村浩一郎の地獄のシゴキがあったなど大社長がコメントしていますが、ディック東郷のSuperCrew出身の佐々木大輔、ヤス・ウラノ。K-DOJO出身の大石真翔、登龍門出身の大鷲透と様々な団体出身者が集まっているDDT、今までリング上でのハッキリとしたスタイルを全面に打ち出したことはあまり無いように思います。先日自分がツイートしたような感想です。
確か以前シエロで常連さんとDDTについて話してたときに、「DDTの試合から”道場”が見えない」っていうのを聞いたことがあって、確かにDDTのスタイルに大社長が言及するときに「路上プロレス」とか、「なんでもあり」とか、パッケージの話をすることが多いな、と思ってて。
— 男マン@skebはじめました (@otokoman) 2021年2月19日
#ddtpro
今出来上がっている選手たちに秋山がどのような影響を与えるかはわかりませんが、以前の著書では、大型選手を育てることについての手法について語っている秋山準。今のDDTだと樋口和貞、納谷幸男などの大型選手育成に本格的に乗り出したらどうなるんだろう?という期待感はあります。
また、そうなることにより、「秋山から教えを受けた選手」、「そうでない選手」という区別が生まれ、DDT内でのイデオロギー闘争が起きる可能性も。現在フリーとして参戦している岡田佑介が定期参戦することになれば、プロレススタイルを巡っての抗争が生まれる可能性も。大社長はDDTのプロレスにプラスして、と考えていると思いますが、DDTのリング内が今後どうなるのか。全日本プロレスとの関係性がどうなるのか。色々と波乱が起きる予感がします。
とりあえず教科書はこれでしょうか。
秋山準の指導方法、試合の組み方など興味深い一冊です。
私がこれを読んだ感想はこちらです。購入に迷った方、ご参照ください。
まとめ
というわけで、ノア、DDTともにそれぞれ武藤、秋山中心に流れができていきそうですが、その中身はだいぶ違ってきそうです。サイバーファイト自体の勢いもあり、武道館、カルッツともに成功と言っていい客入りだったようなので、この勢いを持続できるか。ベテランの遺伝子をうまく利用できるか。両団体の「これから」に期待です。